新宿でしか手に入らない「歌舞伎町文学」がエモい! 本の既成概念を打ち砕く『ヴァイナル文學選書』の理念を制作陣に聞く!(後編)
■いざ、書を求め歌舞伎町に出かけよう
実は、ここまで紹介してきたヴァイナル文學のコンセプトについては、巻末に掲載されている「発刊の辞」においても集約的に表現されている。とりわけ、約1000字ほどのそのテキストを締め括っている言葉は、実に象徴的だ。
“欲求を満たすためには行動が必要だ。書を求め街に出よう”
執筆者は発行元となった東京キララ社・代表の中村保夫。この文言が「書を捨てよ、町に出よう」と説いた寺山修司へのオマージュであることは間違いないが、現在ではあらためて書を求め町に出ることが奨励されなくてはならないということに、隔世の感を禁じ得ない。
さらに「発刊の辞」で気になるのは、ヴァイナル文學の入手方法として、その街の書店とあわせて「朗読会の会場」というものが挙げられていることだ。なんでも、このシリーズにおいては、発刊後の朗読会の開催も、コンセプト内に盛り込まれているのだとか。石丸いわく「原稿用紙の枚数は一回の朗読に相応しい長さに調整している」とのこと。これもまた文学を街へと開放しようという試みの一つということだろう。
さて、この野心的な文学プロジェクトが、日本の文壇、あるいは出版界にどのようなインパクトをもたらすことになるのか。今後、ヴァイナル文學シリーズは東京都内の異なる街でもシリーズを展開していく予定だというが、ともあれ、まずは第一弾となる新宿歌舞伎町篇を是非とも手に取ってみて欲しい。少なくとも、その透明なヴァイナルの無機質な手触りに、来たるべき「本」の明日を、あるいはその可能性の片鱗を、垣間見ることができるはずだ。
(取材・文/佐々武史)
【リリース情報】
東京キララ社 presents
ヴァイナル文學選書・第一弾・新宿歌舞伎町篇
10月19日、新宿区内限定で4作品同時リリース!!
・http://tokyokirara.com/information/1958/
「新宿歌舞伎町萹」作品ラインナップ
『聖パウラ』(著)石丸元章
『鬼畜系ゲームブック熊猫』(著)海猫沢めろん
『北新宿2055』(著)漢a.k.a.GAMI
『あたしを溺れさせて。そして溺れ死ぬあたしを見ていて』(著)菊地成孔
(定価)
1000円(+税)
「新宿歌舞伎町萹」販売店舗
・ブックユニオン新宿店〈新宿区新宿3-34-1 ジュラクツインBビル2F〉
・BERG(ベルク)〈新宿区新宿3-38-1 ルミネエストB1〉
・鎖カフェ〈新宿区大久保3-13-107〉
・3rdroom〈新宿区歌舞伎町1-1-5 パレスビル4F〉
・紀伊國屋新宿本店〈新宿区新宿3-17-7〉
・模索舎〈新宿区新宿2ー4ー9〉
「新宿歌舞伎町萹」出版イベント@DOMMUNE
ヴァイナル文學選書・新宿歌舞伎町篇のリリースを記念して、出版記念トーク&朗読ライブをDOMMUNEにて開催します。
10.23/19:00~21:00 @DOMMUNE 「ヴァイナル文學Night」
出演:石丸元章、海猫沢めろん、漢a.k.a.GAMI、菊地成孔、他
・http://www.dommune.com/
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2024.10.02 20:00心霊新宿でしか手に入らない「歌舞伎町文学」がエモい! 本の既成概念を打ち砕く『ヴァイナル文學選書』の理念を制作陣に聞く!(後編)のページです。歌舞伎町、海猫沢めろん、新宿、石丸元章、ヴァイナル文學選書、漢a.k.a.GAMI、菊地成孔などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで