UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(2) 空飛ぶ円盤の正体は?

――「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀りする。

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 事件の翌日、6月25日、アーノルドは地元紙『ペンドルトン・イースト・オレゴニアン』の事務所で記者会見を開き、自分が目撃した何かについて説明した。こうして6月26日以降、世界各地の新聞に「フライング・ディスク(Flying disc)」とか「フライング・ソーサー(Flying saucer)」という言葉が大きく掲載されることになった。

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フライング・ソーサーの初出とみられる「Chicago Sun」の記事(画像は「Wikipedia」より)

 だが「フライング・ソーサー」、つまり「空飛ぶ円盤」という言葉は、アーノルドが自分の目撃した物体の形を形容して述べたものではない。アーノルドは物体の飛び方に対し「それは、コーヒー皿が水面で飛び跳ねるような」いわゆる水切りをしたような奇妙な飛び方をしていたと述べたようで、「フライング・ソーサー」という言葉は新聞記者の造語とされる。

 物体の飛び方についてアーノルドはまた、中国の凧の尾のような動きとか、太陽の中で翻る魚のよう、と表現したこともある。要は波を描くように飛び跳ねる飛び方ということだろう。

 物体の形状に関してアーノルドは、尾翼や尾部のない平たい形で翼があり、尾部が尖っていたとする一方、9機のうち1機はほとんど三日月型で中央にドームがあったと述べている。

 距離や大きさに関するアーノルドの計測については、現在も議論が続いている。

 UFO研究の父とも言われるアメリカの天文学者ジョゼフ・アレン・ハイネックは、物体が時速1700マイルで飛行していたというアーノルドの計測は、それが20~25マイル離れていたという推定に基づくが、その距離からでは長さ50フィート程度の物体を肉眼で捕らえることはできないのではないかと指摘している。

 7月6日の新聞には、アメリカ軍が開発中であったフライング・ウイングか、あるいはフライング・フラップジャックと呼ばれる円盤形航空機だったのではないかとの推測記事が載った。

 フライング・ウイングとは、いわゆる全翼機を指す言葉であるが、フライング・フラップジャックはアメリカ海軍の依頼でヴォート社が試作したXF5Uという機種である。円盤状の形状からフライング・パンケーキと呼ばれることもある。

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XF5U

 XF5Uの開発は第二次世界大戦中から進められていたが、試作機が完成したのは終戦後の1945年8月のことであり、しかも試作機は一度も試験飛行を行わないまま、計画は1947年3月に中止されている。

 もちろん軍はこのような説を否定した。

 アメリカ空軍の公式見解は、アーノルドは蜃気楼を見たというものだった。

 しかしアーノルドによれば物体は、はっきりした輪郭を保って見えたというから何十マイルも先にある峰が蜃気楼で見えたという説明できない。隕石を誤認したのではないかとの記事も現れたが、光学物理学者のブルース・マカビーによれば、隕石説は物体の形状を考えると援護できない。

 UFOの存在それ自体に否定的な態度をとるハーバード大学の天文学者ドナルド・メンゼルは1953年に、アーノルドは山から吹き上げられた雪煙を見たのだとしたが、ブルース・マカビーは、そのような雪煙はぼんやりとかすんだような光となり、アーノルドが述べた明るい反射光を発するものではないと反論した。するとメンゼルは1963年、アーノルドは特殊な形の雲を見たのだと主張したが、これは、当日快晴だったというアーノルド他の主張に反する。さらにメンゼルは1971年になって、アーノルドは窓ガラスの水滴を見誤ったのだとしたが、これは、窓を開けて確かめたというアーノルドの証言に反する。

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1947年7月7日、アリゾナ州で撮影された「ロードUFO写真(Rhodes UFO photographs)」。ケネス・アーノルドの著書『The Coming of the Saucers』(1952)でも取り上げられた。(画像は「Wikipedia」より)

 パイロットの中には、誘導ミサイルだったのではないかと述べる者や、開発中のジェット機やロケット推進機ではないかと述べる者もいたが、いずれにしても、アーノルドの詳細な描写に正確にあてはまるものはない。

 1機はほとんど三日月型で後部が尖っていたという証言が正しければ、形状自体は第二次世界大戦中ドイツが開発していたホルテンHo229によく似ている。

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ホルテンHo229(画像は「Wikipedia」より)

 Ho229は、ドイツのホルテン三兄弟が開発したジェット推進の全翼機で、1944年に試験飛行に成功、ドイツ空軍によってHo229の正式名称を与えられ量産化される予定であったが、本格製産前に終戦を迎えた。

 戦後アメリカ軍は、この機種を少なくとも1機鹵獲しているが、国内で試験飛行が行われたかどうかは明らかではない。少なくともアメリカ政府は公表していない。

 要は現在に至るも、アーノルドが目撃した物体が本当はなんだったのか、明確な結論は出ていないのだ。

 ともあれ、これが国際的に認知された世界最初のUFO事件となった。事件が起こった6月24日は、今でも国際UFO記念日として記憶されている。

文=羽仁礼

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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