パキスタン「交換結婚」殺人事件… 夫が美人若妻の手足を切断、頭を潰して惨殺

 2020年8月、TOCANAでは、パキスタンの高速道路脇で手足が切断され、頭部がひどく損傷した若い女性の遺体が発見されたというニュースを取り上げた。 地元警察によると、被害者は”ワッター・サッター”と呼ばれる、いわゆる「交換結婚」に端を発する揉め事に巻き込まれる形で、夫の家族に殺されたとのこと。事件当初は彼女の父親でさえ、名誉殺人とわかっていながら「事故である」と嘘をついたのではないかと考えられている。

 この習慣は女性の意思が尊重されないだけでなく、復讐や家庭内暴力の被害に遭うことが多いため、 長い間、国際人権団体からも非難されている。しかし、田舎の封建的なエリアではいまだに名誉殺人の名のもとに凄惨な事件が後を絶たず、昨年も子どもの教育方針をめぐって、3人の子を持つ母親が義父に殺害されている。

 なぜ、名誉のために女性が被害に遭わなければならないのだろうか? なんとも前近代的な話ではあるが、この地で古くから続く恐怖の連鎖が一日でも早く断ち切られることを願って、事件を報じた際の記事を再掲する。

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※ こちらの記事は2020年8月11日の記事を再掲しています。

 パキスタン南東部にあるシンド州の高速道路脇で6月27日、若い女性の遺体が見つかった。遺体は手足が切断されており、頭部がひどく損傷していた。被害者は24歳のワズィランさんで、ハイデラバードに隣接するジャムショロ市で殺されたものとみられている。

 サウジアラビアの英字紙「アラブ・ニュース」の報道によると、ワズィランさんは“ワッター・サッター”という部族の慣習をめぐり、夫の家族といさかいがあった後に拷問され、殺害されたと地元警察は語っているという。

パキスタン「交換結婚」殺人事件… 夫が美人若妻の手足を切断、頭を潰して惨殺の画像1
夫の家族に殴り殺されたワズィランさん(アヤズ・ラティフ・ポリジョ氏のフェイスブックより。以下同)

 ワッター・サッターの文字どおりの意味は「ギブ&テイク」だが、実際のところはパキスタンやアフガニスタンでは一般的な慣習である“交換結婚”を示す。

 これは、2つの家族にそれぞれ息子と娘がいた場合、それぞれの息子と娘を同じ家族同士で結婚させるというものである。こうすれば持参金や結婚式の費用が節約できるという理由もある。兄弟姉妹による交換結婚が一般的だが、時にはおじと姪、さらには父親と娘というケースもあるという。この場合、娘は父親と同じくらいの年齢の男と結婚させられることになる。この慣習は特に貧困層で多く行われているという。

 ワッター・サッターでは女性の意思が尊重されないだけではなく、家族間でトラブルがあった場合に復讐や家庭内暴力で女性が被害に遭うことが多いため、長年にわたり国際人権団体から非難されている。しかし、パキスタンなどでは国の法律が及ばず部族の習慣が優先される地域もあり、なかなか改善される気配を見せない。

 ワズィランさんの父親のグル・ムハンマドさんは、当初は警察に対し娘の死は事故であると話していた。しかし、後にそれを撤回し、娘は自分の夫と夫の兄弟に殺されたのだと申し立てた。

 これは憶測でしかないが、両家の間でなんらかの揉め事があり、それが原因でワズィランさんは“名誉殺人”の名のもとに夫の家族に殺されたようだ。父親のムハンマドさんはそれがわかっていたために、自身の家の名誉のためにも、当初は事故だと言ったのかもしれない。

 ワズィランさんの夫のアラー・バクシュとその兄弟のカリーム・バクシュは警察に逮捕され、現在も勾留中である。また検死の結果、ワズィランさんの死因は鈍器で殴られたことが判明している。

 パキスタンの人権派弁護士、アヤズ・ラティフ・ポリジョ氏はフェイスブックで、ワズィランさんの父親が墓の前で嘆いている様子のビデオをアップし、こうコメントしている。

「パキスタンの田舎の封建的な部族エリアは、女性の“キリング・フィールド”になっている」

 パキスタンでは実際、このような“名誉殺人”が多く発生しており、今年5月にも、パキスタン北部で若い女性2人が犠牲になったばかりだ。男性とキスしている映像が出回ったために、「家族の名誉が汚された」として、父親と兄弟によって殺されたのである。

パキスタン「交換結婚」殺人事件… 夫が美人若妻の手足を切断、頭を潰して惨殺の画像2
娘の墓の前で嘆く父親のグル・ムハンマドさん

 21世紀の世の中になっても続く、交換結婚のような封建的な慣習。このような前近代的な行いがなくなるのはいつのことになるのだろうか。

文=ケニー草間

●ケニー草間

アメリカの4年制の大学を3年で卒業したわりに、英会話があまり上手ではないという、よくある元日本人留学生。とはいえ、新聞だけはよく読んでいたので(といってもスポーツ欄がほとんどだったが)、今でも短い見出しを見ただけで、面白いネタかどうかすぐ分かるのが強み。

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