「我々の意識や魂は、量子情報として脳に保管されている」説は正しいのか? 「量子脳理論」「Posner分子」「イオンチャネル」が解き明かす人間存在に迫る!

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 生物の体内で起きている様々な現象の多くは、化学や物理学によって記述することができる。だが、まだまだ説明のできない現象がある。それは人間の意識だ。我々の心は、魂はどこにあるのか? その答えを導くものと期待されているのが量子力学である。


■量子脳理論とは

 意識を量子化学で説明しようとする試みとして有名なのは、英・ケンブリッジ大学の理論物理学者ロジャー・ペンローズ氏と米・アリゾナ大学の麻酔学者で心理学者のスチュワート・ハメロフ氏らによる「量子脳理論」である。ペンローズ氏は1980年代から脳は量子コンピュータであると主張しており、近年では神経細胞の中にある微小管(マイクロチューブル)が脳内の量子計算を行っているという仮説を提示している。

1113quantum-1.jpgロジャー・ペンローズ氏。画像は「BBC」より引用

 微小管はチューブリンというタンパク質が円筒形に連なったもので、神経細胞に限らず様々な細胞内に存在しており、その機能は細胞の構造の維持、細胞分裂、細胞内輸送など多岐にわたっている。ペンローズ氏らは神経細胞内の微小管が伸びた状態と縮んだ状態の二種類の形を取ることができることに着目し、微小管が伸びた形と縮んだ形の重ね合わせ状態で存在し、量子的な物体として振る舞うのではないかと考えた。つまり、量子コンピュータにおける量子ビットの働きを微小管が担うというのである。さらには、他の神経細胞内の微小管と量子もつれ状態(離れた場所にある二つの量子のうち、片方が確定するともう片方も確定する状態)を取ると仮定した。


■微小管? イオンチャネル?

 ただし、この理論には反論も多い。その一つは、神経細胞で起きた量子の重ね合わせ状態は容易に破壊(デコヒーレンス)され、シグナル伝達に必要なわずかな時間すら保てないということだ。また、微小管は量子ビットの候補としては大きすぎるという指摘もある。量子もつれにしろ重ね合わせにしろ、原子や分子・電子など非常に小さな粒子が、原子スケールという非常にミクロな領域で起こす現象である。その点、微小管は非常に大きなタンパク質であり、量子として仮定するには巨大過ぎるのだ。

 なお、最近では微小管ではなく、神経細胞内にあるイオンチャネルに量子力学が関与しているのではないかという指摘がされている。イオンチャネルは神経信号の伝達に関わっており、猛烈な速さでイオンを出し入れして情報のやり取りをしている。このとき、イオンは量子化されているから超高速かつ正確に輸送されているのではないかという説である。しかし、このイオン自体は量子ビットのような働きを持たないことに注意したい。

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