UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(1) 超音速飛行する円盤

――「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀りする

 すべては1947年6月24日に始まった。

 この日、アメリカ・アイダホ州で防火機器の会社を経営する実業家ケネス・アーノルドは、仕事でアメリカ北西部ワシントン州のチヘーリスを訪れていた。自らコールエアー社のセスナ「A-2型機」を操縦し、次の目的地であるヤキマに向けて飛び立ったのは、午後2時頃であった。

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CallAir A-2(画像は「Wikipedia」より)

 同じワシントン州ではあるが、ヤキマはやや東方にあり、州を南北に縦断するカスケード山脈を飛行機で飛び越える必要があった。

 空は完全に晴れていて、穏やかな風が吹く、飛行には申し分のない絶好の天候であった。

 ほぼ真東に向かって順調に飛行していたアーノルドであったが、カスケード山脈が近づくと、前年に起こった海兵隊輸送機失踪事件のことを思い出した。

 1946年12月10日、アメリカ海兵隊のC-46輸送機がカスケード山脈の最高峰、標高2428メートルのレーニア山近くで消息を絶ったのだが、輸送機の残骸はいまだに発見されていなかった。そこで、アーノルドは進路を少しばかり北に向け、輸送機の捜索を試みることにした。

 彼はパートタイムで捜索救難も行っていたし、レーニア山付近を通過しても大した回り道にはならない。それに、輸送機を発見した者には5000ドルもの賞金が出ることになっていたのだ。

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レーニア山(画像は「Getty Images」より)

 レーニア山麓上空に達したアーノルドは、付近を少しばかり飛び回ってみたものの、墜落機の残骸は発見できなかった。そこで午後3時少し前になって、ワシントン州ミネラル上空で、あらためてヤキマ方面に進路を変更した。ところが、それからわずか2、3分ばかり飛んだとき、アーノルドは、太陽が鏡に反射したような閃光を感じた。

 最初は、他の航空機が近くにおり、太陽の光がその機体からの反射したのではないかと考えた。そこで周囲を見回したところ、左後方約15マイル(約25km)ほどの位置にDC-4旅客機の姿が確認できた。しかし、閃光の方向を考えると、この飛行機が原因とは思えなかった。そして最初の閃光から約30秒後、左方向から光が見えた。

 冷静なアーノルドは、自家用機の風防や眼鏡に太陽光が反射している可能性を考えた。そこで機首を左右に振ってみたり、眼鏡をはずしたり、左側のガラスを開けたりしてみた。その結果判明したのは、レーニア山付近を北から南、正確には170度の方位角で飛んでいる何かが太陽の光を反射しているのだということだった。その物体の数は9個で、斜めの梯隊を組んでおり、高度は約9500フィート(約2750m)であった。

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1947年7月7日、アリゾナ州で撮影された「ロードUFO写真(Rhodes UFO photographs)」。ケネス・アーノルドの著書『The Coming of the Saucers』(1952)でも取り上げられた。(画像は「Wikipedia」より)

 謎の飛行物体は猛スピードでレーニア山に接近し、一時的に峰の向こう側に隠れたことから、自分の飛行機の位置から23マイル(約37km)ほど離れたところにいると推定された。左後方にいるDC-4は大きさが分かっているから、そこまでの距離はほぼ正確に割り出すことができた。物体の距離も判明したから、アーノルドはDC-4との比較で物体の大きさを割り出した。それはDC-4より少し小さい、約50フィート(約15m)との長さと見積もられた。幅はそれよりやや狭く、厚さは3フィート(約1m)ほどと薄く、横から見たときは一本の黒い線のようで、時折見えなくなるほどだった。ジェット機にしては尾翼が見えず、時折急に動く際には明るい閃光を発した。

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1947年7月12日オクラホマ州で撮影された、アーノルドが目撃した円盤に類似した飛行物体(画像は「Wikipedia」より)

 アーノルドはしばらく飛行物体の観測を続け、その飛行速度も割り出した。

 梯隊(ていたい)の最初の一機がレーニア山の南端を通過したとき、アーノルドの時計の針は2時59分を指していた。物体の作る列の長さは、少なくとも5マイル(約8km)と計測され9つの物体の最後の一個が少し離れたアダムズ山頂を通過したときには、102秒が過ぎていた。

 アーノルドは午後4時頃ヤキマに到着。そこで、友人で空港のゼネラル・マネージャーでもあるアル・バクスターに自分の奇妙な体験を話したところ、すぐに空港の全職員がこの話を知るところとなった。

 ヤキマには長く留まらずに次の目的地オレゴン州ペンドルトンに向かい、そこで地図を調べ、レーニア山とアダムズ山の距離が47マイル(約75km)あることを確かめた。

 つまりアーノルドの計測が正しければ、物体は編隊の長さも含めた52マイル(約83km)を1分42秒で通り過ぎたことになる。これを時速に直すと1835マイル(約2950km)。超音速で飛行していたことになる。さすがにおかしいと思ったのか、アーノルドは控えめに時速1700マイル(約2735km)以上という数字を発表したが、いずれにせよ当時実用化されていた航空機で、この速度を出せる機種は世界のどこにもなかった。

文=羽仁礼

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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