アメリカは台湾有事の発生を望んでいる!? 年内に下院議長が中国を挑発… 米共和党の思惑とは?(ジェームズ斉藤)

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画像は「Getty Images」より

──最近のアメリカ情勢で何か気になる点はありますか?

ジェームズ斉藤(以下、ジェームズ):アメリカでは共和党の内部分裂が気になりますね。1月の始めに下院議員の議長選挙があって揉めに揉めたんですよ。

──すんなり決まらなかったんですよね。約150年ぶりの事態だったとか。

ジェームズ:普通はあり得ないですから。トランプ派が19人ぐらい造反したんですよ。今回、下院議会は議席の過半数を取った共和党側から議長が選出されるのですが、揉めに揉めて一時は議会内で共和党員同士が乱闘になりそうになりましたからね(苦笑)。結局、議長になったマッカーシーがトランプ派の主張を入れることでなんとか落ち着いたのですが、共和党内に大きな爪痕を残しましたね。一つの党として維持できるのかという段階に来ています。

──そんなに深刻なんですか?

ジェームズ:たとえばですね、日本の自民党で考えてみてください。いくら自分が安倍派で、「岸田首相なんか嫌いだ」と思っていても自民党の議員が内閣不信任案を突きつけるなんてことはないですよ。それは党内の連帯を維持するという観点からあり得ないことです。しかし、アメリカの下院議会で起こったことはまさにそれで、共和党の人間がこの議長は気に入らないといって支持しなかったんです。

──150年ぶりってそういうことか。

ジェームズ:150年ぶりっていうのは南北戦争の時代まで遡ることになりますから。まさにいまが内戦時代に酷似しているということでもあるんです。そういう中で、共和党というのはいまかなり形骸化しています。なぜなら、リンカーンが奴隷制反対を大義名分として作った政党が共和党だからです。いまは共和党は保守の政党だと言われていますが、創設時の理念を考えれば別に保守でもなんでもないですから。奴隷解放って保守でもリベラルでもない、普通の人道主義です。それがいま保守ということで民主党と対決する形になっていますが、そうでもない人たちというのはたくさんいるんです。

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ケビン・マッカーシー下院議長(画像は「Wikipedia」より)

──いわゆるライノと言われる議員ですね。

ジェームズ:RINO(Republicans In Name Only)は「名前だけの共和党」員のことですが、共和党にはもともとエスタブリッシュメント側の人たちは大勢いたんですよ。それが今回の議長選出でも現れたカオスの原因です。この兆候はもう10年ぐらい前のオバマ時代から顕著になっていて、トランプ勢力みたいなものがまだあまり強くなかったのでわかりづらかったのですが、いまはもうトランプ派が一大勢力になっていますからこういう人たちをエスタブリッシュメントたちが制御できないんです。 共和党関係者からは2023年と24年は共和党内がカオスになると聞いています。相当、重要な法案を通さないといけない時でも議長選挙のように揉めに揉めて遅れると思います。

──マッカーシーというのはエスタブリッシュメント側なんですね。

ジェームズ:そうです。たとえば、トランプ派はマット・ゲイツというフロリダの下院議員ですね。彼には会ったことがありますが、まだ若くてカリスマ性があります。中国の戦狼外交みたいなことをやっています、アメリカの議会で。

──もしかして共和党は割れる、もしくはトランプ派が出ていくみたいなことが起こるんですか?

ジェームズ:十分にありえます。事実、トランプはいま第3政党を作るかもしれないと言っています。そこにトランプ派が流れる可能性も否めないのですが、そうなると共和党を支えられる人間はフロリダ知事のデサンティスぐらいしかいません。デサンティスが支えるとなれば、彼が大統領候補になるしかありません。

──その時、トランプ派はどうなりますか?

