石川竜一写真集『okinawan portraits 2012-2016』
石川竜一写真集『okinawan portraits 2012-2016』
これまで何人もの写真家が、戦後の沖縄が置かれた状況を写真というメディアを使って世の中に知らしめてきた。石川さんも沖縄出身の表現者として、沖縄をめぐる政治的な問題や社会的な事情をジャーナリスティックに切り取り、写真によって自身の考えや思いを伝えていく方法もあるはずだ。
それなのに、石川さんにその意図は全くない。
「沖縄で起きている出来事をそのまま写真にすることはこれまでもやってこなかったんです。基地での運動を撮って発表することは説明的だし、ともすると、観る人への押し付けになってしまうから。もっと内側の問題だと僕は思うんですね。僕にとって写真を撮って発表することは疑問の提示で、『okinawan portraits 2012-2016』もそうなっている。観てくれた人に一緒に考えてもらいたい。写真集や展示で投げかけることで、僕自身も考えたいっていうことなんです」
撮り手の政治的な主張が直接的に表れた写真は、イメージが強烈であるほど、観た者の意識に撮影者が想定したメッセージを刻み付ける。しかし、作品を観た人を感化するのではなく、あくまで物事を考えるための材料を観た人に提供することが、石川さんのスタンスなのだ。
しかし、そういうジャーナリスティックな写真と石川さんの撮る写真は共通しているという。
「どちらも身近なことに目を向けたりその人たちのことを考えたりしているということだから、大きな違いはないと思うんです。みんながそうすれば、基地の問題についてもきっといい影響があると思います」