キリスト教徒が隠した「ヤコブの枕」の謎 意図的な“語訳”は生殖器崇拝と関係か?

 「旧約聖書」の「創世記」に登場するヤコブは実はヒンドゥー教徒だったのか。キリスト教の歴史を揺るがしかねない聖書の新たな解釈が登場している。

■ヤコブは石を枕にして寝ていた!?

 聖書はキリスト教の正典であるとともに、何世紀にもわたる学術研究の対象でもある。散文と詩、歴史と隠喩が入り混じった聖書の一節を逐一解読していくのは、骨の折れる作業ではあるがその労苦が報われる発見もあるようだ。

 オルタナティブメディア「Ancient Origins」の記事では「創世記」のヤコブの物語を注意深く読むことで驚きの発見がもたらされたことが報告されている。それはキリスト教とヒンドゥー教の予期せぬ関係だ。

 発見のきっかけとなったのが「ヤコブの枕」の謎である。旧約聖書の「創世記」では、ヤコブは石の枕で寝ていたことになっているのだが、いくら昔の人とはいえ、石を枕にして眠るなどということがあるのだろうか。

 欽定訳聖書(King James Bible)によると「創世記」28:18の標準訳は以下の通りだ。

「ヤコブは朝早く起きて、枕のために置いた石を取り、それを柱として立て、その上に油を注いだ。そして彼はその場所の名をベテル、すなわち神の家と呼んだ」

キリスト教徒が隠した「ヤコブの枕」の謎 意図的な語訳は生殖器崇拝と関係か?の画像1
ヤコブ 画像は「Wikipedia」より

 「創世記」ではヤコブは石の枕を使っていたことになる。そして起床後にはその石の枕を立てて油を注ぎ“神の家”として奉っていたというのは不可解だ。

 欽定訳聖書はヘブライ語およびギリシア語の原典を英訳したとされているが、実際には先行する英語訳やドイツ語訳の聖書の影響を大きく受けているともいわれている。はたしてこの「ヤコブの枕」は誤訳だったのだろうか。

 記事によれば「枕」と訳されている「merashah」には二重の意味があり、この単語は「高い場所」または「丘」と訳すこともできるという。そして家の中における「高い場所」とはすなわち祭壇であると考えられるのである。

 そして「柱」と訳されている単語は「matstsebah」で、これはアラビア語と英語の「mastaba」に相当し、墓であり「ピラミッド」、またはおそらく非常に小さなピラミッドである「ピラミディオン」を意味しているということだ。

 イスラエル人の歴史における神聖なピラミディオンは祭壇に奉る小さな円錐形のオンパロス石のことでもあるという。つまり「柱」は「オンパロス石」であるというのだ。オンパロス石は古代の礼拝所として機能していたと考えられ、その存在はギリシア神話でも言及されている。オンパロスはギリシア語で「へそ」を意味する。

 こうした点を配慮しながら訳してみたのが下記の文だ。

「ヤコブは朝早く起きて、祭壇のために作った石を取り、その上にオンパロスの石を置き、その上に油を注いだ。そして彼はその場所にある記念碑を神殿または神の家であると宣言した」

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Ancient Origins」の記事より

「ヤコブの枕」は実は祭壇であり、オンパロス石を置いたその場所を神の家であるとして奉っていたことになる。

■キリスト教とヒンドゥー教の関係

 しかしなぜ、ヤコブが石を枕にしていたなどという“誤訳”がまかり通っているのか。それはキリスト教の権威にとってきわめて都合が悪いことであるからだという。

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デルポイのオンパロス 画像は「Wikipedia」より

 ヤコブのこの行為はヒンドゥー教のリンガ信仰の儀式に酷似したものであり、「ウシャ・カラ・プージャ(Usha Kala Pooja)」と呼ばれ今日のインドのヒンドゥー教徒も行っている日の出崇拝の儀式なのである。リンガとは男性器を意味する。オンパロスは「へそ」であるが、その見た目は瓜二つだ。

 聖書の翻訳者と律法学者はこの類似性に頭を抱え、イスラエル系ユダヤ人の祖であるヤコブがヒンドゥー教徒と同様の儀式を行っていたことを信者に知られたくなかったことは明らかだ。特にユダヤ教においてヒンドゥー教徒は「異教徒」であり、関係があったことを認めるわけにはいかないのである。こうしたことから“誤訳”が生まれたと考えられるのだ。

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男性器の象徴であるシヴァリンガ。「Ancient Origins」の記事より

 キリスト教とヒンドゥー教の関係を示唆する事例はほかにもある。

 西暦1世紀に設立されたインドのマランカラ教会(Malankhara Church)はイエス・キリストの双子の兄弟であるユダ・トマス・ディディモス(Judas Thomas Didymas)によって建てられたものであり、彼は現在のトルコ南東部のエデッサの出身であることが記録に残されているという。

「ヤコブの枕」のような謎ははほかにもあるのだろうか。研究者は地道に旧約聖書と新約聖書の新たな解読を続けているが“全貌解明”は遠い先の話になりそうだ。この先にどのような“不都合な真実”が明らかになるのが気長に待ちたいものだ。

参考:「Ancient Origins」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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