地震雲は本当に地震の前兆なのか? 科学的根拠のない単なる偶然か?

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画像は「Getty Images」より

 日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」(TBS系)では巨大地震による関東沈没という未曾有の危機が描かれたが、現実世界でも21日に首都直下型地震に備えて警視庁などが合同訓練を行われるなど、巨大地震の発生に向けた意識が高まっている。地震の発生日時と場所さえ分かれば、人的被害は最小に抑えられそうだが、正確な地震予測は現時点では不可能とされている。そうした中、古来人々が頼ってきたのが、さまざまな地震の前兆現象である。しかし、前兆現象は本当に地震予測に役立つのだろうか?

 今回は地震発生直前に出現するといわれる特殊な雲、「地震雲」について紹介したい。

■地震雲とは

 地震雲(じしんぐも)とは、その名の通り、大きな地震の前後に出現するといわれる雲である。その特徴は、「低高度に発生する」、「風に流されず、長時間消えない」、「地震の規模にかかわらず発生する」、「珍しい形状をしている」などあるが、地震雲の発生メカニズムについて合意が広く得られた説明はなく、また雲の出現と地震の発生との間に因果関係も明らかにされていない。しかし、2016年4月14日に発生し、震度7を記録した熊本地震の直前にも地震雲らしきものが報告されていたと言われており、その存在を信じる人は多い。

 地震雲が地震の前兆現象であると広く信じられるようになったのは、航空学者の真鍋大覚(まなべだいかく)氏によるところが大きいとされる。真鍋氏は元奈良市長で元衆議院議員の鍵田忠三郎氏と協力し、1986年に「日本地震雲研究会」を設立。地震の前兆となる雲を地震雲と命名したのも真鍋氏だという。

■地震雲の種類

 地震雲にはいくつかの種類があるとされている。代表的なものは、「断層型」、「竜巻型」、「帯状型」、「肋骨状・波紋状」、「放射状」などだ。

・断層型

 断層のように雲の境目がくっきりとしているタイプの地震雲がこれにあたる。まるで人工的に雲を切り取ったかのような鮮やかな切り口が特徴だ。1993年1月15日、北海道釧路市南方沖で発生した「釧路沖地震(M7.5)」の直前に出現していたと言われている。

・竜巻型

 竜巻、もしくは螺旋状の細長い雲が上空に向かって垂直に現れる。見るからに奇妙な形から地震雲の典型だとされる。2011年3月11日に発生した「東日本大震災(M9.0)」の直前に出現していたと噂されている。

・帯状型

 長い帯のような雲。飛行機雲に似ている。2016年4月16日の「熊本地震(M7.3)」の際に見られたと噂されている。最も出現確率が高い地震雲とも言われている。

・肋骨状・波紋状

 あばら骨状の雲。波紋のように見えることもある。2005年3月20日に発生した「福岡県西方沖地震(M7.0)」で見られたと言われている。

・放射状

 震源から放射状に伸びる雲と言われている。2004年10月23日に発生した「新潟県中越地震(M6.8)」で見られたと噂されている。

■地震雲は地震と関係するのか

 果たしてこうしたさまざまな地震雲は本当に地震と関係しているのか? 気象庁の見解を見てみよう。

雲は大気の現象であり、地震は大地の現象で、両者は全く別の現象です。大気は地形の影響を受けますが、地震の影響を受ける科学的なメカニズムは説明できていません。「地震雲」が無いと言いきるのは難しいですが、仮に「地震雲」があるとしても、「地震雲」とはどのような雲で、地震とどのような関係で現れるのか、科学的な説明がなされていない状態です。(「地震の予知について」気象庁)

 また、地震の揺れを感じられる震度1以上の有感地震は年に2000回程度発生しているため、「形の変わった雲と地震の発生は、一定頻度で発生する全く関連のない二つの現象が、見かけ上そのように結びつけられることがあるという程度のことであり、現時点では科学的な扱いは出来ていな」いとのことである。

 それでは科学的な説明は“まだ”されていないが、いずれそのメカニズムが解明される可能性があるのだろうか? 気象庁気象研究所研究官で雲の専門家である荒木健太郎氏はその可能性にも懐疑的だ。

世間一般で地震雲として騒がれている雲は,実は日常的によくある雲で,全て気象学で説明できる雲です。(中略)… もし仮に深い地中からの電磁波が雲に何らかの影響を与えていたとしても、少なくとも世間一般で地震雲と呼ばれることの多い雲はすでに力学的・雲物理学的に説明できるため、その影響を私たちが目で見て雲の形などから判断することは不可能です。そのため,雲は地震の前兆にはならないのです。(台風・災害気象研究部第二研究室

 たとえば、地震雲に分類される雲は以下のような普通の雲だという。それぞれの地震雲について荒木氏の見解はこうだ。

・帯状型と竜巻型

「飛行機雲は上空が湿っていれば成長して太くなりますが,見ている方向と同じ向きに飛行機雲がのびていると,雲が空に立っているように見える」

・肋骨状・波紋状

「上中層の大気重力波に伴う波状雲」

・断層型

「気団の境目で発生し,青空と雲域が綺麗に分かれるということはごくありふれた現象」

・放射状

「上空の流れに伴って発生する」

 荒木氏によると「ここで紹介した雲たちは,普段から空を見上げていれば頻繁に出会える雲ばかり」とのことだ。頻繁に出会える普通の雲ならば、たまたま地震発生の時に見かけたとしてもおかしくない。これでは地震の前兆現象とは言えないだろう。

■トカナの見解

 しかし、普通の雲ではない雲、特殊なタイプの雲であればどうだろうか? ロシアの人工衛星ミールで2回、通算2年間にわたって宇宙で生活した宇宙飛行士ワレリー・ボリャコフ氏は、軌道上から不思議な銀の雲を目撃したと著書『地球を離れた2年間』で述べている。

「それは不思議な雲だ。銀色の雲という、まことにロマンチックな名前は、地表が円形になる地平線上の60キロメートルから70キロメーターの上空にしか現れないところからきている。…(中略)1988年も12月7日となった朝方、わたしはミールの右側の窓から、何やら不思議な紡錘状をした銀色のものが、広大な距離に広がっているのを発見した」(同書)

 そしてこの雲を見た直後、アルメニアでM6.8の大地震があったという。震源の深さが5.4kmなので直下型の大地震と言えるだろう。ボリャコフ氏によると、宇宙飛行士の間では地震の前兆に奇妙な雲が現れるというのはよく聞く話なのだという。地震雲は地上からではなく、宇宙から観測できるかもしれない。

 地震に伴うこうした雲は、20世紀前半にフランスの地質学者A.シュルンベルジェが強い風でも吹き飛ばない奇妙な雲として報告したことを皮切りに、その後もロシアのリディア・モロゾワ(トロフィムク石油地質地球物理学研究所)らが研究を続けている。

 こうした研究もまだ確立されたものではないが、もしかしたら地震雲は本当にあるのかもしれないと期待することはできそうだ。それは今後の研究が明らかにするだろう。ただ、いずれにしろ、地上から見える雲の多くは「普通の雲」であることは間違いない。ちょっと見慣れない雲が現れても地震の前兆現象ではないので心配する必要はなさそうだ。それよりも地震は予知できないという前提のもと、普段から防災意識を高めておくべきだろう。

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