戦前に設計された円盤形航空機「ディスコプター」とは? UFOは人工物なのか
――「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀りする。
マンテル事件の起こった1948年(昭和23年)、日本では少年雑誌『少国民の友』(小学館)7月号から11月号まで植原路郎が、その名も「空飛ぶ円盤」という冒険物語を連載した。この少年向けでは、「空飛ぶ円盤」なるものは無線で操られる無人の新兵器だった。
この年は他にも、芳谷まさる『空飛ぶ円盤』(新伸書房)、『快男児ポール』(PHP出版)という、UFOの登場する漫画本が立て続けに出版されているが、正体としてはいずれも悪の秘密結社黒星団が作った秘密兵器ということであった。
この頃の日本では、UFOの正体は不明だが、あえて推定するなら秘密兵器という考えが主流だったようだ。
『ロケット』1950年(昭和25年)8月号の特集もこうした秘密兵器説に沿ったものといえるが、こうした説が出てくる背景には、実際に円盤形航空機が各国で開発されていたという歴史的事実も影響しているのだろう。
一説には、アーノルド事件以前の1930年代から、アメリカのSF雑誌の中に円盤形航空機・宇宙船の挿絵が登場したといわれるが、実際にこうした航空機を設計しようとする試みも第二次世界大戦以前からあった。
ナチス・ドイツにおいては、ルーマニア生まれのアンリ・コアンダやアンドレアス・エップ、アルトール・ザックといった人物が円盤形航空機の設計や製作を行っている。戦後ソ連でも円盤形航空機の開発が行われていたようだ。
このような円盤形航空機の中には、アメリカで特許が認められたものもある。それが、アレクサンダー・ジョージ・ウェイガーズ(1901~1989)、通称アレックス・ウェイガーズが考えたディスコプターである。
ウェイガーズは彫刻家にして画家であったが、鍛冶や造船の技術も学んでおり、航空技術者で独自の哲学も説くという多彩な人物だ。
生まれたのはインドネシアのジャワ島にあるモジョケルトという町である。インドネシアは当時オランダの一部であり、彼が産まれた時、オランダ人の両親はそこで農園やホテルを経営していたのだ。
中学になると勉強のためオランダに送られ、そこで機械工学や鍛冶の技術、造船技術などを学んだ。こうして1923年にジャワ島に戻り、結婚したが、妻のジャコバがインドネシアの気候になじめなかったことから、1930年に夫婦でアメリカに移住し、ウェイガーズは技師として活躍した。しかし翌年、ジャコバは出産中死亡、気落ちしたウェイガーズは彫刻を学んで、自分の悲痛な感情を作品に表現するようになった。
1941年、アメリカが第二次世界大戦に参戦すると、ウェイガーズは陸軍に入隊し、マレーやオランダ、イタリアなどで従軍した。
円盤形航空機ディスコプターの特許を申請したのは、1944年というから、まだ軍に所属していた頃と思われる。特許は翌年認められたが、彼がこのディスコプターの構想を得たのは1927年、まだジャワ島にいた頃らしい。
では、このディスコプターとはどのようなものであろう。
簡単に言えば、中央にカプセル状の操縦席があり、その周囲をヘリコプターのローターのようなものが回転することで宙に浮くのだ。この回転翼は、ちょうどお茶碗のような形をした外装で覆われているため、全体として円盤のような形になる。ディスコプターという名称自体、円盤を意味する「ディスク」とヘリコプターをくっつけたものだ。
ディスコプターが特許を取った頃、アメリカ海軍は円盤形機XF5Uの開発を行っていたが、XF5Uはプロペラ推進のレシプロ機で、機体だけが平たい円盤形になっているという構造だから、原理的にはディスコプターとまったく異なるものである。
画家でもあったウェイガーズは、何種類ものディスコプターや、こうしたディスコプターの発着に使用される空港などのイラストを数多く残している。彼はこうしたイラストを各地に駐屯するアメリカ軍基地にも送り、軍も関心を示したともいわれているが、現在になってもこのディスコプターは実現していない。また、ディスコプターがその後の円盤形航空機の開発にどのような影響を残したのかも明らかではない。ただ、ドイツの雑誌『シュピーゲル』1950年3月30日号は、ナチス・ドイツの技術者ルドルフ・シュリーファーが開発していたという円盤形機について報じているが、その構造は中央に操縦室を持ち、周辺にある回転翼で上昇するというものであり、ディスコプターによく似ている。両者の類似は果たして偶然なのだろうか。
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2024.10.02 20:00心霊戦前に設計された円盤形航空機「ディスコプター」とは? UFOは人工物なのかのページです。オランダ、空飛ぶ円盤、マンテル大尉事件などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで