口永良部島にある奇跡の「400円宿」に潜入! 最高の露天風呂も

 屋久島の西北約12kmの海上に浮かぶ口永良部島に1泊400円(※光熱費等別)で泊まれる施設があった。今どき1泊1000円以下で泊まれるようなところは、沖縄のゲストハウスを除けば、そんなに多くはないだろう。ちなみに「あった」と書くのは、現在閉鎖されているからだ。

 この宿泊施設は、寝待という集落にあり、建物は民家のような形をしている。部屋は4つあり、6畳と8畳くらいだったと記憶している。布団は、置かれていないので寝袋などを持って行く必要があったが、1カ月いても1万円ちょっとしかかからないのが魅力的だった。

 初めてここに行ったときは、その宿泊代に驚かされてしまったが、もっと驚かされてしまったものがある。それは、この集落にある温泉だ。泉質は一般的な乳白色だが、とても効能があったからだ。湯治場としても知られており、地元の人たちも身体を流しに来ていた。もちろん、旅行者も来ていた。

 驚かされたのは、それだけではない。この集落には、飛びっきり上等な露天風呂があった。これを作ったのは、長年施設で暮らしていたNさんという男性で、ゴロゴロとした丸石が並ぶ海岸から湧き出している源泉を溜めていた。この風呂は、屋久島南部にある平内海中温泉のように、1日に2回ある干潮の前後に入ることができた。6月は気候に恵まれているだけではなく、潮の満ち引きも大きくなるので、年のうちで一番気持ち良く入れるシーズンだった。とりわけ真夜中に沖合を航行する船や星空を見ながら入るのは、最高だった。Nさんの露天風呂は、日本中の温泉地を廻った温泉ライターが認めるほどの良泉だった。

 しかし、この露天風呂入った後は、いつも大変なことになった。強力な睡魔が襲ってくるからだ。Nさんに聞いてみると、「温泉に入って疲れるということは、身体の悪い部分を治していることになるんだから心配しなくていいよ(笑)。時間があるなら、ここに何カ月かいるといい。どんな病気も治ってしまうよ。オレなんか内臓が悪かったけど、今じゃピンピンしてる! サラリーマンをやっていた頃に随分無理したからね。みんな会社なんか辞めて、ここに来るといいよ!」などと言っていた。

 

 口永良部島には、バスやタクシーなどの交通機関はない。島内の移動は徒歩だ。それでもリュックサックを担いで大学生や旅行者泊まりに来て、テクテク歩きながら、島内の温泉巡りを楽しんでいた。慣れている人たちは、屋久島から船に原付バイクを乗せてやって来る。島内には、西ノ湯、寝待、湯向という集落に温泉があり、どこも風情があった。

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