「日本の大麻取締法の規制根拠に強い疑問」弁護士・亀石倫子が断言! 高樹沙耶×石丸元章「大麻と法律」徹底議論

石丸 アグレッシブな展開になってきたぞ。あのー、亀石先生―― 高樹さんがこれまでも主張してきているように、大麻取締法は占領下の日本でGHQの指示という戦後の特殊なプロセスを経て成立した法律です。最新の科学の見地から規制の合理性がないことに加えて、そういうことも含めて、法曹界で語られることはないんでしょうか?

亀石 法律家仲間で大麻の話をすると、私と同じ考えを持つ方はたくさんいるんです。ある裁判官も、プライベートな場で、「規制する根拠がわからない」とおっしゃっていました。裁判官は判決の後で被告人に訓戒みたいな言葉をかけることがありますが、大麻取締法違反に関しては、「どう言ったらいいのかわからない。国がダメと言っているからダメなんだ、としか言いようがない」とこぼしていた裁判官もいました。

石丸 ええええ、そうなんですか!? 驚き。

画像は「Getty Images」より引用

亀石 大麻取締法の規制根拠に疑問を抱いている法律家はたくさんいると思います。

高樹 どうにかならないんでしょうか?

亀石 ただ、それは立法の問題であって、弁護士や裁判官は現行法のもとで動くしかないんですよ。おかしいとは感じているけれど、どうにもできない。

高樹 私のように大麻取締法で逮捕され、社会的な立場を奪われてしまった人達や大麻取締法をおかしいと思う国民が「この法律はおかしい」と考え、法律を改正したいと申し立てるのには、どうしたらいいんでしょうか。

亀石 法律の改正を、立法府(=国会)に働きかけるのが筋なんだと思います。

高樹 法律を変えるためには、政治家に働きかけて、国会で取り上げてももらう。他にやり方はないんでしょうか。

亀石 私がこれまで闘ってきた裁判では――例えば「クラブ風営法違反被告事件」は、クラブ営業を「風俗営業」とみなして風営法を適用すること自体がおかしいと主張しました。地裁、高裁、最高裁、すべてで無罪となり確定。この判決が風営法を改正するきっかけになりました。また、いま最高裁に係属中の「タトゥー彫り師医師法違反事件」は、彫り師に医師法を適用すること自体がおかしいと主張しています。控訴審で逆転無罪を勝ち取りましたが、最高裁で確定すれば、彫り師という職業に関する法整備が進んでいくかもしれません。しかし、大麻取締法の場合は、これらの事件のように「その法律を適用するのはおかしい」というアプローチはできません。適用される法律自体がおかしい、というケースなので。

石丸 どちらも大変話題になった裁判ですよね。司法の判断が、法改正につながることもあるんですね。

亀石 警察が被疑者のクルマに勝手にGPS端末を取り付けて監視捜査をしていた「GPS捜査違法事件」も最高裁まで争いました。2017年3月に最高裁は「裁判所の令状を取らないGPS捜査は違法だ。GPS捜査をするためには新しい法律をつくるべきだ」という判決を下すんですよね。

高樹 はい。

亀石 しかし3年経っても、法律はできないままです。

石丸 ええええ! なんでなのよ。

亀石 司法の判断が法改正につながることもありますが、立法府が動かないこともあるんですね。

石丸 驚いてしまうなあ。裁判の意味を考えてしまう。

亀石 一方で――裁判で争っている最中は、警察はクラブを風営法違反で摘発しなかったし、彫り師を医師法違反で摘発しなかったし、令状なしのGPS捜査もおそらくしていなかったと思います。係争中で司法の判断が出ていないので、それまではやめておこうという。だから、刑事裁判で争うことで、事実上、同種の事案での摘発や捜査が止まるという効果はあるのかもしれません。

高樹 医療大麻の案件では山本正光さんという末期ガンの方が起こした裁判がそうなる可能性を秘めていた。私も一度、直接お会いしてお互いの健闘を称えあったのですが、実際には判決が下る前にガンが進行して亡くなってしまった。命を賭けた覚悟の裁判でしたので、せめてもっと報道されて欲しかったのですが……。

(つづく)

◎亀石倫子(かめいし・みちこ)

1974年6月22日、北海道生まれ。「法律事務所エクラうめだ」代表弁護士。東京女子大文理学部英米文学科卒業後、1997年に札幌で通信会社に就職するも、3年半で退職。結婚して、大阪に転居する。たまたま目にしたパンフレットで弁護士を志し、2008年に司法試験に合格。2009年に大阪弁護士会に登録、刑事事件を数多く手がける。共著に『刑事弁護人』(講談社現代新書)

Twitter: @MichikoKameishi

 

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◎高樹沙耶(たかぎ・さや)
1963年8月21日、静岡県生まれ。元女優、元作詞家、石垣島のキャンピングロッジ 「虹の豆」オーナー。1983年に主演映画『沙耶のいる透視図』で女優デビュー、映画&ドラマシリーズ『相棒』ほか、数多くの作品に出演、人気を呼ぶ。著書に『贅沢な暮らし—衣食住が育む「心のラグジュアリー」』(エクスナレッジ)、『ホーリープラント 聖なる暮らし』(明窓出版)ほか

Twitter: @ikuemiroku

文=石丸元章

◎石丸元章(いしまる・げんしょう)

1965年8月9日、千葉県生まれ。作家、ライター。高校在学中にライターデビュー、人面犬ブームの仕掛け人。著書に『スピード』『アフター・スピード 留置場→拘置所→裁判所』『平壌ハイ』『神風』(すべて、文春文庫)など多数。近作に『聖パウラ』(東京キララ社「ヴァイナル文學選書 第一弾」)

Twitter: @chemical999

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