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AI、タイムトラベル、死後の世界… ホーキング博士の“オカルト発言”を竹内薫が徹底解説！人類滅亡警告も！

2018.11.21 16:00

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――ホーキングの感覚としては、人間の脳もコンピュータと同じだと言っているぐらいだから、AIが意識を持つのも技術的には可能だと思っているような気がします。

竹内：たぶん、そっちの方でしょうね。人が死ぬというのはコンピュータが壊れるのと同じようなものだと言っているってことは、将来的には人工知能が人間と同じ意識を持つこともありうると思っているんでしょうね。ただ、人工知能が進化したらどの時点で意識を持つと言えるのか、というのは現状では全く分からないですね。脳科学的には、なぜ意識を持っているのかっていうのは誰も説明できないから。

――ホーキングは人の死というものに関してはかなり冷めた見方をしているようですね。

竹内：普通の人は死を怖がるじゃないですか。でも、これも天才の特徴だと思うんですけど、彼は死を恐れないですよね。それは来るっていうだけで、超然とした態度で構えていられる。普通はやっぱり死ぬのは怖いなあとか、あの世はどうなってるんだろうとか考えるじゃないですか。僕は個人的にはあの世はある派なんですけど。ホーキングは病気のせいで死ぬことについてずっと考えていたから、死ぬ準備ができていたんじゃないですか。

――ちなみに竹内さんが死後の世界があると考えるのはどうしてですか?

竹内：自分にとってはなくてもいいと思うんだけど、自分がすごく愛していた人とか猫とか、そういうものは天国に行っていてほしいな、っていう発想ですね。自分は消えちゃってもいいんだけど、自分に対してすごく良くしてくれた人にはそういう場所があってほしいな、っていう希望的観測です。

撮影＝編集部

――スチュワート・ハメロフは「脳は量子コンピュータであり、人間の死後にも意識は宇宙に散らばって永遠に生き続ける」という仮説を立てていますが、そういう可能性はあるんでしょうか。

竹内：それも可能性はゼロじゃないと思うんですよ。意識っていうものが何も分かっていないので、この物質宇宙みたいなものとは別に意識があるっていうのを想定することはそんなに矛盾はしない。ただ、死んだ後に何か残るのか残らないのか、どっちに賭けるんだって言われたら、僕もホーキングの方が正しいと思うんですよ。死んだら消えるだけだと思うんだけど、それはそれとして、人間には心の安定が必要じゃないですか。死んじゃったおばあちゃんとか猫とかそういった存在がどこか別のところで生きていてほしいな、とか考えるんですよね。それが宗教の発端なんだと思います。

　あと、物理学の理論を考えると、量子力学とか宇宙論って仏教的世界観とすごく似てる部分があると思うんですよ。さっきのペンローズの「輪廻転生する宇宙」なんかまさにそうじゃないですか。仏教の輪廻転生とも近いでしょう。ああいう話を見ていると、物理学でここまで解明されたから、魂はありません、天国はありません、って言うのは簡単なんだけど、いやいや、まだ分かんないことたくさんあるでしょ。宇宙の始まりも分かっていないし、前の宇宙があったかどうかも分かっていないんですよ。意識の起源も分かっていないし、厳密に言うと生命をゼロから作ることもできないですから。それだけ分からないことがたくさんある中で、ほんのちょこっとだけしか科学は解明していないんだから、まだまだ天国の存在を否定するデータは揃っていないんじゃないかと思います。

――最後にまとめとして、竹内さんから見てホーキングはどういう人物だったのか、ということを教えていただけますか。

竹内：アインシュタインは「大切なのは知識ではなくイマジネーションだ」と言っているんですが、ホーキングはまさにこの言葉を地で行っていますよね。イマジネーションが空高く宇宙まで羽ばたいてるんですよ。それをすごく美しい数式でちゃんと表してくれているのがすごいなって思いますよね。ホーキングは論文が美しいんです。論文を読んでいて、SFとして、文学作品として絶品だね、みたいな感じなんです。めちゃめちゃよくできている小説というか、詩に近いものですね。情緒性が全くなくて、必要なことしか書かれていない。これ以上は削れないミニマルの美しさがあります。
（取材・文＝ラリー遠田）

撮影＝編集部

竹内薫
1960年、東京都生まれ。サイエンス作家。1983年に東京大学教養学部教養学科卒業、1985年に東京大学理学部物理学科卒業。1992年、カナダ・マギル大学大学院博士課程修了(専攻:高エネルギー物理学)。Ph.D.(理学博士)。科学書の執筆・翻訳、評論、講演などで幅広く活躍。NHK Eテレ「サイエンスZERO」でナビゲーターを務める(2012年~2018年4月)。湯川薫の名義でミステリー小説も手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)