凶悪犯罪者を死刑の代わりに昏睡状態に…!? 哲学者が提唱する「昏睡刑」の意外なメリット

凶悪犯罪者を死刑の代わりに昏睡状態に…!? 哲学者が提唱する「昏睡刑」の意外なメリットの画像1画像は、「Big Think」より

 全世界で死刑廃止が主流となりつつある。マレーシア政府は今月10日、死刑を廃止し、裁判官が裁量によって死刑に代わる他の刑罰を科せるようにする法案を議会に提出することに合意した。3年前にはマハティール・ビン・モハマド前首相が同様の公約を掲げた。しかし、死刑廃止法案を議会へ提出する予定だった1カ月前の2020年2月に政権が崩壊し、死刑廃止は実現しなかった経緯がある。

 国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルによると、今年2月の時点で同国における死刑囚は1,341人であり、905人が麻薬密売の罪で死刑判決を受けているという。アムネスティ・インターナショナル・マレーシア支部の常務理事、カトリーナ・ジョレン・マリアマウフ氏は、死刑廃止の発表を「正しい方向に進むための歓迎すべき第一歩」と称賛し、法案を速やかに議会へ提出し、死刑判決の出ている事件を含む全ての事件について見直しを行うよう政府に求めた。

 また、先月はアフリカの2つの国が相次いで死刑廃止を発表した。25日、ザンビアのハカインデ・ヒチレマ大統領は、「アフリカの日」を記念して、死刑廃止法案を議会に提出すると約束した。同時に、受刑者2045人に恩赦を与え、607人の刑期を短縮した。同国では1997年以降、死刑を執行していない。

 2日後の27日、中央アフリカ共和国の議会も死刑廃止法案を可決した。同法案がフォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領によって正式に公布され、数日のうちに法制化された後、「市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書」を批准するための措置が講じられることになるとみられている。同国の最後の死刑執行は1981年だった。

 アムネスティ・インターナショナルは、世界の国々の3分の2以上が法律または慣行による死刑を廃止したと報告する。近年は、死刑存置国で執行された死刑が公正な裁判にもとづいていないとして世界的なニュースになることが多く、死刑制度には「野蛮」のイメージがつきまとう。死刑存置国の日本でも、凶悪犯罪が起こるたびに死刑存廃の議論が活発化する。

 そして今、哲学者のクリストファー・ベルショウ氏は「刑罰とその身体」と題する論文中で、刑罰の在り方について深く掘り下げ、死刑に代わる新たな刑罰の創設を主張する。

 刑罰の目的については、過去の犯罪行為に対する報復として犯罪者に苦痛を与えることを目的と考える応報刑論と、犯罪の抑止や犯罪者の教育・更生を目的と考える目的刑論に大きく分かれる。多くの国では現在、両方の考え方を合わせた形で刑罰が運用されている。

 刑罰の方法には罰金刑、懲役刑、身体刑、死刑があるが、いずれも犯罪者から何らかのもの(財産、自由、幸福、生命など)を奪う仕組みとなっている。多くの国々では身体刑と死刑を否定して採用していない。これらの刑は受刑者から何かを奪うだけでなく、意図的かつ積極的に身体的危害を加える点で忌避されていると考えられる。

凶悪犯罪者を死刑の代わりに昏睡状態に…!? 哲学者が提唱する「昏睡刑」の意外なメリットの画像2画像は、「Flickr」より

 特に、「死刑は文明社会では許容できない残酷な刑罰であり、終身刑と比べても犯罪抑止効果が期待できない以上、存置する理由はない」という意見が多数である。また、冤罪の可能性なども死刑廃止の根拠とされる。

 ベルショウ氏はこれらの意見を踏まえた上で、まずは現在死刑の代わりとなっている懲役刑にも問題点があると指摘する。受刑者が刑務所でさらに堕落し、有罪判決を受けたときよりも犯罪的な傾向を強めることがあり得る。職員や他の受刑者による虐待が起こるかもしれない。また、服役中に受刑者の家族が崩壊し、出所後の受刑者が以前と同様の生活を再開できない可能性もある。受刑者が病気や老衰によって刑務所で息を引き取ることを防げない。ベルショウ氏は、こうした問題点があるにもかかわらず、多くの国々で懲役刑が採用され続けていることに疑問を呈する。

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