【閲覧注意】ミイラ、腐乱死体、ぬいぐるみ……1000体以上の死体を撮った死体写真家・釣崎清隆が樹海で見たものとは!?

【閲覧注意】ミイラ、腐乱死体、ぬいぐるみ……1000体以上の死体を撮った死体写真家・釣崎清隆が樹海で見たものとは!?の画像3「きりんさん」

 しかしながら、当初私は樹海を避け続けてきた。初めての樹海取材は前述の通り、死体写真家のキャリアも十年以上を過ぎた2007年のこと。すでに手垢にまみれた現場である気がして、私としては自分なりの視点、死生観を確立してから取材をするのが望ましいと思ったのだ。

 同様のことはインド、バラナシの取材にもいえる。多くの写真家が初死体体験をするインドという定番に私が初めて訪れたのは、やはり十年以上のキャリアを過ぎた2006年である。

 これまで死をテーマに四半世紀を駆け抜けてきたが、私は思うところがあり、己の表現者人生を見つめなおすことになった。この取材の機会は表現者としての初心に返り、身を引き締めるいい機会になるはずだ。

■自殺者が辿り着く“300メートル”地点

 2018年のゴールデンウィーク、4月30日から5月2日を利用した取材は充実の結果を得た。それはひとえに、虚心坦懐に協力を仰ぎ、教えを乞うたルポライターの村田らむ氏、樹海探検家の小平氏、事故物件芸人の松原タニシ氏、国産死体に長じた同朋たちのおかげに帰する。天候にも恵まれた。

 4月30日、快晴。
 樹海取材の基本は、自殺者の身になって行動すること。その心理を分析し、その不可思議にも思いをいたす。
 捜索は交通の便の良い富岳風穴を起点に、周辺の自然遊歩道に入るところから始まる。
自殺志願者は、遊歩道の途中で分岐する立入禁止の札と規制線が張られた廃道へ導かれるように分け入る。廃道といっても手入れされていない元自然歩道であって、軽装でも歩行に支障をきたすほどではない。これら廃道を含めた遊歩道から、道なき樹海の心臓部に向かって奥へ直角に数百メートル、小平氏によれば経験的に300メートル地点が、自殺者の終の棲家を発見する確立のしきい値であるという。その遊歩道から300メートルを保った道なき道を平行に進むのが、樹海捜索の基本思想である。

 それでもこの「300メートル」とは、自殺志願者が選択する終の棲家のピークでは決してない。つまり彼らの心理的に、遊歩道から奥へ分け入る者は、人の手の入った遊歩道とは異なる自然条件、特に足下の厳しさと戦いながら、その意志や体力の強弱によって数メートルから300メートルまでの範囲に散在することになるのだ。
 ただ、現場が遊歩道から近ければ近いほどハイカーや好事家に発見されてしまい、通報されてさっさと外へ搬送される確率は高まる。そのため結果として自殺者にとって静かな安住の地は遊歩道から300メートル近辺ということになるのだという。

【閲覧注意】ミイラ、腐乱死体、ぬいぐるみ……1000体以上の死体を撮った死体写真家・釣崎清隆が樹海で見たものとは!?の画像4「きりんさん」を撮影する釣崎氏(撮影:KG”小平”中村)

 初日は、前述の「きりんさん」を皮切りに、いまだ搬送されずに残っている白骨化した友人たちの跡を巡った。そしてこの見えない「自殺者の獣道」の道中で、新規の白骨死体たちが行く手を阻むかのように置き去りにされていた。

 私が2007年の樹海で撮影したのも白骨死体であった。県道71号線から分け入って、枝ぶりのよい樹木を探しつつ、そこに括られた紐を発見したのだ。
 私は自分のルールに従って、地面に落ちた白骨を空中の紐と同時に撮影できるよう現場をアレンジして撮影した。


 今回も、縄から落ちて転がっていった頭蓋骨を枝に近付けてアレンジした。
 同行者たちは死者へ敬意をもつ良き常識人であるため、私の行動に目を丸くしていたのだが、撮影現場を眺めつつタニシ氏が呟いた。
「あ、命を与えてしもうた」

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