「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビュー

■原作と映画の絶妙なバランスから生まれる魅力

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像4(c)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

――美女ばかりが出演する中、セクシーと言えば、小林稔侍さんの目つきがすごくエロくて、役柄の変態っぽい雰囲気がすごく出ていました。

白石 最高にいい雰囲気でしたね。どこか可愛さもあって。


――原作にある要素の中で、白石監督が1番大事にした部分はどこでしたか?

白石 松坂くんが演じている宇相吹正というキャラクターは、犯罪にならない犯罪行為を繰り返しているのですが、その存在は謎に包まれていて、背景がわかりません。しかも、無償で犯罪を犯しているので、「一体、彼は何のために犯罪を犯しているのか?」という根本的な疑問が残るのですが、そこを観客に考えてもらいたかったので、ミステリアスな部分を1番大事にしました。


――宇相吹や、宇相吹と対峙する多田刑事の人物像の描き方も謎めいていました。もしかして次回作に繋げるために、あえて説明していないのかなと思ったのですが?

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像5(c)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

白石 ははは。私はいつも、人物の背景や今までの人生は“今の言動から想像できるもの”であってほしいと思って映画を作っているんです。そういう意図もあって、背景を描くための回想シーンとかはあまりやりたくなくて。リアルタイムで進行している劇中ドラマの中で垣間見える人物像を大事にしたいので、あえて描いてませんね。

 宇相吹に対しては、原作にも正体や背景が一切明かされていないので、それを映画のほうで勝手に作っちゃうのはルール違反だと思うんです。それに、描かないほうが宇相吹のキャラクターがよりミステリアスになって、観客が「一体これはどういうことなんだろう?」と考える余地ができて面白いと思いました。

 それに元々、私の映画作品には宇相吹のようなミステリアスなキャラクターが出てくることが多くて。過去の作品で言えば『殺人ワークショップ』にも、何者かわからない人物が登場して、人殺しの仕方を教える先生として殺人のワークショップをするというものがありました(笑)。最後まで正体は明かさないし、何者かわからない…そんな話でしたね。


■松坂桃李は、ダークヒーロー・宇相吹正そのもの

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像6(c)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

――実際に松坂桃李さんに宇相吹の演技指導はされたんですか?

白石 松坂くんとは衣装合わせの時に会って、キャラクターについていろいろお話しはしましたが、あんまり細かいことは言ってません。ですが原作には宇相吹のユーモラスな描写というのがけっこうあって、愛嬌があったのですが、映画ではそういう可愛らしい要素を全部排除しました。なので、松坂くんには「なるべく人間的な動きとか目線を排除して、人間を超越したような感じで演じてほしい」というお願いはしました。さらに、「ミステリアスで危険でセクシーで、映画を見た人が『宇相吹に抱かれたい!』って感じるようなキャラクターであってほしい」ということも伝えました(笑)。それを松坂くんなりに色々と解釈して、今回の素晴らしい演技に繋げてくれた感じですね。


――宇相吹が幽霊のように常に手を前にだらんと下げたままなのが印象的でした。

白石 それは松坂くんが考えてやっていたことなので、私の指導じゃないです(笑)。松坂くんは手足が長いので、それがまたかっこいいんですけれどね。かっこよくて不気味というのが宇相吹のイメージにピッタリです。


■「宇相吹に抱かれたい!」女性を虜にする映画

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像7白石晃士監督/撮影・編集部

――白石監督は、どんな人に見てもらおうと思って本作を作られましたか?

白石 自分がいつも根本的にターゲットにしているのは小中学生なんです。それに加えて、本作は女性に見に来てほしい映画なんですよ。宇相吹の危険な魅力に惹かれて、「宇相吹に抱かれたい」って思うような映画にしたつもりなので。観客の皆さまには、「宇相吹に手首を舐められたい」「宇相吹に唇を触れられたい」と、リアルに感じてほしいなと思っています。

――本作のなかでは、たくさんの女性が出てきますよね。

白石 そうですね。いろいろな女性がいろいろなパターンで出てきます。最初は被害者のように見えたけれど、どんどん攻撃的になっていく女性もいますし、かと思えば最後まで筋を通そうとする多田刑事みたいな女性もいます。いろんな女性を描いているという点でも、女性が見に来てくれたらいいなと私は意識しています。映画の宣伝側としても女性に見に来て欲しいというのもあります。若い女性は、松坂くんを始め、新田くん、間宮くんといったキャスティングで見に来てくれるとは思うんです。ですが、OLや主婦の方にも見ていただきたいですね。宇相吹の危険な魅力も堪能できますし、人間のドロドロとした感情を描いているのでワイドショーを見るような感覚で楽しめると思います。


――沢尻さん演じる多田刑事は、宇相吹がただひとりコントロールできないキャラクターですが、強いキャリアウーマンで今風の女性ですよね。正義感が強くて純粋で、沢尻さんにぴったりなイメージだと思いますが。

「PG12」の限界グロに挑んだ映画『不能犯』が、ホラーじゃないのにマジで恐い!見たら最期…白石晃士監督インタビューの画像8(c)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

白石 そうですね。沢尻さんも実際に純粋無垢な感じの方で。人当たりもすごくいいですし、愛嬌もあってかわいらしくて優しい。現場でもみんなが本当に好きになってしまうような感じの人でした。


――それにしても、女性に向けたホラーというのは、めちゃくちゃ新しいですよね。

白石 本作は、ホラーじゃないです。【立証不可能犯罪】スリラー・エンターテインメントなので、サスペンスの要素が強いです。ホラー的な演出や描写があるとは思いますが、ホラーではないんです。ホラーじゃないところが、私も仕事をする上で楽しみなポイントでした。ただ、私が作っているので、ホラー的な要素を感じていただくのはご自由なんですが(笑)。

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