世界のLGBT運動に革命を起こした「ローラリーナ」が本当に伝えたかったこと ― 社会に魔法をかけた“妖精”の真実
6月は「プライド月間」として日本でも知られるようになった。毎年、世界中で性の多様性に関するさまざまなイベントが催され、コロナ禍のこの2年もその勢いは衰えていない。
■ゲイカルチャーのレジェンド、ローラリーナとは
しかし、なぜ6月なのか?
すべては1969年6月28日未明に起きたニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」での乱闘に始まる。ガサ入れで踏み込んだ警察の横暴ぶりに、性的マイノリティたちのそれまでの鬱憤が一気に爆発! これを「ストーンウォールの反乱」と呼ぶ。
また、同月22日に亡くなったLGBTQの理解者であった大女優ジュディ・ガーランドの追悼に集まったゲイたちの神経を逆なでしたことも火に油を注いだらしい。現在、レインボー・フラッグがLGBTQムーヴメントの象徴として用いられるのは、ミュージカル映画『オズの魔法使い』で、ジュディ演じる主人公ドロシーが歌う「虹の彼方に」から由来しているという。
60年代後半~70年代のアメリカは、ベトナム戦争が行き詰まり、戦没者数が増大の一途をたどっていた頃でもあったので、社会は不穏な空気に包まれていたはずだ。そんな時代に、ともすれば閉塞感で押しつぶされそうになっていた人々の前に、自由に吹き抜ける風のような“妖精”が現れた。彼女の名は「ローラリーナ・フェアリー・ゴッドマザー」。LGBTQムーヴメントの礎を築き、ニューヨークのゲイカルチャーのアイコンへと上り詰めていった生けるレジェンドだ。
1972年9月16日のサタデーナイト。ヒラヒラの白いお姫様ドレスに50年代の帽子とコサージュをあしらい、グリニッジ・ビレッジのクリストファー・ストリートをローラースケートで滑走した瞬間、ローラリーナは誕生した。
最初こそキワモノ扱いされた彼女だったが、次第に耳目を集めることに。ラインストーンを散りばめたメガネにジュエリー、トレードマークの小さな角笛などなど、後に彼女のキャラを決定づけるコスプレに磨きをかけていった。
実はローラリーナはベトナム帰還兵だった。1948年にケンタッキー州の田舎町で生まれた少年は、18歳で徴兵登録。高校卒業後にベトナムで砲兵隊の歩兵として従軍し、1969年9月に帰国した経歴を持つ。
ニューヨークに出てきてからはウォール街で働きだしたが、普通のブローカーでは終わらなかった。1970年からスーツにバックパック姿で、頭に傘をさし、ローラースケートで通勤するようになったという。79丁目と5番街でスケートの練習をしているところをよく目撃されたらしい。
日中はウォールストリートで生き馬の目を抜き、それ以外の時間は「全米ナンバーワンのローラースケートクィーン、ローラリーナ」と自負する。
■LGBTムーヴメントの先駆者
当時の彼女を紹介する動画がある。1970年代のニューヨークといえども保守的な金融街で、奇抜なファッションに身を包み、ローラースケートでターンする彼女を「恥知らず」、「あれで『妖精のゴッドマザー』とか言いたいわけ?」と、ビジネスピープルの反応は冷ややかだ。
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