「地球外文明と接触すべきではない」スティーブン・ホーキング博士が警告した理由
人類の念願の1つである地球外文明の発見だが、もしその悲願が叶った時、我々は彼らとお互いの存在を確認し合うべきなのだろうか。故スティーブン・ホーキング博士は「接触すべきではない」と警告していたのだが――。
■「先進文明との出会いは悪い結果をもたらす」
この広大な宇宙の中で唯一、我々の地球だけが生命を宿しているとは考えにくいのだが、今のところ我々は地球外の生命を発見していない。
この1世紀以上にわたって人類は宇宙のどこかにある異星文明を探し続けてきた過程で、天文学者たちは惑星を見つけることにかなり長けてきており、天の川銀河内に5000個以上の惑星が確認されている。その中に地球のように生命を宿している惑星はあるのだろうか。
たとえば太陽系外惑星「K2-18b」は生命生存可能領域(ハビタブルゾ―ン)に配置されており、惑星からの光のスペクトルを分析することで大気中のメタンと二酸化硫黄が発見され海の存在可能性が濃厚になり、地球では生物由来のものしか存在しない硫化ジメチルも検出されている。
このように生命が生息している可能性の高い惑星がいくつか特定されているのだが、生命が存在する惑星や高度な文明を発見した場合、我々は接触すべく行動を起こすべきなのか。
“車椅子の天才物理学者”こと、故スティーブン・ホーキング博士は2015年、地球外文明の声に耳を傾けるプロジェクト「ブレークスルー・リッスン(Breakthrough Listen)」の立ち上げの会見で、地球外文明に挨拶を返さないことがおそらくは最善である理由を説明している。
「私たちは宇宙人についてはあまり知りませんが、人間については知っています。歴史を見てみると、人間と知性の低い生物との接触は、彼らの観点からは悲惨な結果をもたらすことが多く、先進的な技術と原始的な技術を備えた文明間の出会いは、それほど先進的ではない文明にとっては悪い結果をもたらしました。私たちのメッセージの1つを読んでいる文明は、次のようなものである可能性があります。もしそうなら、彼らははるかに強力であり、私たちにとってのバクテリアよりも価値のないものとして私たちを認識するかもしれません」(ホーキング博士)
人類の歴史の中でも文明人が上陸先の先住民族を攻撃して一掃したりするなどの悲劇が起きているが、こうしたことが惑星間レベルで起きることをホーキング博士は想定していることになる。つまり迂闊にこちらの場所を教えてしまえば、それを知った宇宙人に侵略されてしまう可能性があるというのだ。
この考えは劉慈欣(リウ・ツーシン)のSF小説『三体II 黒暗森林(The Dark Forest)』で概説された“暗い森理論”に似ているともいえる。この小説の中である登場人物は、異星文明の動機が不確実であることを考えると、沈黙するのが理にかなっていると主張している。
その地球外文明が敵対的だったり、周囲のあらゆる脅威を消滅させることを原理原則にしていた場合、確かに我々は自分たちの存在をあまり大声で宣伝しないように注意する必要があるのかもしれない。
■ホーキング博士「私たちは知らなければならない」
ブレークスルー・リッスン委員会の委員長を務めるイギリスの天文学者、マーティン・リース氏はホーキング博士の懸念には同意せず「彼らは私たちがすでにここにいることを知っているかもしれない」と示唆している。
「地球外には有機生命体が存在するかもしれないし、あるいは滅びて久しい文明によって作られた機械が存在するかもしれない。しかし、たとえ解読が難しい信号であっても、あらゆる信号は、論理と物理学の概念が人間の頭蓋骨のハードウェアに限定されないことを私たちに教えてくれ、私たちの宇宙観を変えることになるでしょう」(リース氏)
またNASAの「Interstellar Message」のクリエイティブディレクターであるアン・ドルーヤン氏は我々よりも進んだ文明は暴力的ではないと考えているようだ。
「将来、私たちは進化の重荷を乗り越え、暴力的で近視眼的ではなくなる方向に進化する時期が来るかもしれません。私の願いは、地球外文明が私たちよりも技術的に熟練しているだけでなく、宇宙における生命の希少性と貴重さをもっと認識していることです」(ドルーヤン氏)
そしてホーキング博士は宇宙人と接触することに否定的であったにもかかわらず、調査を続けることには大賛成であった。
「私たちは生命が地球上で自然発生的に生じたと信じているので、無限の宇宙では他にも生命が発生するはずです。おそらく宇宙のどこかで、知的生命体が私たちの光を見つめ、その意味を認識しているのかもしれません。…(中略)…答えを見つけることに専念し、地球外の生命を探す時が来ました。私たちは生きています。私たちは賢いのです。私たちは知らなければなりません」(ホーキング博士)
我々より進んだ文明があるとすれば、彼らはすでに他の文明の探索をはじめている可能性が高く、我々の存在に気づいているのかもしれない。我々がこうして地球上で活動を行っている以上、もはや“居留守”は使えないのだろうか。ともあれ地球外文明の探査においては今後も焦らず気長に“朗報”を待つことになるのだろう。
参考:「IFLScienec」、「Space.com」ほか
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