ドがつくPUNKライブ体験特化型映画『fOUL』の迫力がヤバいと話題! 大石規湖監督インタビュー

 

© 2021 The top of fOUL films, all rights reserved.

 1994年に谷口健(Vo/G)、平松学(B)、大地大介(D)の3人で結成されたバンド、fOUL(ファウル)。USハードコア/パンクに日本独特のメロディと語彙を融合させたその音楽性は無類であり、eastern youthやbloodthirsty butchersとの共演や音源リリース、計34回にわたり主催した自主企画ライブ「砂上の楼閣」などによりアンダーグラウンドで異彩を放っていたが、2005年に突如“休憩”を表明し、以後16年、休憩中のまま現在に至っている。そんなfOULの、まさかのドキュメンタリー映画『fOUL』が現在公開中だ。

 監督は、正体不明の音楽レーベル〈Less Than TV〉の谷ぐち順とその家族に密着した『MOTHER FUCKER』(2017年)、現存する日本最古のパンクバンド、the 原爆オナニーズのあり方に迫った『JUST ANOTHER』(2020年)に続き、今作が長編3作目となる大石規湖。各所に散らばっていたアーカイブ素材を発掘し、“ライブを体感できる映画”に仕上げてみせた。しかし、fOULが映画化されるなど誰が予想しただろうか。そのあたりも含め、自身も20年来のfOULファンである大石に話を聞いた。


◆プロデューサーと2人でコソコソ作っていた


――よくfOULの映画を作るなんていう企画が通りましたね。

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大石規湖(以下、大石)
 それはもう、キングレコードの長谷川英行プロデューサーのおかげですね。長谷川さんはfOULがベルウッド(キングレコードのレーベル)からアルバムを出す(2001年リリースの3rdアルバム『Husserliana』と2003年リリースの4thアルバム『アシスタント』)以前から社内の仲間とともにfOULのファンで。メンバーとも面識があるにもかかわらず「砂上の楼閣」(fOULがライブハウス、下北沢SHELTERで1998年から2005年まで開催していた自主企画)とかのチケットも、その仲間の先輩がいつもチケット番号が1番か2番になるぐらいの早さで買っていたそうなんです。

――へええ。

大石 長谷川さんは私の監督1作目の『MOTHER FUCKER』(2017年)も担当してくださったんですけど、そのときに「fOULが好き」という話で盛り上がって。ちなみに長谷川さんはブッチャーズ(bloodthirsty butchers)のドキュメンタリー映画『kocorono』(2010年/監督:川口潤)の制作の発起人でもあるんです。

(参考:映画『MOTHER FUCKER』大石規湖×谷ぐち順対談

――『kocorono』は大石さんが助監督として関わった映画ですし、ブッチャーズとfOULは1997年に、大石さんが『MOTHER FUCKER』で密着した谷ぐち順さんのレーベル〈Less Than TV〉からスプリットLPをリリースしていますね。

映画『MOTHER FUCKER』予告編
 


大石 
そういうつながりというか、幸運な巡り合わせもあり、長谷川さんが社内で企画を通してくれたんです。やっぱり、メジャーレーベルの社員さん……という言い方は失礼かもしれませんけど、そういう立場にある方の助力がないと、私たちのようなフリーランスの人間がいくら「こういうのがやりたい!」と思っても限界があるじゃないですか。なので、『fOUL』は長谷川さんがいなかったらどうにもならなかったでしょうし、企画が動き出してから3年強ぐらいのあいだ、実質的に私と長谷川さんの2人でコソコソ作っていました(笑)。

 

◆20年間、fOULを超える体験に出会えていない

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――大石さん自身もfOUL大好きですよね。

大石 自分でも気持ち悪いと思うんですけど、学生時代から今に至るまで20年ぐらいずっと好きで。こうして映画まで作ってしまったというのを当時の自分が知ったら「そこまで好きだったの!?」って驚くかもしれない。

――fOULの「向こう三年の通暁者」(2000年リリースのシングル『ブックシェルフ 1F』収録曲)の歌詞に「夜中の環八通り」とあったから、上京したときに荻窪に住んだんでしたっけ?

