愛し合うカップルを布団圧縮袋に入れて真空パックした『Flesh Love』で主に海外の写真シーンから注目を浴びたフォトグラファー・ハルさん。2015年には、広告の世界で最も名誉あるアワードを獲得している。
その、フォトグラファー・ハルさんの新作写真展が、5月7日から東京・新中野のギャラリー冬青で始まった。タイトルは『Washing Machine』。モチーフは「ドラム式洗濯機」だ。
この奇想天外な作品はどのように生まれたのか? 話をうかがった。
■コロナ禍の日常で発見した「洗濯機」という宇宙
ーー『Washing Machine』を思いついたきっかけは?
ハル:コロナ禍以降は家にいる時間が圧倒的に長くなったんです。その間、自分で洗濯機を回すことが増えて、単純に「これで作品を作れないか」って思ったんですよ。『Couple Jam』のバスタブみたいな感じで、洗濯機で作れないかなって。
でも、それはその時に始まったことじゃなく、前にも一度考えたことがあったんです。ぐるぐる回る洗濯槽を見ながら、自分がやってきた『Couple Jam』とか『Flesh Love』に似たビジュアルだって思って「ここに人が入ったら面白いけどそんなことは可能なのか?」って考えていたことが1つの軸になっていますね。
ーー『Couple Jam』ではバスタブでカップルを1つにして、続く『Flesh Love』、『雜乱』では布団圧縮袋に真空パックしてきましたよね。昨年発表した『Flesh Love All』に至っては、2人が生活する家も含めてまるごとパックしてしまったように、ハルさんの作品はスケールを拡大するベクトルにありました。ところが、『Washing Machine』はその逆方向ですね。
ハル:逆というか、違うラインというか。
ーーもはや家まで包んでしまったわけですから、今後拡大するにしても物理的な行き詰まりにぶつかることは見えているわけで。
ハル:『PINKY & KILLER DX』とか『Couple Jam』はそもそも、カップルを、パックするというよりも、凝縮する方向でどこまで行けるかっていうことを考えてやっていたんですけれど、『Flesh Love』でやりきっちゃったんですよね。これ以上行けない所まで突き当たってしまったら、逆に行くしかないっていう考えもありました。
それに加えて、カップルを家ごとパックする『Flesh Love All』は1点撮影するのに時間がかかるんですよ。それだけをやっていると作品発表が止まっちゃうので、わりと短いスパンで撮れるシリーズも同時進行でやっておく必要があるということが大前提として頭のなかにあるんです。だから、僕の場合、ブラックホールのように収縮と拡張を繰り返しているのかもしれないですね。
ーー洗濯機のなかのモデルには奥様も含まれていますね。写真家の妻とはいえ、ご自身の下着とかと一緒に写真に写って、作品として公開されることについてどう思っているんでしょう?
ハル:不愉快かもしれないですけれど、「夫がいい作品を作ってくれるなら……」っていう思いだけだと思います。感謝してます。
ーーモデルと一緒に洗濯機に入れるものを選ぶ基準はあるんですか?
ハル:その人のキャラクターがわかるようなものを選んでもらっています。