「ネッシーはアルコール中毒の元凶」 70年代にネス湖で悪魔祓いを行った司祭をBBCが撮影! 住民「怪物がいなくたって酒は飲むさ」

 1970年代のイギリスでネス湖に対して悪魔祓いを行った司祭がいた。いったい何が起こったのか。今では忘れ去られた奇妙な事件の顛末を紹介する。

 6月12日、イギリス国営放送BBCのTwitterアカウントが、ひっそりと「今日この日に」と、1973年の出来事について報告した。いわく「1973年の今日この日、ドーセット州からネス湖に旅行してきた教区牧師が悪魔祓いを行っているのを英国全土が目撃しました。悪魔祓いの目的は、ネッシーがアルコール依存症を引き起こし、結婚生活を破綻させるために極悪な魔法を使うのを阻止することでした。」

「Loch Ness Exorcism:ネス湖の悪魔祓い」と呼ばれる、この奇妙な事件について、BBCの報道にまず注目したい。映像記録は「願わくは邪悪なる悪魔崇拝、凶悪なる魔術が止まんことを」と祈るオマンド博士から始まっている。ネス湖から1100km以上離れた自宅からオマンド博士はわざわざネス湖の岸辺に立って、祈りをささげている。同行者らによれば、当時、まず正確にネス湖の四隅をみきわめて、そこで儀式をささげて、また全員への神からの加護を得る祈りをささげた。

 オマンド博士はボートでネス湖の中央へいき、「立ち去れ! 邪悪な悪魔よ! おまえらに定められたふさわしき場所へと行くがよい!」と湖面に聖水をふり注ぎながら唱えている。オマンド博士は全能の神の御名によってネス湖の怪物ネッシーに対し、これ以上、地域住民に不安を与え、悪影響を及ぼさぬように退去を命じているのである。

「ネッシーはアルコール中毒の元凶」 70年代にネス湖で悪魔祓いを行った司祭をBBCが撮影! 住民「怪物がいなくたって酒は飲むさ」の画像1
画像は「Twitter」より

 以下、当時の記録である。

同行者「オマンド博士、はたして、この霊とは何なのですか。ネス湖の怪物とは物理的存在なのか否か、いかがでしょう。」
博士「簡単には答えられない質問ですね。私が思いますに、たしかに物理的存在でもありました。数百年、数千年、あるいは数百万年前に、ここに確かに存在したのです。それは、私たちがドラゴンと呼んでいるもの、すなわち悪魔、邪悪そのものです。」
同行者「人々がドラゴンによって導かれてしまう悪徳とは何でしょうか。」
博士「それは悪徳というよりは、失敗、不手際です。たとえば、薬物中毒です、クスリに走ってしまうこと。または数えきれないアルコール中毒患者がいますよね。」

 では当時のネス湖周辺の住民は「怪物の霊」について、どう思ったか。地域住民の男性は「怪物の霊がいなくたって酒は飲むさ」とオマンド博士の奇行を笑い飛ばす映像が残っている。

 しかしながら、オマンド博士は、元イギリス国教会の司祭であり、同時に当時は国際的に名声あるエクソシストだった。事実、彼はネス湖以前にはシリア、スコットランド、バミューダ・トライアングルなどで除霊と祓魔を行ったとされる。また、それゆえオマンド博士は欧州中のサーカス団において尊敬を集めた。なぜなら霊的に危険な場所を知らせ、浄めてくれるからだ。

「ネッシーはアルコール中毒の元凶」 70年代にネス湖で悪魔祓いを行った司祭をBBCが撮影! 住民「怪物がいなくたって酒は飲むさ」の画像2
実際の現場( Copyright (c) 1973 Flying Saucer Review)

 ところがBBCが報じた内容は事実とは違うのだ。実際の悪魔祓いは、6月2日にごく少数の人々で行われた。BBCが報じた内容は、あくまでTV用に作られたものだった。博士の服装は、司祭の正装ではなく作業着だった。なぜなら悪魔祓いの儀式には大きな危険が伴うからだ。エクソシズムは、いつでも口外されることなく、ひっそりと最小限の人数で行われなくてはならないのだ。
 6月2日、博士と現役砲兵士官A・アルトゥス大尉らは5人で2台の車に分かれて、ネス湖周辺を周回しながら何時間もかけて祓いの儀式を行っている。その証拠写真が当時のUFO研究誌に掲載されている。

UMAネッシーは怪物の霊かUFOか

 研究誌「フライング・ソーサ―・レビュー」の1973年1-2 月号の特集は「ネス湖のドラゴンと UFO」である。同特集は、深夜、ネス湖周辺で発光物体が目撃されたことを報告している。目撃証言は1971年8月13日だから、オマンド博士の悪魔祓いよりも早い時期になる。では、オマンド博士の除霊は成功したのか。

 どうやらオマンド博士ほどのエクソシストでもネス湖に漂う不気味な存在の影を払うことができなかった。21世紀となった現在でもネッシーの目撃報告が絶えないからだ。しかし、オマンド博士は世界各地の危険地域に出向いて、その土地の悪霊・悪魔を祓う勇敢な人物だったことは疑い得ない。オマンド博士は、10年後の1983年に亡くなったといわれている。

 そして奇妙な報告が残っている。オマンド博士の悪魔祓いの翌朝、同行者らがまるで葬儀に参列するために喪服を着たような全身黒ずくめの男を、ネス湖で見たという。異様なことに、その男は黒いヘルメット、黒手袋、黒いゴーグルをかけてマスクまで黒色だった。目撃者は異常事態に驚き、ふと目をそらしたら、その男は消えていなくなっていた。

 死神や悪魔のようにも見える謎の黒い男は、オマンド博士の死と関係があるのだろうか。真相は闇の中である。

参考:「Flying Saucer Review」「Beachcombing’s Bizarre Histroy Net

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文=神ノ國ヲ

学術論文からオカルト記事まで。
京都大学の博士課程に所属中。
Twitter:@kmnknw

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