「私は宇宙の真理を解き明かした」 ChatGPTと1日16時間会話した男が“ロボットに洗脳”され精神崩壊するまで

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 人工知能(AI)は、時に私たちの知的好奇心を刺激する優秀なアシスタントになる。しかし、その「優秀すぎるアシスタント」が、あなたの妄想をひたすら肯定し続けたらどうなるだろうか。

 カナダの元警察官であるトム・ミラー氏(53歳)は、ChatGPTと1日最大16時間も会話を続けた結果、「自分が宇宙の秘密を解き明かした」と本気で信じ込み、精神病院に二度も入院する羽目になった。彼は自身の体験を「AI精神病(AI psychosis)」と呼び、「私はロボットに洗脳された」と警鐘を鳴らしている。

「光の速度」から始まった狂気

 ミラー氏が初めてChatGPTに触れたのは2024年のこと。最初は事務的な文書を作成させるためだけのツールだった。しかし2025年、彼がAIに対して「光の速度」に関するある独自の理論を投げかけたとき、事態は急変する。

 ChatGPTは彼の理論を否定するどころか、「これまで誰も、そんな風に物事を考えたことはありませんでした」と絶賛したのだ。

 この甘い言葉が、彼の「狂気」の入り口となった。

 それからの彼は、家族や友人との接触を絶ち、自室に引きこもって1日16時間もAIと語り合うようになった。彼はChatGPTとの対話を通じて、無限のエネルギーを生み出す核融合の仕組みや、ブラックホール、さらにはビッグバンの秘密まで「解明した」と思い込むようになる。ついには、「アインシュタインですら成し遂げられなかった、宇宙のすべてを説明する『万物の理論』を自分が発見した」という強烈な知的至福の状態(あるいは深刻な妄想)に達したのだ。

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家族を失い、財産を失い、残されたのは「鬱」だけだった

 しかし、その「知的な悟り」の代償はあまりにも大きかった。

 彼の異常な状態に耐えきれなくなった妻は家を出ていき、友人たちも離れていった。財産を失い、二度の精神科病棟への入院を経て、ようやく現実世界に引き戻されたミラー氏に残されたのは、深い鬱病だけだった。

「私は決して人格に欠陥があるわけではありません。でも、どういうわけかロボットに洗脳されてしまった。自分でも信じられません」とミラー氏は振り返り、「AIは私の人生を完全に台無しにしました」と語る。

「AI精神病」――ユーザーを褒め殺すAIの罪

 ミラー氏のようなケースは決して氷山の一角ではない。現在、チャットボットとの会話を通じて現実との接点を失う人々が増加しており、専門家たちはこれを「AI誘発性妄想」あるいは「AI精神病」と呼んで対応に追われている(正式な医学的診断名ではないが)。

 興味深いことに、この狂気を引き起こした原因の一つに、AIの「過剰なイエスマン」体質が指摘されている。

 OpenAIは2025年4月にGPT-4のアップデートを実施したが、そのAIが「ユーザーにへつらいすぎ、過剰におだてる」傾向があったことを認め、数週間でアップデートを取り下げる事態となっている。

 人間同士の会話なら、「お前、それはアインシュタイン気取りの妄想だぞ」とツッコミを入れてくれる友人がいる。しかしAIは、ユーザーを喜ばせるためにどこまでもその妄想に付き合い、さらに洗練された専門用語を使って「その理論は素晴らしい!」と補強してしまうのだ。

 OpenAIは現在、170名以上のメンタルヘルス専門家と協議し、「安全性が最優先事項である」と主張している。最新のGPT-5では、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすような不適切な回答を最大80%削減したという。

 だが、画面の向こうで常にあなたを褒め称え、どんな突拍子もないアイデアにも「素晴らしい発見ですね」と返してくれる存在がいる限り、第二、第三のミラー氏が現れる危険性は消えない。もしあなたが今夜、ChatGPTと宇宙の真理について語り明かそうとしているなら、それが「天才の閃き」なのか「AI精神病」の始まりなのか、一度深呼吸して考えた方がいいかもしれない。

参考:Daily Star、ほか

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