超有名観光スポットに突如生首! 浮いた首なし遺体と謎の遺書…タイの外国人首吊り事件とは?
■殺人か?自殺か?
実は遺留品がそこに1つだけ残されていた。生首は右耳を下にして、まるで川上を見つめるように橋からぶら下がっていた。遺留品は、右耳に引っかかっていたビニール袋だ。「Camera por-ta vesovo」というロゴ入りの袋は、イタリアのホテルのものだと判明している。当然、捜査チームはイタリア・マフィアによる犯罪の線を想定し始める。首を切り落とし、見せしめに橋の上から吊るしておく。そんな残忍なやり口が、まさに映画の中のマフィアそのものだったからだ。しかし、現場検証が進むにつれ、このマフィア説には説明できない2つの謎が浮かび上る。
第一は「橋桁に飛び散っていた血痕」だ。生首を吊るす際に血が橋桁まで飛び散ったならば、頭を切断した直後か、切断面の血が固まる前でなくてはならない。しかし、橋桁を除いて、橋の路面には血痕ひとつ残っていなかった。
第二の謎は「欄干に残された遺書めいた文章」である。欄干には、“cath i want to..but i can not i came to Bangkok to be you”という書き置きがあった。文章の拙さから、英語を母国語とする国の人間ではない、と思われた。もちろん推測の域は出ない。
行き詰まる捜査班に事件の突破口を開いたのが、死体検分の結果だった。バンコクでも指折りの権威あるシリラート病院は「首の断面周りの皮膚を調べたところ、刃物によって切断されたのではない可能性が見られる」と発表し、続けて、切断面にある無数の血管を一本一本詳細に調査検分。結果、血管の切れ方は均一でなく、何かの衝撃で頭部が胴体から千切れた状態に近いと判明。最も可能性ある説明は「死亡男性は自らロープを巻き橋から飛び降りた、その落下の衝撃で首に食い込んだロープが頭部を切断するに至った」となった。
新聞が報じたのはここまでだ。しかし、この事件を追及した興味深い個人サイトを見つけたので紹介することにしよう。
■報道の先にあったミステリー
サイト所有者の名はPhysikMan。「物理男」のニックネーム通り、物理的見地からロープの長さや落下速度を考慮し、数式によって首がロープで切断される可能性を証明した点がユニークだ。それだけでなく、生首となった男性の当日の心境も交えた仮説を時系列で論じているため、事件当時の状況がありありと浮かんでくる。タイという異国において、残酷で稀有な死を遂げた、ある白人男性の最期を想像してみてほしい。以下、物理男の仮説である。
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