ジェームズ:それはデサンティスについていくしかなくなります。

──では割れないですね。ただ、デサンティスはまだ大統領選に出るとは言っていないですね。

ジェームズ:言っていないですが、彼の関係者はもう大統領選に備えて動いています。トランプ大統領の時に暗躍したCIA右派の人たちも大量に送り込まれていて裏のチームがもうできています。先日も私の親しいCIA右派関係者が、デサンティスの対日政策顧問に就任し、やはり日米関係を共和党も重視し、大統領選にまで影響することを目の当たりにしました。

──ということは、問題は下院議会だけの話であって、いまはもう議長も決まり、これから民主党の悪事を暴いていく委員会を作っていっているのであまり問題ないんじゃないんですか?

ジェームズ:それはいいのですが、共和党の支持母体が危ういというのが大きなネックなんですよ。

──不安は残るということですね。アメリカのことなのでよくわからないのですが、なぜ、マッカーシーは一部で嫌われているんですか?

ジェームズ:トランプ派からするとマッカーシーやマコーネルはゴリゴリのエスタブリッシュメントなので信用できないんです。彼らはRINOですから。あと、マッカーシーはいま支持基盤が脆弱なのでトランプ派にも好かれるパフォーマンスをして自分の権力を固めないといけません。でないと、すぐに不信任案を出されてしまいますから。ということは両サイドにいい顔をしないといけないのです。では、いま両サイドにいい顔ができる政策というと中国叩きしかないんです。そうなると前回のCSISのレポートと話が繋がってきて、結局、アメリカは「中国が台湾に侵攻し、アメリカが出るところは出て、日本などの周辺諸国をまとめる」といったパフォーマンスをしないと保たないということです。

──中国を仮想敵にしないと内部がまとまらないと。

ジェームズ:仮想敵ではなく敵でいいんです。ともかく中国を叩き潰すことなんです。そうしないと国内が分裂します。私が共和党関係者から直接聞いたのは、マッカーシーは年内に必ず台湾を訪問するらしいです。

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画像は「Getty Images」より

──ペロシに続き、また中国を挑発するんですか!

ジェームズ:それ以上です。マッカーシーとしてはペロシを超えないといけないんです。ですから、ペロシの時以上に中国を刺激すると思います。

──台湾周辺がまた緊張しますよ。

ジェームズ:そうです。もともと習近平は台湾を取るというゴールを持っていますから、いずれにせよ、台湾有事は起こるでしょう。しかし、どういうやり方、どういうタイミングでやるかというのはいろんな要素があって不確定です。前回の記事で指摘したように内側からクーデターのようにして取るという方法だってあるわけです。しかし、アメリカとしては軍事侵攻をしてほしいので、だからこそ、挑発するんです。国内の政治パフォーマンスのための台湾訪問ですから完全に挑発のためだけです。

──習近平のほうも挑発されたら対応しないわけにはいかないですしね。

ジェームズ:ですから、これは完全にチキンゲームになっていて、かなり危険な状態です。

──それにしても、また台湾訪問ですか……。

ジェームズ:一触即発の事態にまたなりますよ。ここで怖いのは、中国はロシアと違って交渉の仕方が全然違うということです。ロシアは実利で動きます。ロシアは自分が負けると思ったら絶対に交渉に乗ってきます。力押しで交渉のテーブルにつかすことができます。しかし、中国はメンツの国なので、負けると思っても、ここで引いたら顔にドロを塗られることになるとなったら引きません。これでわかりやすいのが、ロシアとアメリカの間には核軍縮条約があります。それはアメリカがロシアに向けてICBMを向けているからこそ「交渉しましょう」とロシアはなるんです。しかし、アメリカが北京に対していくら核ミサイルを向けても北京は交渉しません。ですから、アメリカと中国には核軍縮条約がないんです。

──まさに象徴的ですね。

ジェームズ:中国からすればICBMを突きつけてくるアメリカと交渉するなど恥なのです。そもそも中国の国家目標には「2049年までにアメリカを追い抜く」というのがありますから。2049年というのは共産党創立100周年の年です。それまでにアメリカを倒すというのが中国の国家目標なので核の交渉にも応じないのです。GDPにしても武力にしても追い越せしかないんです。それがわかると、中国が、台湾有事でたとえ不利だとわかっていてもアメリカに屈することは決してない、戦争だと判断するということがわかってくると思います。

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文=ジェームズ斉藤

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