「実在しない人物」は本物よりリアルに見えると判明! SNSの信頼性低下、コミュニケーションの本質が蝕まれる恐れ
多くの人は実在する人物の顔写真とコンピュータで生成された顔画像とを確実に区別することができないことが、研究によって明らかになった。
最近、ビジネス向けSNS「LinkedIn」で、偽プロフィールにコンピュータで作成したプロフィール写真を掲載することが問題となっているが、防諜の専門家によれば、スパイは日常的にこのような写真付きの偽のプロフィールを作成し、ソーシャルメディア上で外国のターゲットを狙っているといわれている。
このようなディープフェイクは日常文化に浸透しており、マーケティング、広告、ソーシャルメディア、政治的プロパガンダ、スパイ活動、情報戦など、悪意のある目的にも利用されつつある。
リアルな偽の顔写真を作るには、ディープニューラルネットワークと呼ばれる、脳が学習する方法を模倣したコンピューターシステムが必要だ。さらに、「Generative Adversarial Networks (GAN)」は、学習用画像と統計的に区別できない新しい画像を生成するプロセスもある。GANで生成された顔画像は「thispersondoesnotexist.com」で見ることができるが、どれも確かに実在の人物としか思えない自然な顔だ。
学術誌「iScience」に掲載された研究によると、そのようにして生成された人工的な顔を本物と区別できないことが、我々のオンライン行動に影響を与えるという偽の画像は他人に対する信頼を損ない、オンラインでのコミュニケーションの方法を大きく変える可能性があるというのだ。
GANによって生成された顔は、実際の人の顔写真よりも本物らしく見えると認識されることもわかったが、その理由はまだ不明だという。
また、魅力との関係も興味深いものだ。あまり魅力的でないと評価された顔は、よりリアルであると評価されたという。魅力的でない顔は、より典型的な顔とみなされ、典型的な顔を基準としてすべての顔が評価されることがその背景にあるようだ。したがって、GANが生成した偽の顔は、人々が日常生活から作り上げた心のテンプレートに近いため、より本物に見えるのかもしれない。
しかし、このような人工的な顔を本物と見なすことは、見知らぬ人々の輪に対する一般的な信頼度(「社会的信頼」と呼ばれる概念)に影響を及ぼす可能性があると指摘されている。
本物と思われる顔ほど信頼されるのは当然といえば当然だが、ネット上でのやりとりにおいて、人工の顔が存在する可能性を知らされると、その信頼度は低下することがわかったという。
偽ユーザーの存在する環境において人々がより疑いを持つようになったという意味で、有益であると考えることもできるが、別の見方をすれば、コミュニケーションの本質を徐々に蝕んでいく可能性があるとのことだ。
一般的に我々は他人が基本的に真実で信頼できるという前提で行動する傾向がある。しかし、偽のプロフィールやその他の人工的なオンラインコンテンツが増加するにつれ、信頼の基準が変わっていくかもしれないというのだ。
デジタル画像の顔を評価する際には、画像検索で写真が本物かどうかを確認したり、SNSのプロフィールで個人情報が少ないものやフォロワー数が多いものを警戒する、ディープフェイク技術が悪用される可能性があることを認識する、といった注意が必要になるという。
ただ、同論文の執筆者の1人でもある心理学者で英ロンドン大学教授のManos Tsakiris氏は、今後は偽の顔画像を検出するアルゴリズムが改善され、それをソーシャルメディアプラットフォームに組み込むことで、新しいつながりの人の顔を見たときに、本物と偽物を見分けることができるようになるかもしれないと話している。
いずれにしろ、今後はオンライン上の真偽を見抜く能力がこれまで以上に必要とされていきそうだ。
参考:「Science Alert」ほか
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2024.10.02 20:00心霊「実在しない人物」は本物よりリアルに見えると判明! SNSの信頼性低下、コミュニケーションの本質が蝕まれる恐れのページです。顔、機械学習、ディープフェイク、AIなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで