独自の道を歩む39歳2人が「孤独と老化と勉強」を語ったら、想像の斜め上だった!【哲学者・千葉雅也×俳人・北大路翼対談】

■老化について

独自の道を歩む39歳2人が「孤独と老化と勉強」を語ったら、想像の斜め上だった!【哲学者・千葉雅也×俳人・北大路翼対談】の画像4歌舞伎町酒場「砂の城」

――40歳についての話題が出てきたので、次に「老化」をテーマに語っていただきたいのですが、北大路さんは『時の瘡蓋』のあとがきの中で、40代を目前に「いま僕は焦つている。」と書かれていましたね。

北大路 そう、僕は焦ってるの。千葉さん、自分は何歳まで生きると思います?

千葉 僕は、そんなに長生きしないかも。しなくていいし。だから、一回の仕事ごとに事故で死んでも悔いのないように書いていますよ。『勉強の哲学』を書いた時も「これで倒れてもいい」と思って書いていましたしね。

北大路 僕も本を出す度に「もうこれで死ねるかな」「もういいかな」とは思ってますよ(笑)。でも死なないんだけどね。あと僕の場合は、40歳に向けて体力的に落ちてきた感じがするのだけど、千葉さんの40歳はどうですか?

千葉 知的な処理能力は上がってるんです。今は、本が早く読めるし理解ができる。かつてなく勉強や仕事ができるようになっている。けど、ひとつのことに取り組む熱量、モチベーションは減っているかもしれない。疲れてる。体力が落ちてるんだと思うな。


■モチベーションの上げ方

――『勉強の哲学』では勉強することの意味を書かれていましたが、モチベーションについてはあまり触れられてなかったですね。

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千葉 まあそれは、モチベーションの上げ方って人それぞれだからね。「この勉強のやり方を見て読者も勉強したくなってほしい」と願って書いたわけですが、モチベーションは実際にはもっと具体的な問題ですからね。

北大路 「屍派」はそれすらもない。モチベーションも何も、やらざるを得ない状況を作って「とにかくやればいいんだ」っていう発想でやる。つまり、「屍派」にとってのモチベーションは逃げ道をなくすことなのだけど、それをモチベーションと呼んでいいのかはわからないね。そもそも俳句って“やってる”かどうかわからない作業だからね。“俳句やってる”って言っても、“やってる感”ないじゃん。だから、僕はひたすら言葉を吠えてるしかないわけだけど。

千葉 僕のモチベーションは、“ものの見え方が変わるかもしれない”というワクワク感なんですよ。北大路さんの本を読むと、感覚が新鮮になって、次に考えたいテーマが頭に浮かんできたりする。僕自身も俳句を作ってみたりする。そういう、新しい感覚との出会いが勉強や仕事のモチベーションかな。

 あと、僕は美術出身だからか、本を執筆していても、他人に“メッセージ”を伝えるというより、何か勝手に“モノ・オブジェクトを作ってる”感覚の方が強いんです。子どもが粘土こねているような。だから、“ものの見方が変わる”っていうのは、まさしく視覚的な感覚なのかもしれない。北大路さんは“何か”を伝えようと思って俳句を作っているのですか?

北大路 まったく思ってないね。自分がまず楽しむこと。世の中が面白くないから、それに対して抵抗し続けたいわけ。

千葉 面白いことをやるってことは、間接的に世の中への批判になるし、世間に巻き込まれないで勝手に生きることの賛美にもなる。だから北大路さんの俳句がTwitterで流れてくると「ここにも“やってる人”がいるなぁ」と思える。他人のアトリエを盗み見すると僕も励まされるんですよ。

酒のない国に住みたしやつぱ嘘(『時の瘡蓋』より)

◆プロフィール
◆北大路翼(きたおおじ つばさ)
1978年、横浜市生まれ。歌舞伎町俳句一家『屍派』家元。小学5年生のころ、種田山頭火を知り、俳句を作り始める。2012年芸術公民館を会田誠から譲り受けて、『砂の城』と名付け経営する。著書に、第一句集『天使の涎』(邑書林)、北大路翼句集『時の瘡蓋』(ふらんす堂)がある。
公式ツイッター @tenshinoyodare

◆千葉雅也(ちば・まさや)
1978年、栃木県生まれ。哲学者。東京大学教養学部卒業。パリ第10大学を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門はフランス現代思想及び哲学・表象文化論。現在は、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。著書に『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)、『別のしかたでツイッター哲学』(河出書房新社)『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文藝春秋・2017年)など多数。
公式ツイッター @masayachiba

◆松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。編集者・ライター・世界のマイナー酒・居酒屋研究家。大学在学中からライターをはじめ、その後、雑誌記者、出版社勤務を経てフリーで活動する。テーマは旅、酒、サブカル、趣味系など多数。著書『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)が発売中。・ブログ~世界一周~旅の柄:http://tabinogara.blogspot.jp/

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文・取材=松本祐貴

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