【追悼】日本最後のストリップ劇場ポスター絵師・日田邦男さん亡くなる… 在りし日の“作品”の展示情報も
京都府京都市内にあるDX東寺というストリップ劇場で、20年以上「ストリップ劇場ポスター」を描いてきた“ストリップ劇場ポスター絵師”の日田邦男さんが9月30日、心不全のため亡くなった。79歳だった。
日田さんは、日本最後の「ストリップ劇場ポスター絵師」として知られていた。ポスターは、大きな画用紙に蛍光絵具を使って描いていく。風景写真や旅行パンフレットなどもカラーコピーを取りながらコラージュする。下書きをするときは鉛筆を使うが、それを消すことはない。絵を描くときの決まりごとのようなものはなく、それがかえっていい味を出していた。キャッチコピーもすべて自分で考えた。「作品」には、他の劇場では見ることのできない味わい深さがあり、畳サイズの特大版もあった。
ポスターを貼り替える前の日、日田さんは劇場にあるポスター室に泊まり込んでいた。夜のうちに下地を作っておき、朝早く起きて一気に仕上げるからだ。まだ人々が寝ている時間に目を覚まし、筆を走らせる。その心意気からは、職人の魂を感じることができた。
日田さんは昭和16年に6人兄弟の長男として大阪市西成区で生まれた。生涯独身だった。父親が映画や劇場の看板職人だった影響もあり、キャバレー王の福富太郎が経営していた「ハリウッド」の美術部や大阪「パレス」のキャバレー企画部に在籍、新聞社で新聞広告を作っていたこともあるそうだ。日田さんの風貌は赤塚不二夫に似ていた。
以下、生前の日田さんへのインタビューだ。
「このような仕事に就いたのは、もう40年以上前のことになります。ここに来る前は、キャバレーのポスターを描いていたこともあります。東寺に来たのは阪神大震災の後なので、もう20年以上前ですね。香盤は10日ごとに変わるので、その度に描いています。会場の照明係もやっているんですよ。今の給料は6万円、それに生活保護を6万円もらっています。まぁ、何とか食べていかれます……(笑)」
劇場がオープンするのは、午前11時。ポスターができあがると、日田さんは開店前に入口に置かれている大きなボードに貼る。業務用のホッチキスを使って各所を留めていくと、最後に金色のテープを使って四片をマスキングする。このテープを貼ることによって、ポスターが生々しいものになる。4年前の春には、こんな話をしてくれた。
「もうかなり暖かくなってきましたね。桜の時期は終わりかけていますが、ちょっとでも明るくしたいと思いまして、桜の花びらを添えてみました。ある女の子は、四国の出身なんですよ。とってもステキな踊りを見せてくれます。朝になってから仕上げるのには理由があるんです。“そのとき”になると何とも言えないインスピレーションが湧いてくるんです。この仕事は、私の心の友ですね。いつまでも描き続けたいです!」
DX東寺にある工房には、今でも日田さんが使っていたものが残されているという。こうしたものを展示できるような場所があれば、日本最後の「ストリップ劇場ポスター絵師」である日田さんの仕事を後世に伝えることができるだろう。冥福を祈りたい。
追記(編集部): 静岡県伊東市にある「まぼろし博覧会」(館長:セーラちゃん)に、酒井透さんがコレクションしていた日田邦男さんの「作品」が展示された。特設ブースには、酒井さんが撮影した日田さんの写真なども展示されている。日本最後の「ストリップポスター絵師」だった日田さんの”職人魂”を「まぼろし博覧会」まで見に行こう!
「まぼろし博覧会」
静岡県伊東市富戸梅木平1310-1
0557-51-1127
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