――まるで天啓のようですね。
林 そう言われても「この人は一体何を言っているのか?」と思いました。ところが、正式に洗礼を受けてクリスチャンになってからある日、パッと目の前が開けた経験をしました。突然、自分の撮りたいものが撮れるようになったんです。
――それは面白い。
林 そこからフリーランスのカメラマンとして生計を立てられるようになってきました。写真は独学で学んでいたので、胸を張って写真家だと言えるまでに4、5年はかかりましたが。
――大変だったでしょう。
林 フリーのカメラマンはとにかくお金がかかります。当時はフィルムを使っていて、1か月に何十本も撮っているととんでもないことになる。食費にも事欠いて、どこかに小銭が落ちていないか部屋中を探して回ったり、お金が無さ過ぎて苦しい毎日で、鬱のようになることもありました。というか、鬱になっていたのかもしれない。親族には「勉強して大学院まで出たのに金にもならない写真をやっているなんて」と非難されることもありました。
――それでも写真を続けてきたんですね。
林 神が私にこの写真を撮る力を与えてくれたのに、その使命を果たしていないのは何か違う、という思いで進んできました。そんななか、台湾高速鉄道の公式カメラマンの職を得ることができ、その仕事で初めて安定した収入を得て、写真で食べていけるようになりました。
――総統府専属首席写真官になったいきさつは?
林 バラク・オバマ前米大統領のオフィシャルカメラマンだったピート・ソウザの写真を見て、こんな写真が撮りたいと思い、チャンスを探していた時に、民進党のカメラマンの募集を見つけて応募しました。蔡英文氏がまだ台湾総統になる前のことで、私自身、彼女のことは知らず、ゼロからゆっくりと知っていきました。彼女の台湾総統就任にともない、総統府首席写真官を務めることになったのです。