新宿でしか手に入らない「歌舞伎町文学」がヤバい! 本の既成概念を打ち砕く『ヴァイナル文學選書』の理念を制作陣に聞く!(前編)
■本を買いに街へ出るところまでがコンテンツの一部
テーマ、体裁、執筆陣ともに超変化球を提示しているヴァイナル文學であるが、そのこだわりはコンテンツの外縁部にまで及んでいる。「今回、特に僕がこだわったのは流通です」、そう語るのは石丸とともにシリーズの企画編集にあたっている編集者の辻陽介だ。
「かつてマーシャル・マクルーハンが、情報を伝達するメディアそれ自体もまたメッセージの主要な一部だ、と論じていましたが、そうであるなら、流通の仕方もまたメッセージの一部だと言えるのではないでしょうか。今回、ヴァイナル文學はテーマとなった新宿区限定でリリースし、一切の通販も行いません。何か欲しくなったらタップひとつで手に入るコンビエンスな時代に、あえて街へと足を運んで買ってもらうという点にこだわったんです」
そう、このヴァイナル文學選書シリーズは、テーマとなった「街」に赴かねば入手することができないのである。東京近郊に住んでいる人間ならいざ知らず、地方に住む人間にとってみれば、かなり不親切とも言うべき企画設計。せっかくこれだけ面白い作品を集めても、読まれなければ意味がない。作家陣の豪華さを考慮すればこそ「もったいない」と思わざるをえないのだが、辻によれば、多くの読者に不便を強いることになるとしても、「欲望が育つ余白を大事にしたかった」という。
「別に僕たちはアンチ・コンビニエンスを標榜しているわけじゃありません。ただ、あまりにコンビニエンスな環境に慣れてしまうと、欲望って萎えてしまう。ある本を読みたいと思って、実際に手に入れるに至るまでのプロセス、このプロセスが短縮されすぎてしまうと、本へと向かう欲望が育たないんです。だからヴァイナルシリーズでは、そのプロセスをもコンテンツとして享受して欲しいと思っています」
たとえば、旅の醍醐味が、その道中にこそあるように、読書においてもまた然り、ということか。「手に入らない」ことを楽しむ――あるいはそれは、物質で飽和した現代だからこそ、あらためて再考されるべき価値観であるのかもしれない。
【リリース情報】
東京キララ社 presents
ヴァイナル文學選書・第一弾・新宿歌舞伎町篇
10月19日、新宿区内限定で4作品同時リリース!!
・http://tokyokirara.com/information/1958/
「新宿歌舞伎町萹」作品ラインナップ
『聖パウラ』(著)石丸元章
『鬼畜系ゲームブック熊猫』(著)海猫沢めろん
『北新宿2055』(著)漢a.k.a.GAMI
『あたしを溺れさせて。そして溺れ死ぬあたしを見ていて』(著)菊地成孔
(定価)
1000円(+税)
「新宿歌舞伎町萹」販売店舗
・ブックユニオン新宿店〈新宿区新宿3-34-1 ジュラクツインBビル2F〉
・BERG(ベルク)〈新宿区新宿3-38-1 ルミネエストB1〉
・鎖カフェ〈新宿区大久保3-13-107〉
・3rdroom〈新宿区歌舞伎町1-1-5 パレスビル4F〉
・紀伊國屋新宿本店〈新宿区新宿3-17-7〉
・模索舎〈新宿区新宿2ー4ー9〉
「新宿歌舞伎町萹」出版イベント@DOMMUNE
ヴァイナル文學選書・新宿歌舞伎町篇のリリースを記念して、出版記念トーク&朗読ライブをDOMMUNEにて開催します。
10.23/19:00~21:00 @DOMMUNE 「ヴァイナル文學Night」
出演:石丸元章、海猫沢めろん、漢a.k.a.GAMI、菊地成孔、他
・http://www.dommune.com/
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2024.10.02 20:00心霊新宿でしか手に入らない「歌舞伎町文学」がヤバい! 本の既成概念を打ち砕く『ヴァイナル文學選書』の理念を制作陣に聞く!(前編)のページです。歌舞伎町、海猫沢めろん、新宿、石丸元章、ヴァイナル文學選書、漢a.k.a.GAMI、菊地成孔などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで