生活保護受給漫画の衝撃の中身とは?

【必読】ゴミ屋敷で孤独死した漫画家の遺作『生ポのポエムさん』に震える! 生々しいフリーランスの現実と最期のメッセージとは!?

 オリンピックという華やかな国家イベントの影で、誰にも看取られず自宅でひっそりと亡くなる「孤独死」の発見が遅れるケースが増えているという。長引くコロナ禍で、周囲の人々との交流が絶たれたことが一因だという。単身世帯が増えた現在の日本において、孤独死の問題は決して他人事では済まされない。今回は2018年6月に配信した、とある漫画家にまつわる話を再掲する。

 2018年2月、練馬区のアパートの一室で一人の男性が孤独死を遂げた。彼は「吠夢(ぽえむ)」というペンネームで活動していた漫画家で、かつてはホラー漫画誌などで活躍していたが次第に仕事を失い、生活保護を受給して生活していたそうだ。その死は突然で、漫画のデジタル化で再起を図っていた最中のことだった。吠夢さんの部屋から見つかった最後の原稿は、担当していた編集者らの手により『生ポのポエムさん』というタイトルで出版された。彼の最期の日々、そして遺された原稿に込められたメッセージとは!? もし本稿で少しでも興味を持ったなら、ぜひ『生ポのポエムさん』を読んでみてほしい。

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【必読】ゴミ屋敷で孤独死した漫画家の遺作『生ポのポエムさん』に震える! 生々しいフリーランスの現実と最期のメッセージとは!?の画像1
『生ポのポエムさん』(エンペラーズコミックス)より

 2018年2月、ひとりの漫画家が死んだ。ペンネームは吠夢(ぽえむ)という。ご存知ない人も多いだろう。知っているとしたら、かなりマニアックな漫画通だ。

 彼は練馬区のアパートで孤独死していたところを発見された。6月1日、そのアパート内から見つかった彼の最後の作品『生ポのポエムさん』(エンペラーズコミックス・大洋図書)が電子書籍で発売された。

 吠夢氏は駆け出しの頃、手塚治虫プロや漫画家・日野日出志氏の元で仕事をしていた。

「トイレで小用をたしていたら、たまたま入ってきた手塚治虫に声を掛けられた」

 というのが、飲み会での鉄板エピソードだった。

 その後、メジャー誌の賞を取り、独立したプロの漫画家になった。得意ジャンルはホラー漫画で、ホラー漫画雑誌を中心に作品を掲載していた。

 しかし、時代とともにホラー雑誌は減り、ホラーだけで食べていくのは難しくなった。代わりに、『漫画実話ナックルズ』(ミリオン出版)など、新ジャンルだった実話系の雑誌を舞台に原作付き漫画や体験漫画を描くようになった。

 僕もまた、その手の実話誌ではよくお世話になっていたので名前は知っていた。出版社の忘年会などの集まりで、お会いしたこともあるようだが、吠夢氏は知らない人に話しかけるタイプではなく(ただし女性作家には声をかけていたらしい)、結局はっきりとした面識はないまま彼岸の人となった。

 ただ、噂話はよく耳に入ってきた。 ある日、吠夢氏から編集Mさんの携帯電話に電話がかかってきた。

「仕事がなく、本当に食い詰めて大変だ。このままでは辛さに耐えきれず死んでしまいそうだ」

 という内容だった。いかにも自殺しかねないような雰囲気だ。その場はなんとか励まして、後日食事をすることになったという。数日後、Mさんは指定された練馬駅に行くと、ニコニコと元気な吠夢氏が立っていた。

「行きつけの良い店があるんですよ!!」

 生き生きとしている吠夢氏を見て、Mさんはホッとしたような、馬鹿にされているような気持ちになったが、とりあえず吠夢氏についていく。するとガールズ居酒屋に到着した。

「ガールズ居酒屋」とは、かわいい女の子が給仕をしてくれるお店だ。吠夢氏はそのお店の常連らしかった。

 女の子がやってくるタイミングで、吠夢さんはおもむろにカバンから漫画原稿を取り出して、Mさんに見せる。女の子はその様子を見て、

「すごーい、打ち合わせですかー?」

 と声をかけた。

「吠夢さんは、女の子がいる店に行く時には絶対に漫画原稿を持ってくるんですよ。漫画を女の子に見せたらモテると思ってたんでしょうね。吠夢さんの漫画って死体が出てきたり、気持ち悪いのが多いから、とてもモテるとは思えないんですけど(笑)。その日は、たぶん女の子に本当に漫画家だぞ、というのを見せたかったんだと思います。そのために僕は呼ばれたんでしょうね」

 女の子にモテアピールをした後は、ここぞとばかりに散々飲み食いをした。

「いやあ吠夢さんは打ち合わせの時もすごい食べるんですよ。打ち合わせの時は、喫茶店に早めに着いてナポリタンとかご飯を食べちゃうんです。編集が到着した時にはすでにお皿下げられてるから気づかないんですけど、会計時に『なんでこんなに高いの?』って驚くわけです。ガールズ居酒屋の時も、当たり前のように僕がおごりましたね。もう金額までは覚えてませんが、そこそこいってたと思いますよ(笑)」

 Mさんは当時のことを思い出して、頬をゆるめた。

 一方、今回の電子書籍化にあたり、大きく協力をしたのはフリー編集者のTさんだ。

「吠夢先生はそういうちょっと変わった人でしたけど、お茶目なキャラで愛されてもいました。没後に開いた『故人をしのぶ会』にも漫画家や編集者など20人あまりの人が集まりました」

 その 「しのぶ会」では、故人が生前しでかした前述のような珍騒動のエピソードで盛り上がったという。飲み会でも、話題の中心になるような、なんとも憎めない人だった。

 今回の電子書籍漫画の企画は、去年の秋に吠夢氏がT氏にかけた一本の電話からはじまった。

「M君への電話同様、本当に食い詰めていて困っているという内容でした。ホラー雑誌も、実話誌も時代とともに激減しました。吠夢先生は、どちらかと言えば気弱な性格で、新しい仕事を営業力で取ってこれるほど器用な人でもありませんでした。それに持病である糖尿病がかなり悪化していて、目が見えなくなってきていると訴えられました」

 この期に及んで漫画家として新たな仕事を開拓するのは大変難しい。かといって、誰かに雇われて働くのも、性格的にも健康的にも無理そうだった。吠夢氏はTさんに窮状を訴え続けた。見かねたTさんは、生活保護を受けることを勧めた。

「生活保護を受けて、それを漫画にしてみてはどうかと提案しました。吠夢先生は、これからも漫画で食べていきたいという意欲はあった。そこで、出版社に頼らず自分で作品を描いてネットに投稿して読んでもらおうと話したんです。最近は『note』のようにクリエイターが自作を投稿するプラットフォームも増えていて、中には売り上げで生活している漫画家もいます。もちろん甘い世界ではなく、大変険しい道のりです。ただ、吠夢先生は挑戦してみたいと言っていました」

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