体重110kg「世界最大の女性ボディビルダー」の波乱人生 晩年はステロイド中毒で変わり果てた姿に…
1980年代、ボディビル界に旋風を巻き起こし、プロレスでも活躍した女傑がいた。その名はニコル・バス。身長182cm体重110kgという男性顔負けの肉体を誇った。
しかし、晩年は悲劇的なステロイド中毒と一連の健康問題により、彼女のレスリングキャリアは低迷、わずか52歳で悲痛な死を遂げた。
1964年8月10日、米ニューヨーク州クイーンズで生まれたニコルは、1980年代半ばにボディビルのキャリアをスタートさせた。1997年にNPC全米ボディビル選手権で初優勝し、ミスオリンピアにも輝いた。ボディビルの頂点を極めた彼女は、翌年にプロレスに転向。
1998年にエクストリーム・チャンピオンシップ・レスリング(ECW)に入団したニコルは、1年後にワールド・レスリング・フェデレーション(WWF、後にWWE)に移籍。1999年にWWFデビューすると、バル・ベニスとのミックスタッグで活躍した。
しかし、彼女の活躍は長くは続かなかった。ニコルは、イギリス行きの飛行機の中で、ブルックリンの喧嘩屋として知られるレスラーのスティーブ・ロンバルディから性的暴行を受けたと主張し、2003年に訴訟を起こすが、法廷で却下される。
その後、彼女はロンバルディの報復行為に苦しんだと主張。殺害予告や、試合中に頭上で壊されるはずだったギターが本物であったという事件もあったという。
しかし、2010年、WWEの弁護士ジェリー・マクデヴィットは、ニコルの証言には多くの矛盾があり、彼女が解雇されたのは「ひどいレスラー」だったからだと述べた。
また、ニコルは女性更衣室で服を着替えている時に、男性レスラーが入ってくることを非難。WWEが男性レスラーと同等の賃金を自分に与えなかったとして、同一賃金法に違反するとも訴えていた。いずれにしろ、ニコルのレスラー人生は順調ではなかったことがうかがえる。
その後数年間は、独立イベントでレスリングを行っていたが、長年のステロイド乱用が彼女を苦しめるようになる。2006年、彼女はアナボリックステロイド(筋肉増強剤)による膵臓炎を患い、病院に運ばれた。医師から激しいトレーニングをやめるように言われ、筋肉量が激減。
それからも健康問題は続き、2013年には28年間連れ添った夫のリチャード・フックスが心臓発作で急逝するという個人的な悲劇も経験する。
晩年のニコルは奇行が目立つようになった。2015年6月、彼女はニューヨークのスーパーマーケットから1200ドル以上の商品を万引きした疑いで逮捕された。彼女は160点以上の商品をバッグとショッピングカートに入れ、支払いをせずに出て行ったとされる。約16万円相当の食品と約2万柄相当の美容製品を盗んでいた。
この万引きは、彼女がHoward Stern Showで「お金がない」と訴えたわずか1カ月後のことだった。
2017年2月16日、彼女はアパートで意識不明の状態で発見され、病院へ搬送され、翌日に死亡。わずか52歳でこの世を去った。
日本ではあまり知られていないが、今でも女子プロレスラー最強としてたびたびその名が上がるニコル。徹底的にビルドされた彼女の類まれな肉体とパワフルな試合は今でもYouTubeで観ることができる。ありし日の彼女の姿に思いをはせながら、ご冥福をお祈りしたい。
参考:「Daily Star」ほか
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