大石 はい。事あるごとにfOULに関連付けて生活してきたので。それこそ環八沿いに住んでいたときはテレビ局でADとして働いていたんですけど、毎朝必ずスタッフ全員分のコーヒーを淹れなきゃいけなくて。それが耐え難くて、心の中で「ケツからカフェインが出るまでコーヒーをどうぞ」と言いながらコーヒーを配っていたり(笑)。

――「wax&wane」(2000年リリースのコンピレーションアルバム『極東最前線』収録曲)の冒頭のセリフですね(笑)。大石さんが最初に聴いたfOULの音源って、先ほど話に出たブッチャーズとのスプリットですか?

大石 そうです。大学時代、軽音楽部の先輩がfOULのコピーバンドをやっていて、その先輩に「なんですかその曲は?」と聞いたらブッチャーズとのスプリットを聴かせてくれて。当時はメロコア全盛期で、私の中では音圧とかもだいたいどれも同じように聞こえちゃう傾向があったんですけど、その中であの盤のfOULはものすごい乾いた音で。

――ブッチャーズですら音がスカスカでしたもんね。

大石 そうそう。今考えれば〈Less Than TV〉の谷ぐちさんの手腕だと思うんですけど、日本のバンドが日本で録ったというのが信じられなくて。しかもアナログ盤はカラーヴァイナルで7色も展開しているし、そういうフィジカルに込められたセンスにも衝撃を受けたんですよね。そこから『Dostoevsky Groove』(1997年リリースの1stアルバム)とか『煉獄のなかで』(1999年リリースの2ndアルバム)も聴いて、初めて行った「砂上の楼閣」で完全にハマってしまって。以来、自分の中でfOULの音楽が最上級の体験として位置付けられている感じですね。

――いわゆる思い出補正みたいな、美化された体験としてではなく?

大石 ないですね。私も「もうfOULのライブが観られなくなってしまったから」とか「あのときは若かかったから、そのぶん鮮烈に感じたんじゃないか」と思ったりしたんです。でも、私も一応、音楽の映像を撮らせてもらって、いろんなバンドのライブを観たり音源を聴いたりしている中で、あれを超える体験に出会えていないんですよ。「それって私だけかな?」と思ったら、「fOULが好き」と言う人の中には「あの体験を更新してくれるものを探し続けているんだけど、全然見つからなくて」みたいなことを言う人が結構いて。「私だけじゃないんだ!」というのをここ何年か感じているんですよね。

◆“ライブを体験できる映画”を作ることができた

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――「fOULが好き」というのは映画を作るうえで立派な動機になると思いますが、それ以外の意義などはありますか?

大石 ライブドキュメンタリー映画って、アーティストのプロモーションのためのものであることが日本では圧倒的に多いと感じていて。もちろんプロモーションの一環で映画を作ることを否定するわけじゃないんですけど、その中に“ライブを体験できる映画”があるのかと言ったら、やっぱり少ないと思うんです。その中で『fOUL』は“体験”に特化した映画になったという自負はあって。例えば『ストップ・メイキング・センス』とか『アメリカン・ユートピア』に匹敵する……と言ったらおこがましいですけど、それらと同じ種類の体験ができるものにしたいという思いで作っていました。

――“体験”特化型と言われればその通りですね。『fOUL』はほぼライブ映像のみで構成されており、ライブハウスのフロアからずっとステージを観ているようなものですし。

大石 どんなバンドであっても曲や演奏、MC、服装とかから滲み出るものがライブにはあるはずだし、とりわけfOULはそのスタンスやスタイル、哲学といったものがライブのありのままの姿から見て取れると私は思っていて。もちろんシンプルに「かっこいい!」というのが伝わるだけでも十分なんですけど、その細部に宿る何かを感じてもらえたら最高ですね。

――今回の『fOUL』は、過去2作のように自分でカメラを回すのではなく、いわばありものの映像を編集するという作り方ですよね。その点で何か違いは?

