史上最も環境破壊した男、トマス・ミジリーの罪深き生涯 ― 自らの発明による壮絶死は“大自然の報復”か!?

■フロンガスがオゾン層を破壊

史上最も環境破壊した男、トマス・ミジリーの罪深き生涯 ― 自らの発明による壮絶死は大自然の報復か!?の画像3トマス・ミジリー 画像は「Wikipedia」の記事より

 ミジリーの発明は有鉛ガソリンだけではない。日本では“フロンガス”と呼ばれるクロロフルオロカーボン(chlorofluorocarbon、CFC)を発見し、冷蔵庫の冷媒や各種のスプレーなど、幅広い製品に適用できるように開発体制を整えた。

 今日ではフロンガスが地上から20~30km上空のオゾン層を破壊することがわかっているが、当時はその危険性までは把握されていなかった。有鉛ガソリンの時と同じく、ミジリーは記者会見でフロンガスを吸い込んでその安全性をアピールしている。

 フロンガスを使った製品は、その利便性からその後世界各地で大量に生産され、大気中に放出され、我々が気づかないうちにオゾン層を破壊してきた。1980年代後半から90年代にかけて、ほとんどの国でフロンガスの生産と使用は禁止されたが、一部ではまだ使用している国があるという。

 フランスの国際ラジオ放送局「RFI」が今年7月、中国の一部の工場で現在もフロンガスが使用されていることを報じている。そもそもミジリーがフロンガスを発見して活用しなければ、こんなことにはならなかったのだろう。そして、破壊されたオゾン層が回復するにはまだまだ長い時間を要するとされている。

 こうした“罪”を重ねた因果なのか、ミジリーの晩年は惨めなものになった。1940年、51歳の時にミジリーはポリオを発症し、鉛中毒も相まってこの後、病気がちの生活を送るようになった。そして、彼の最後の“発明”は、自宅で人の助けを借りることなく寝起きするためのクレーン状の仕掛けであった。だが皮肉なことに55歳の時、この仕掛けのロープが首に絡まったミジリーが窒息死した状態で発見されることになったのだ。ミジリーの病と死は、彼によって破壊された大自然の“報復”なのだともいわれているようだ。ミジリーが発明した有鉛ガソリンとフロンガスで汚された地球環境の一刻も早い回復を祈るばかりである。

参考:「Disclose.tv」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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