知ればもっと面白い(そして怖い)『ポルターガイスト』に隠された10の制作秘話。ピエロ人形の恐怖から、一発撮りの天才的トリックまで

1982年に公開され、今なお多くの人々のトラウマとして記憶されるホラー映画の金字塔『ポルターガイスト』。郊外の平和な一家が、突如として怒れる霊たちに襲われるこの物語は、テレビの砂嵐や殺人ピエロ人形といった象徴的なシーンで、私たちの文化的な悪夢の一部となった。
しかし、多くの人が知らないのは、その撮影現場がスクリーンに映し出された恐怖と同じくらい、奇妙で不気味な出来事に満ちていたという事実だ。危険なスタントの失敗から、本物の人骨を小道具に使うという常軌を逸した判断まで、その制作過程は映画本編に勝るとも劣らない恐怖に満ちていた。ここでは、伝説的な「呪い」の噂を裏付けるかのような、撮影現場で起きた10の奇妙なエピソードを紹介しよう。
【1】プールの骸骨は“本物”だった
映画史に残る最も不気味な制作秘話だろう。母親役のジョベス・ウィリアムズが、泥だらけのプールで骸骨に襲われるあのシーン。彼女が後年になって知った衝撃の事実、それは、プールで使われた骸骨が本物の人間の遺骨だったことだ。
ウィリアムズは「小道具係が作ったレプリカだとずっと思っていた」と語るが、実際には本物の死体と一緒に泳がされていたのだ。この恐ろしい決断が、「ポルターガイストの呪い」という伝説を何十年にもわたって語り継がせる最大の要因となった。
【2】殺人ピエロ人形が、子役の首を本当に絞めた
観客を恐怖のどん底に突き落としたピエロ人形の襲撃シーン。実はこれ、演技ではなかった。ロビー少年が邪悪な人形に襲われる場面の撮影中、機械仕掛けの人形が故障し、子役オリヴァー・ロビンスの首を本気で締め上げてしまったのだ。
監督のスティーヴン・スピルバーグは、あまりの迫真の演技に感心していたが、少年の顔が紫色に変わっていくのを見て異変に気づき、慌てて人形を引き剥がしたという。映画の恐怖と現実の危険の境界線が、極めて曖昧になった瞬間だった。
【3】CGではない!巨大な“回転する部屋”セット
母親が目に見えない力によって寝室の壁や天井を投げ飛ばされるシーン。これはCGではなく、実際に部屋ごと回転する巨大なセットを建設して撮影された。カメラを固定したままセットを回すことで、まるで彼女が超常的な力で振り回されているように見せたのだ。このアナログな特殊効果は、画面上では見事だったが、何度も撮影を繰り返した女優は「人間洗濯機の中にいる気分だった」と語っている。
関連動画:https://www.youtube.com/watch?v=DGZanwuNO7o
【4】ドリュー・バリモアの落選が『E.T.』を生んだ
ハリウッドの奇妙な運命のいたずらだ。当時子役だったドリュー・バリモアは、主人公の少女キャロル・アン役のオーディションを受けたが、落選してしまった。しかし、彼女の才能に感銘を受けたスピルバーグは、『ポルターガイスト』と同時進行で企画していた別の映画『E.T.』の主役に彼女を抜擢した。一つの落選が、映画史に残る名作の誕生につながったのだ。
【5】一発撮りの“椅子ピラミッド”
キッチンの椅子が、ひとりでにテーブルの上に積み上がりピラミッドを形成する衝撃的なシーン。これは高度な特殊効果ではなく、カメラが別の方向を向いている一瞬の隙に、スタッフが猛ダッシュで椅子を積み上げただけという、極めてシンプルな一発撮りのトリックだった。完璧なタイミングとチームワークが生んだ、アナログならではの名シーンだ。
【6】這い回る生肉は“肉の操り人形師”の仕業
カウンターの上を、まるで生き物のように這いずる一枚の生肉。この気味の悪いシーンも、実は肉にワイヤーを取り付け、セットの下からスタッフが操っていただけ。その日の彼の仕事は、文字通り「ミート・パペッティア(肉の操り人形師)」だった。最もシンプルな仕掛けが、時に最も効果的な恐怖を生むという好例である。
【7】MGMのライオンが吠えるイースターエッグ
この映画の制作会社はMGM。監督たちは、映画の最も心臓に悪いジャンプスケアの瞬間に、MGMの象徴であるライオンの咆哮を効果音としてこっそり紛れ込ませた。また、あるグロテスクなシーンで顔の肉を引き裂く手は、実はスピルバーグ本人の手だったという。遊び心あふれる粋な隠し要素だ。
【8】家の崩壊シーンは精巧なミニチュア模型
クライマックスで家が異次元に吸い込まれ、崩壊する圧巻のシーン。これは高さ約1.2メートルの精巧な家のミニチュア模型を制作し、それを破壊して撮影された。掃除機のような発生装置でブラックホール効果を生み出し、撮影された壮大な崩壊シーンは、フィルム上ではわずか2秒の出来事だった。
【9】霊能者役の女優は、本物の霊能者だった
印象的な霊能者タンギナを演じた女優ゼルダ・ルビンスタイン。彼女は、私生活でも本物の霊能力を持っていたと主張していた。彼女は撮影中、監督のトビー・フーパーの集中力を「感じ取ることができた」と語るなど、役柄と現実がシンクロした、まさにハマり役だった。
【10】監督は誰だ?今なお続くスピルバーグvsフーパー論争
『ポルターガイスト』最大の謎、それは「一体誰が本当の監督なのか?」という問題だ。公式クレジットは『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパーだが、現場ではスティーヴン・スピルバーグが実質的な監督として采配を振るっていたと、多くの関係者が証言している。映画の作風もフーパーよりスピルバーグのそれに近く、この「監督論争」は、映画の最も根強いミステリーとして今も語り継がれている。
これらのエピソードが示すのは、CG技術が未熟だった時代に、いかに作り手たちが情熱と創意工夫を凝らして「本物の恐怖」を追求したかという証でもある。アナログなトリック、危険と隣り合わせのスタント、そして常識外れの決断。そのすべてが奇跡的に結実し、映画史に残る傑作が誕生したのだ。スクリーンの向こう側で繰り広げられた“もう一つの物語”を知ることで、『ポルターガイスト』という作品は、より一層深く、そして恐ろしく我々の心に迫ってくる。

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2024.10.02 20:00心霊知ればもっと面白い(そして怖い)『ポルターガイスト』に隠された10の制作秘話。ピエロ人形の恐怖から、一発撮りの天才的トリックまでのページです。ポルターガイスト、スティーブン・スピルバーグなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで