「充電するお金がありません」—— 中国・四川省でヒューマノイドロボットが“物乞い”をしていた

画像は「YouTube」より

ロボットに仕事を奪われる」という嘆きは、ここ数年で何度聞いただろうか。ところが今度は「ロボットに物乞いの仕事まで奪われた」と嘆く時代が来てしまったかもしれない。2026年6月、中国・四川省の路上に膝をついたヒューマノイドロボットが現れ、その映像が世界中で拡散した。

膝をついて、手を合わせて、QRコードも完備

 映像に映っていたのは、路上で膝まずき、通行人に向かって手を合わせながら何度も頭を下げ続けるロボットの姿だ。傍らに設置されたLEDサインとスピーカーが「充電するお金がありません」「電気代の支払いをどうかご支援ください」と繰り返し訴えていたという。

 演出は徹底していた。コイン用の小皿がちゃんと置かれていただけでなく、現金を持ち歩かない現代人のためにQRコードによる電子決済にも対応。物乞いとして必要なインフラは完全に揃っていた。

 この機体は、中国ロボットメーカーUnitreeが製造する「G1」ヒューマノイドロボットと特定された。定価は約1万6000ドル(日本円で約230万円)。誰がこれを操作し、なぜ路上に立たせたかは今のところ不明のままだ。

SNSで沸騰した「笑えない怒り」

 映像が拡散するとSNSは瞬く間に反応した。「ついに物乞いまでロボットに取られた」「最初に仕事を奪われ、今度は小銭まで持っていかれる」といった皮肉のコメントが相次いだ。

 面白いのは、このロボットを「賢い金稼ぎの方法」と評する声もあったことだ。「最低賃金の仕事より全然稼げる。オーナーは家でくつろいでいるはずだ」「ロボットを使って元を回収する仕組みとして秀逸」という見方まで登場した。

 一方で、まったく笑えないと感じた層からは厳しい批判が上がった。「本当に助けを必要としている人間に渡すべきお金だ」「自国民の基本的な尊厳も守れていないのに、AIを厚遇するのか」という声は、物乞いロボットが露わにした社会的な矛盾を突いている。

笑えるようで笑えない、中国ロボット事情

 これが単なる奇妙なネタで終わらないのは、中国でヒューマノイドロボットの普及が急速に進んでいるという背景があるからだ。新しい店舗やレストランのプロモーションイベント、学校の運動会など、かつては人間が担っていた場所にロボットが次々と登場している。

 その背景にあるのは、高齢化と経済成長の鈍化だ。数十年にわたる急成長の後、労働力不足を補う手段としてロボットは国家産業戦略の柱と位置づけられている。

 ただし、ロボットと人間の距離が縮まるほど、予期せぬ「事故」も増えている。今回の路上物乞い騒動もその延長線上にある。誰かのいたずらか、パフォーマンスアートか、あるいは純粋な金稼ぎスキームか——真相は不明のままだが、「AIが意識を持ち始めたのでは」というコメントまで飛び出したあたり、人々がこのロボットにどれだけリアルな感情移入をしてしまっているかがよくわかる。

 物乞いをするロボットに財布を開けた通行人たちは、ロボットに哀れみを感じたのか、それとも操作者の才覚に感心したのか。答えによって、AIと人間の関係の未来が少し変わってくるような気もしないでもない。

参考:Daily Mail、ほか

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