本当に怖い絵を売るエウリアンに遭遇『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』村田らむのヒトコワ話
――11月29日発売!村田らむの新刊『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』(竹書房)発売記念!! 書籍に載せられなかった「最恐ヒトコワ話」を特別掲載!
自宅の電話に
「絵画を買いませんか?」
という怪しげな電話がかかってきた。
電話の相手は若い女性だ。
『エウリアン』などと揶揄されることもある、絵画を販売するショップだった。
「イルカが泳いでいるキラキラした絵の版画を数十万で買わされた」
などという悪い噂は聞いたことがあるだろう。
俺はデート商法っぽい電話に、あえて引っかかる形で東京都内の繁華街にあるショップへ足を運んだ。
ショップといっても、ビルのワンフロアの閉鎖空間だった。館内は広く薄暗く、ヒーリングミュージックがかかっていた。壁には販売用の絵が何枚か展示してあった。
室内にはたくさんのテーブルが並んでいて、ほとんどの席には客が座っていた。
ただ、座っているのは高額な絵を買うブルジョワ層っぽい人はいなかった。オタクっぽいファッションの30代前後の男性ばかりだった。それぞれの前には、スーツ姿の綺麗な女性が座り語りかけている。
そして僕の前にも、女性が座って絵の説明をはじめた。販売されている原画、版画はファイルにされていて、一枚一枚説明していく。
ひどいショップだと、作品自体がカラーコピーだったりするが、そのショップはそこまでひどいことはしてないようだった。
ただ本物だろうがニセモノだろうが、いらない物はいらない。
ファイルの絵は、一点50万円くらいは当たり前で、100万円を超えてくる作品もたくさんあった。
「100万円の絵が家にあったら、どれだけ自信がつくと思う?」
「女性が部屋に遊びに来た時に、壁に100万円の絵が飾ってあったらいい趣味してるってモテること間違いないですよ!!」
「絵は出会い!! 気に入ったら買っておかないと絶対公開しますよ!!」
とグイグイ押してくる。
他の席を見ると、みんな
「帰りたいのだが、言うタイミングがつかめない」
という表情で、油汗を流している。
この手の勧誘者はとにかく時間をかけることをいとわない。数時間くらいは余裕でかける。時間をかけることで、
「こんなに時間をかけてもらったのに、断るのは悪いな」
と相手に思わせたら勝ちだからだ。
俺も1時間くらいはいたし、他の席の人はもっと長くいたのだと思う。
女性が、
「あ、お腹空きましたよね? ちょっと軽食持ってきますね」
と言って立ち上がった。
そして女性は、サンドイッチとコーヒーを持ってきた。上品なひとくちサイズのものだった。
俺以外の、他の席にもほぼ同時にサンドイッチとコーヒーは運ばれてきていた。
驚いたことに、サンドイッチを食べた後に、次々と契約を結んでいた。
「サンドイッチをごちそうになったら断りづらい」
という心理が働いたのだろうが、サンドイッチなんか1000円もしないだろう。100万円の絵を買うのに、そんなもので釣られることはないと思う。
絵を売った後は、女性は男性の手を握り、
「これで人生、絶対に上向きますよ!!」
などと歯の浮くようなセリフを言っている。
ちなみに俺は3時間ほどのらりくらりとごまかしていたのだが「買わない」と確信されたのか、つっけんどんな態度に変わり追い出された。コワモテの男性の影もチラつかせた。
絵画販売は、
「モテたいモテない男性」に興味のない高額の絵を売るために完全にシステムが組まれているのが怖かった。
ほとんどの人はローンで絵を購入する。お金がない人が借金で絵を買ってもろくなことはない。女性にモテるどころか、借金地獄に落ちてしまった人もいるだろう。
人を不幸にするだけの絵画販売ショップは、現在も町中で堂々と営業している。
※本稿は、『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』未収録の特別原稿です!さらに怖い話は本書でお楽しみください。
村田らむの新刊『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』(竹書房)予約受付中!
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2024.10.02 20:00心霊本当に怖い絵を売るエウリアンに遭遇『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』村田らむのヒトコワ話のページです。ヒトコワ、人怖、エウリアンなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで