成功した「ヒト胚の遺伝子編集」は潜在的な大量虐殺の兵器になるか?
成功した「ヒト胚の遺伝子編集」は潜在的な大量虐殺の兵器になるか? 人類総ナチス時代到来の危険も=アメリカ
英紙「Daily Mail」(7月27日付)は、アメリカの科学者たちが行ったヒト胚の遺伝子編集が成功したことにより、いわゆる「デザイナーベビー」が現実味を帯び始めたと伝えている。
■「欠陥遺伝子はCRISPRで修正が可能」
米オレゴン州・ポートランドにあるオレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University、OHSU)の研究チームは、現在「CRISPR」を用いて遺伝物質を変化させる実験に取り組んでいる。CRISPRとは大ざっぱにいうと、遺伝子を“カットアンドペースト”する遺伝子編集技術のひとつだ。遺伝子のハサミとして働き、ゲノムの望ましくないパーツをうまく切り取って、代わりにDNAの新しいパーツを貼り付けるといえばわかりやすいかもしれない。

本研究は、OHSUのCenter for Embryonic Cell and Gene Therapyの責任者、ソクラット・ミタリホフ博士による管理の下、単細胞のヒト胚DNAを多数操作して行われた。なお、いかなる胚も数日以上育てない、子宮に戻さないなどの倫理上の規則を設けていた。
この結果、「遺伝性疾患を引き起こす欠陥遺伝子は、CRISPRで修正が可能」と発表されるに至った。これは、がんやHIVなどの重篤な疾患や遺伝性とされるハンチントン病の予防にも貢献し、今後の研究開発に大きな期待が寄せられている。本研究の事情に詳しい匿名の科学者は「MIT Technology Review」に対し、次のように話している。
「原理では実行可能であることが証明されました。ですが、臨床試験段階に到達したとは、まだ言えないでしょう。しかしながら、これまでの類似研究の中では、最先端の結果を出しています」(匿名の科学者)
また、今年はじめには、米国科学アカデミーと米国医学研究所も「科学の発展により、ヒトの生殖細胞の遺伝子編集は実現可能となった。今こそ真剣な議論が望まれる」と共同声明を発表している。
■優生思想の復活に繋がる危険性
しかし、たとえ治療目的であったとしても、無責任ではないかという声も聞かれる。特に宗教団体、市民グループ、バイテク企業などは反発しており、アメリカでは昨年、一部の見識者が「潜在的な大量殺人の兵器になりうるのでは」と強い不信感を表明したばかりだ。
考えてみれば、人類の未来に優秀な遺伝子だけが残り、劣性なものは消去もしくは書き換えられてしまうのは、ナチス・ドイツの優生思想を彷彿させなくもない。なにより、その気になれば生まれてくる子どもの外見、知力、体力などオーダーメイドできてしまうわけで、生命倫理的に問題をはらみ、これまで多くの国が慎重な対応を示しているのもうなずける。

遺伝子操作は、思いの外、すぐそこまで迫っているようだ。しかし、病気も障がいもない世界では、バラ色の人生が待っているという保証は、今のところ誰も保証できない。
参考:「Daily Mail」、「MIT Technology Review」、ほか
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