原正志の作品/大分替え玉保険金殺人事件
技術的な指導は一切ないというが、どの作品も個性的な言葉にできない熱量を持って迫ってくるものばかりである。
「紙素材の独特の質感を強調するために2カ月くらい手で揉んだという作品やキラキラした画材が手に入らないから支援者の方に送ってもらった材料を砕いて使っているものもあります。死刑囚の独居房の中で、想像を超えた技術が生み出されていることにも大変驚かされます」とアツコバルーのなぎささんはさらなる展示作品の見所を指摘する。
死刑囚という極限状態から湧き上がる人間の根源的な表現への渇望、作品を通して見えてくるリアリティに身震いせずにはおれないのである。
[展示情報]
極限芸術 ~死刑囚は描く~
Extreme Art – by Death Row Prisoners Exhibition
会場=アツコバルー arts drinks talk / 東京都渋谷
会期=2017年7月29日(土)~ 2017年9月3日(日)
営業時間=水~土 14:00~21:00 日&月 11:00~18:00 火定休
入場料=¥500 http://l-amusee.com/atsukobarouh/schedule/2017/0729_4319.php
[展示について]
パラレルワールドから
ここにご覧に入れるのはほとんど全員がいわゆる素人で手紙を書くための普通の文房具で描いたものだ。何百枚もの中でエネルギー発信力の激しいものを選別した。もちろん、もう一つの括りはある。全員、重大な理由、また嫌疑により家族や社会から隔離された人達だ。人は皆、自分と他人、社会の関わりの中で人生を編んでいく。絵画の面白さはダイコンを描こうが富士山を描こうが本人と他者との関わり合いがあぶり出されてくる事だ。それは言葉では説明できない何か、でも確実に感じられるものだ。関係を遮断されても彼等は胸の中で社会を見続け、生きている証拠を発信し続ける。確実に、薄っぺらな紙の向こう側にだれかが居る。まるでパラレルワールドからの誘いのように。
昨年、クシノテラスが開いた『極限芸術 2 ~死刑囚は描く ~』展に感嘆して今回、アツコバルーでも開催することを決めた。我々はまた独自の選別で「死刑廃止のための大道 寺幸子・赤堀政夫基金」が 2005年から公募で集めた多く の作品群の中から選ばせていただいた。 (2017年初夏 アツコバルー)
「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」とは?
生前、多くの死刑囚や獄中者に面会し、励まし、「生きて償う」ことを共に模索し、死刑囚の母として、社会、国際機関、メディア に対して、日本の死刑制度の実態、死刑囚処遇、死刑囚の人権について語り続けてきた大道寺幸子さんが2004年5月に亡くなり ました。
「死刑制度をなくしたい」「死刑囚の人権は保障されなければならない」という幸子さんの遺志を生かすため、遺された預金を元に基金が創設され、死刑囚の再審請求等への補助金、死刑囚の表現展の開催と優秀作品の表彰のために使われることになりました。 当初の予定だった10 年間が過ぎましたが、冤罪事件の元死刑囚赤堀政夫さんからも資金提供の申し出があり、2015 年からは「大道寺幸子・赤堀政夫基金」として5年間の予定で再出発すること になりました。「死刑囚の表現展」へ応募された文芸作品は何冊も出版され、絵画作品は多くの展示会で紹介され注目を集めてきました。毎年10月の「響かせあおう死刑廃止の声」の集会で、その年の応募作品の講評や展示が行われています。
協力:死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金、クシノテラス、松本健次さん再審連絡会
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