大石 この映画は15〜20年前の映像で構成されていて、一見するとシンプルなライブ映像集に見えるかもしれないんですけど、実はバラバラの素材が何百本もあって。例えば、あるライブではカメラマイクの音が全部割れていて使いものにならなかったのが、奇跡的に同じ日のライブで音だけちゃんと録れている素材が発掘されたり。だからパズルとか宝探しゲームみたいな状態だったんですけど、そうやって素材を探すのもディレクションの一種というか。選曲に関しても「砂上の楼閣」を再現したかったので、過去のセットリストを全部書き出して、傾向を踏まえつつ組み立てていて。なので、他人が撮った素材であっても自分の演出で観せることができたし、体感としては普段の作業とあまり変わらなかったなと、今言われて気付きました。本音を言えば、ライブは自分の手で絶対に撮りたいんですけど、当時の私には無理でしたから。

――僕も「大石さんならどう撮ったんだろう?」と思いがなら観ていました。

大石 今「fOULのライブを撮れ」と言われたら、めちゃくちゃ悩んじゃいますね。でも、そういう妄想も楽しんでおこうかな。いつかのために。

映画『fOUL』予告編 


◆fOULが与えてくれた“生活と音楽”というテーマ

――監督1作目の『MOTHER FUCKER』にしても、1982年の結成から現在まで活動し続けているパンクバンド、the 原爆オナニーズを追った2作目の『JUST ANOTHER』(2020年)にしてもそうですが、大石さんは自分のスタイルを持っている人たちを題材にするという点において、まったくブレないですね。

(参考:映画『JUST ANOTHER』大石規湖インタビュー )

大石 自分の中では3部作になっているというか、『fOUL』を作り終えて「なんだかんだで原点に戻ってきたな」という感覚があるんです。というのも、私が初めて下北沢SHELTERでfOULのライブを観たとき、ボーカルの谷口健さんがワイシャツ姿で、サラリーマンみたいだったんですよ。その違和感に惹かれたというか、例えば当時のメロコアシーンの人たちはTシャツとハーフパンツでCSの番組とかに出ていて、それを見て「バンドで食えてるのかな」ぐらいに思っていたんです。一方、fOULの3人は雑誌のインタビューとかでも「働きながらバンドをやってます」と公言していたので、「そういうスタイルもあるんだ!」と。以来、生活あるいは社会に根ざしつつ音楽をやっている人たちが憧れの対象としてずっとあったんですよね。

――大石さんは“生活と音楽”をテーマに映画を撮ってきましたが、それは約20年前にfOULによって植え付けられたものだと。

大石 そう。『MOTHER FUCKER』の谷ぐち家も、『JUST ANOTHER』のthe 原爆オナニーズも“生活と音楽”を両立している人たちですし、そういうスタイルに魅了されるのは、今思えば自然な流れだったんだなと。

映画『JUST ANOTHER』予告編
 

――しかも、谷ぐち家は存在そのものが規格外みたいなところがありましたが、そこに何かドラマや成功があるわけではない。ただ好きでバンドをやっている人たちの姿があるだけという。

大石 映画の中で健さんが「商業的には恵まれなかった」みたいなことを話しているんですけど、そうであっても自分たちにしかできない音楽をやり続けるのって、偉業と言っていいと思うんです。特にここ数年、生産性がどうとか、音楽を含む文化的なことは“不要不急”だみたいに言われることもある世の中で、それが余計に素晴らしいことに見えるんですよね。

◆予測不能な、自分の想像を超えてくる体験を求める人へ

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――映画の最後に、現在のfOULの3人が登場します。過去のライブ映像のみで完結させるという作り方もあり得たと思うのですが、なぜ今の3人を撮りに行ったんですか?

大石 最初はライブ映像だけで終わるつもりだったんですけど、事実確認のために3人にお会いして、カメラも回させてもらったんですよ。そしたら彼らの中でもfOULというバンドが、“休憩”に入って16年経ってもずっと地続きで存在しているというのがよくわかって。リスナーにとっても……少なくとも私にとってもfOULは決して過去のバンドではないし、それはメンバーも同じだったというのが嬉しくて、少しでも映像として残したかったんです。

――谷口さんはサラリーマンのまま大人になっている感じがいいですね。

大石 スーツがちょっといいやつになっていて(笑)。3人で久々に会うときも健さんは休日なのにワイシャツを着て来てくれて、そこにもfOULへのさりげないリスペクトを感じたり。ニッチな話で申し訳ないんですけど。

――ここまでニッチな話しかしてないですけどね。だからこそ、fOULを知らない人がこの映画を観てどう感じるのかは気になるところではあります。

大石 それで言ったら、ISHIYA(FORWARD/DEATH SIDE)さんが公式HPにコメントを寄せてくださったんですけど、ISHIYAさんはfOULを知らなかったか、まったく覚えていなかったそうで。初めて映画でfOULを体験して「腹立つなこいつら。ぶん殴ってやりたい!」と(笑)。

※『fOUL』公式HPより、ISHIYA氏のコメントを一部抜粋

 俺にとって初見のバンドは、観た瞬間に気に入るか気に入らないか。ただそれだけだ。

 そしてfOULは、そのどちらでもなかった。

 あまりにも癖が強すぎるのである。

 ここまで自分勝手に自分の好きなことをやり、客を置き去りにしていいのか? 

