物体浮遊、生きた霊体と面会、天理教… 文豪・芹沢光治良をオカルトにハマらせた“3つの出逢い”とは!?

 こうして見てくると、芹沢の生涯には常に天理教の影があったが、教団としての天理教には最後まで批判的で、井出国子や大徳寺昭輝といった、教団を離れて中山みきの教えを伝える人物を頼ったと言えよう。

物体浮遊、生きた霊体と面会、天理教… 文豪・芹沢光治良をオカルトにハマらせた3つの出逢いとは!?の画像9神と人間』(新潮社)

 それでも、晩年の「神シリーズ」に至るまで芹沢は、こうした自身の宗教的傾向を明らかにしかなった。この背景には、教団としての天理教に対する幼い頃からの反発、フランスに留学したインテリとしての矜持、それに世間からの評価をおそれたことなど、様々な思惑が推定できる。しかし「神シリーズ」は、そうしたしがらみを一切脱ぎ捨て、人間としての真の芹沢を正面に出した作品となっており、それ故大きな感動をもたらしたのだろう。

 考えてみれば、作家の仕事というものは、自らが得たインスピレーションを文章の形で紡ぎ出すものだ。ある意味、自動言語や自動書記といった現象にも通じるものがあるだろう。「文学は物言わぬ神の意思に言葉を与えることである」という芹沢光治良の言葉は、この本質を端的に言い表していると言えよう。
(文=羽仁礼)


羽仁礼(はに・れい)
一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員


参考:『人間の運命 第2巻 友情』(新潮社)、『人間の運命 第2部 第2巻 嵐のまえ』(新潮社)、『神の微笑』(新潮社)、『芹沢光治良』(勉誠出版)、『評伝芹沢光治良』(楡林書房)、『新潮日本文学アルバム 芹沢光治良』(新潮社)、『国文学解釈と鑑賞』2003年3月号(至文堂)、『神と人間』(新潮社)、ほか

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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