――そのなかで、首席撮影官、つまり、林さんの役割はどのようなものなのでしょうか?
林 私はリーダーなので、誰がどの公務に撮影に行くかを決定します。蔡総統の側近の1人として映像顧問も務めていて、撮影した写真や映像の選択、構成、最終チェック、全体のバランス調整やクォリティコントロールも担っています。
――1か月にどのくらいの時間を蔡総統とともにするのですか?
林 時期によって変わりますが、今年の7月は4、5日。その1日のなかでも数時間だけということもありました。撮影官5人で1週間に1日ずつのローテーションを組むこともあれば、撮影はほかの写真官に任せて、私自身は2週間以上、随行しないこともあります。
――総統を撮影するさいのルールのようなものがあれば教えてください。
林 一般の商業写真と同様に、まず第一に、総統を醜い姿に撮ることは避けなければならないし、見た人がいい印象を持つような写真をたくさん撮らなければなりません。そしてやはり、その場その場で政治的空気感を読むことは必須です。
――具体的にはどのような?
林 たとえば、国家安全会議の会場での撮影のさい、シャッター音などの撮影時に生じる微細な音が議論の妨げになったり、議論になにかしらの影響を与えないか、そこにカメラがあることが邪魔にならないかを総合的、かつ瞬時に判断しないとなりません。そこで政治的なセンスは重要になります。