 腹立つなこいつら。ぶん殴ってやりたい! とかなんとか思っていたら、本人たちは重々承知の上だった。

 PUNKである。

 それもドがつくドPUNKだ。

――最高ですね。というか大石さん自身も「初見の人にもわかるように」みたいなことを考えて作っていないですよね?

大石 まったく考えていませんでした(笑)。やっぱり言語化するのがすごく難しいバンドなので、そこは観てくれた人それぞれに音と映像で感じて判断してもらいたい。そういう余白を大事にしたほうがfOULらしいんじゃないかなって。

――説明的でないという点は、前2作と決定的に違うところですね。

大石 私も、3作目にしてやっとチャレンジできたというのはありました。特に2作目の『JUST ANOTHER』はめちゃくちゃ説明的にしたと思っていて。ある意味、理屈っぽい人たちの話ではあるので、彼らの言葉をできる限り正確に伝える必要があったんです。それを経たからこそ、ここまでライブ映像に偏ったものが作れたんじゃないかなと。あと最近、説明的すぎる映像コンテンツが多すぎないですか?

――映像表現であるにもかかわらず、人物の心情などをすべてセリフやモノローグで説明していたり。

大石 そうそう。バラエティ番組にしてもナレーションやテロップだらけですし。ミュージックビデオでもストーリーや登場人物を細かく作り込んでいるものもあったりして、それはそれで面白いんですけど、あまりに楽曲の捉え方を限定してしまうと想像の余地がなくなってしまう気がするんですよね。

――その意味では『fOUL』は圧倒的に不親切ですよね。予告編ですらバンドの音は聴かせないし(笑)。

大石 確かに(笑)。逆に言うと親切な、懇切丁寧に説明してくれて、全部理解できるような映画を観てドキドキするかというと、少なくとも私はしないんですよね。映画に限らず、予測不能な、自分の想像を超えてくる体験を求める人もいるじゃないですか。自分とってはまさにfOULがそれでしたし、この映画が誰かにとってそういう体感になってくれたら嬉しいです。
取材・文=須藤輝/@sdohkr

★映画『fOUL』公開情報

出演:谷口健、平松学、大地大介
監督・撮影・編集:大石規湖
音楽:fOUL
音楽ミックスエンジニア:二宮友和
音楽ミックス監修:今井朋美
宣伝:椎名宗之
製作:長谷川英行
製作総指揮:村上潔
企画・制作:長谷川英行、大石規湖
配給:キングレコード
© 2021 The top of fOUL films, all rights reserved.
公式HP:fOUL-fILM.com
公式Twitter:@fOULfILM
公式Facebook:@foulfilm20210924

9/24(土)〜|東京・シネマート新宿
9/24(金)〜|大阪・シネマート心斎橋
10/8(金)〜|京都・アップリンク京都
10/8(金)〜10/10(日)|鹿児島・Live Heaven
10/22(金)〜|北海道・サツゲキ
10/23(土)〜|神奈川・横浜シネマリン
10/23(土)〜|愛知・名古屋シネマテーク
11/20(土)〜11/26(金)※11/23(火)は休館|兵庫・神戸アートビレッジセンター
11/27(土)〜|沖縄・桜坂劇場
以降全国順次公開

大石規湖(おおいし・のりこ)
フリーランスとして、SPACE SHOWER TVやVICE japan、MTVなどの音楽番組に携わる。国内外問わず数多くのアーティストのライブDVDやミュージックビデオを制作している。独自の視点で切り取られたワンカメでのライブシューティングやライブ映像には定評があり、音楽に関わる作品を作り続けている。2017年8月には、初の長編映画『MOTHER FUCKER』が公開。2020年10月、劇場公開第2作目となるthe 原爆オナニーズのキャリア初となるドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』が公開された。2021年、第3作目となる映画『fOUL』が9月24日に公開決定。

 

文=須藤輝

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