UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(2) 幽霊飛行機、ロサンゼルス空襲、フー・ファイター

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 19世紀末、1896年からは、正体不明の飛行船が集中的に目撃される、いわゆる「幽霊飛行船事件」が頻発した。当初は、アメリカやカナダで光点のようなものが目撃されるという事件であったが、やがて飛行船のような形状の物体を見たという報告が寄せられるようになり、目撃はスウェーデンやノルウェー、ロシア、イギリスにも広まった。

 中には、飛行船から発明王トマス・アルバ・エジソン宛の手紙が落とされたとか、飛行船が墜落した際に火星人らしき遺体が発見され、墓地に埋葬されたという報道も見られたが、これらはネタに困った地元紙の捏造と考えられている。

 1933年から34年にかけてはスカンジナビア半島一帯で何十件か奇妙な飛行機の目撃報告が寄せられ、「幽霊飛行機」と呼ばれた。形は単葉機なのだが、飛行中にエンジンを止めて滑空したりなど、当時の航空機の水準では考えられないような飛び方をしていた。幽霊飛行機についてはスウェーデン空軍が調査を行なったが、結局何も発見できなかった。

 第二次世界大戦中の1942年2月25日には、アメリカのロサンゼルス上空を20~25個の銀色の光体が編隊を組んで飛行するという、いわゆる「ロサンゼルス空襲」と呼ばれる事件も記録されている。
飛行物体は軍のレーダーや双眼鏡でも確認され、ロサンゼルス市警察や市民も肉眼で目撃した。日本軍の攻撃と考えた高射砲隊は計1430発もの砲火をあびせたが墜落したものはなく、相手からの攻撃もなかった。

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ロサンゼルス空襲翌日発行のロサンゼルス・タイムズ(画像は「Wikipedia」より)

 第二次世界大戦末期になると、連合軍の航空機にまとわりつくように飛ぶ正体不明の飛行物体が頻繁に目撃され、連合軍パイロットはこれをフー・ファイターと呼んだ。

 フー・ファイターは、直径10センチから1メートルくらい、赤や白、オレンジ色とさまざまな色をした光る球体で、単独で現れたり、集団で現れたりして連合軍の航空機を追尾した。レーダーには映らず、戦闘機に近付いてダンスをするように跳ね回ったり、爆撃機や戦闘機の前方や後方についたりした。その速度は時速3000キロから8000キロほどで、ナチス・ドイツや日本軍の秘密兵器ではないかという噂も流れた。

 しかし終戦後、ドイツ軍や日本軍のパイロットも同じような謎の飛行体に遭遇していたことが明らかになった。

 日本陸軍はこれを「火玉」、海軍は「火弾」と称したようだが、現場のパイロットたちは「シャボン玉」とか「空のクラゲ」と呼び、アメリカの新兵器と考えたり、自分の目がどうかしたのかと思ったりしていたようだ。

「宇宙友好協会(CBA)」は機関誌『空飛ぶ円盤ニュース』1963年2/3月号及び1964年8月号の二回にわたり、日本軍が撮影したフー・ファイターと称する写真を何枚も掲載している。

 また少数ながら、日本でも第二次世界大戦中のUFO目撃が報告されている。

 戦争中は、何か飛行物体を見てもアメリカ軍機と考えられることが多かったため、この種の目撃のほとんどは埋もれていると推定されるが、たとえば1944年初秋には、横須賀で加藤米二氏が、黒い葉巻型の物体が、長いオレンジ色の尾を引いて、波状飛行を行っているのを目撃している。加藤は当時海軍航空技術廠に勤務しており、航空機には詳しいはずであるが、その彼にとってもこの物体は正体不明の、文字通りの未確認飛行物体であった。同じような物体はこの年豊後水道でも目撃されており、翌1945年には、岐阜県丹生川村や愛知県福江町で夜間謎の光体が目撃されているという。

 第二次世界大戦終了直後の1946年からは、幽霊ロケットと呼ばれる謎の飛行物体が、主として西ヨーロッパやスカンジナビア半島上空を飛び回った。

 事件の発端は、1946年2月、フィンランドで異常な隕石活動が報告されたことであるが、同じ年の5月になると、スウェーデン北部で紡錘型、魚雷型、あるいは葉巻型をしており、時には小さな尾翼を持つロケットのような飛行物体がたびたび目撃された。

 当時は、第二次世界大戦終了後、冷戦が始まったばかりの時代でもあり、スウェーデン政府はこの飛行物体がソ連の秘密兵器である可能性を懸念し、7月10日には幽霊ロケットに関する特別調査委員会を組織した。この委員会は、世界初の公式UFO調査委員会とも考えられている。

 ゴースト・ロケットの目撃談は、8月にはデンマーク、ノルウェー、スペイン、ギリシャ、ポルトガルとヨーロッパ全土に広がり、9月にはインドのカシミールでも目撃された。

 このように謎の飛行物体の目撃は、少なくとも古代エジプトの昔から、アーノルド事件の直前まで、歴史上連綿と続いているのだ。しかも研究家の中には、古代の神話や伝説に伝わる神々は、じつはUFOに乗ってやってきた宇宙人だとか、遺伝子操作で人類を創りだしたのは彼らだとか主張する者もいるから、これが正しいとすればUFOは石器時代、あるいはそれ以前から地球の空を飛んでいたことになる。

文=羽仁礼

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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