インドの辺境に「小人の村」が実在した? 1000の石の家を建てた“失われた種族”の正体とは?

インドの奥地、カルナータカ州。マンゴーの木々と田園風景が広がるこの地に、遠目には粘土でできた家々が並ぶ小さな村のように見える丘がある。しかし、一歩足を踏み入れると、それが人の住む集落ではなく、無数の石の建造物群であることに気づかされる。
ここは「モルヤル・グッダ」、現地の言葉で「小人の丘」と呼ばれる場所。ヒレ・ベンカル遺跡としても知られ、約1000基もの古代の巨石建造物が密集する、世界でも類を見ないミステリアスな場所なのである。
考古学者はこれらの建造物を約2500年前のものと推定しているが、その正確な起源はいまだ謎に包まれている。ヨーロッパのドルメン(支石墓)にも似ているが、石板はより薄く、まるで村のように密集して建てられているのが特徴だ。そして何より奇妙なのは、比較的保存状態の良い「家」に残された、小さな円形の「入り口」。とても大人が通れる大きさではなく、子供か、あるいは非常に小柄な人間でなければ出入りは不可能だろう。

超人的な力を持つ小人族「モリヤル」の伝説
一体誰が、何のためにこの石の村を築いたのか。その答えのヒントは、この地に古くから伝わる伝説にあるのかもしれない。
地元では、この石の家々は「モリヤル」と呼ばれる、今はもう存在しない小人族によって建てられたと語り継がれている。伝説によれば、彼らは小柄ながらも超人的な怪力を持ち、優れた土木技術を駆使して巨大な石を自在に操ったという。
しかし、ある時、天から「炎の雨」が降り注ぎ、モリヤルたちは滅ぼされてしまったとされる。この伝説について、地元の歴史家は「もし彼らがそれほど小さかったのなら、どうやってこんな巨大な石を持ち上げることができたのか」と首をかしげる。伝説には、どこか矛盾がつきまとうのだ。

伝説は真実か?研究者が追う小人族の痕跡
この「小人伝説」は、単なる作り話ではないのかもしれない。インド国立高等研究所のシュリクマル・メノン氏をはじめとする研究者たちは、同様の伝説が南インドの広範囲にわたって存在することを発見している。メノン氏は、伝説には真実の核があり、数千年前に実際に小柄な人々が存在した可能性を指摘。インドネシアのフローレス島で発見された古代人類「フローレス原人」との関連性さえ示唆している。
しかし、考古学的な調査は難航している。これまでの発掘では、建造物の内部から人骨は一切発見されておらず、丘から見つかったのはわずかな土器の破片と原始的な石器のみ。作り手に関する直接的な手がかりは、何一つ残されていないのだ。
忘れられた遺跡の危機と未来
唯一の手がかりは、いくつかの石板に残された赤い顔料(オーカー)で描かれた岩絵だ。イノシシや鹿、そして人間らしきものが描かれたこれらの絵は、紀元前700年~500年頃のものとされ、これが建造物全体の年代推定の根拠となっている。しかし、建造物自体は岩絵よりもずっと古くから存在していた可能性も否定できない。

この貴重な遺跡は、観光ルートから大きく外れた辺境にあるため、年間わずか100人ほどしか訪れない。そのため保存状態は悪化の一途をたどり、宝物を狙う盗掘者の被害にも遭っている。
「古代の人々が多大な努力を払って築いたこの場所を、我々は倍の努力を払って保存しなければならない」と考古学者は訴える。忘れられた「小人の村」が、その謎を解き明かす前に永遠に失われてしまわぬよう、早急な調査と保護が求められている。
参考:Arkeonews、ほか
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2024.10.02 20:00心霊インドの辺境に「小人の村」が実在した? 1000の石の家を建てた“失われた種族”の正体とは?のページです。小人、インド、ドワーフなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで