メキシコ全土で中学生の集団連続失神事件が発生! 原因不明、SNSが関与か

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画像は「Getty Images」より

 昨年秋、メキシコで中学生の集団連続失神事件が発生。その原因は今も特定されていないという。

 2022年9月23日、メキシコのタパチュラにある連邦第1公立中学校の生徒12人(女子11人、男子1人)が、教室やトイレ、学校の中庭で倒れ込んだ。他にも22人の生徒が激しい頭痛や嘔吐などの症状を訴えた。

 興味深いことに、そうした生徒の中には、空気中に木の葉を燃やしたような煙のような臭いがしたと言う者もいて、捜査当局はマリファナなどの薬物が原因ではないかと考えたが、検査結果は陰性だった。また、その日、浴室でマスタード色の粉を見たという生徒もいたが、毒物検査ではやはり何も出なかった。結局、医師はパニック障害と判断したが、その後、メキシコ国内の他の学校でも同様の事件が報告されるようになったのだ。

 連邦第1中学校の事件から2週間後、タパチュラから240kmほど離れたメキシコのチアパス州の農村、ボチルの中学校で、少なくとも68人の生徒が意識を失い、嘔吐し、突然混乱状態に陥った。数名の生徒は入院が必要となったが、この時の毒物検査で4名からコカインが検出された。

 10月11日にもタパチュラの連邦第1公立中学校で18人の子供たちが校内で理由もなく失神。そのうちの1人であるエスメラルダという女の子は、最初の失神事件でも意識を失った。エスメラルダは、女子トイレで焦げたような異臭を感じた後、めまいがして倒れたと母親に話しているという。学校に特別に訓練された探知犬が投入されたが、何も感知されなかった。

 それから数カ月の間に、メキシコの4つの州にある6つの中学校で、何百人もの生徒が失神、原因不明のめまい、頭痛、嘔吐を経験。そのうち数人は回復に数日、数週間を要した。結果的にメキシコ全土で227人の子どもたち(ほとんどが女子)が被害に遭った。これだけ大規模の事件にもかかわらず、メキシコ当局はいまだにその原因を突き止められていない。

 肥料中毒、細菌汚染、薬物、ガス漏れ、水質汚染など、さまざまな説があったが、誰も証拠をつかめていない。エスメラルダの母親は、「学校で何かが起こっていて、それを私たちに知られたくないのかもしれない」と語り、「娘が薬物を投与されたと思い、薬物検査の費用を支払ったが、すべて陰性だった」と話している。

 決定的な証拠がないにもかかわらず、時間が経つにつれて、薬物の関与があったというのが一般的な見解になっていった。中学生の薬物使用の増加を懸念する声や、メキシコの麻薬カルテルが仕組んだ陰謀だとする声もあった。後者の説は、ボチルの学校周辺に怪しい人物が出没しているという報告や麻薬の密輸入で有名なチアパス州でもいくつかの事件が起こったため、注目された。

 連邦第1公立中学校で失神した子供たちのうち6人は、チアパス地方検事局に呼ばれ、心理学者による尋問を受けたが、彼らの供述は捜査にあまり役立たなかったという。検察の報告書には、「食物による中毒の可能性が高い」「空気による感染の可能性が高い」という記述があり、また別の報告書では、ボチルでの事件を「覚せい剤による中毒の可能性が高い」としている。

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 この失神の「流行」の謎はメキシコ中の多くの専門家の興味を引き、その中の一人、メキシコシティの疫学者カルロス・アルベルト・パントハ・メレンデス博士は、実際に入手したデータに基づいて独自の調査を行った。多くの子供たちが向精神薬で陰性であったことから、薬物の可能性を否定し、汚染された食品による細菌、殺虫剤による中毒、熱射病なども、同時に起こるにはあまりに多くの偶然が必要であることから、その可能性を否定した。

 ほとんどの子どもたちが失神する前に体調を崩したり、嘔吐やめまいなどの症状を示したりしていなかったことから、経口摂取したものが原因ではないだろうと推論。また、多くの学校は農場や工場に近接していないため、農薬や工業薬品による中毒も否定された。メレンデス博士の見解では、可能性は低いが、唯一考えられる原因は、集団ヒステリーだという。

 集団ヒステリーとは、失神、痙攣、悲鳴などの症状を示す人の近くにいる他人が同じ症状を呈すという心理的な現象だ。感情的に親しい人や、一緒にいる時間が長い人に起こることがあり、数時間から数カ月続くこともある。しかし、大きな疑問が残る。なぜ集団ヒステリーが、何百kmも離れた異なる州の互いに交流のなかった人々の間で広まったのだろうか? その答えは、SNSにあるかもしれないという。

 メレンデス博士らは、SNSを媒介にした集団ヒステリーと、新型コロナウイルスのパンデミックによる心理・発達障害の組み合わせを疑っているとのことだ。

「これらの子供たちは、ほぼ2年間、家にいました。それは、脳と免疫系との関連において重要なことです。この1年、さまざまな奇妙なことが起こりました」(メレンデス博士)

 メレンデス博士らは、この夏、被害を受けた学校を訪れ、子供たちにインタビューを行い、さらなる調査を進める予定とのことだ。今後の真相解明に期待したい。

参考:「Oddity Central」ほか

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文=S・マスカラス(TOCANA編集部)

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