誘拐後“3日間生き埋めにされた女性”はどのように生き延びたのか

 身代金目的で誘拐された富豪実業家の娘はコンテナに入れられ地中に埋められた――。4日目に救出されるまで彼女はどうやってサバイバルしたのか。

画像は「Amazon」より

■3日間以上生き埋めにされた富豪令嬢

 1968年12月、エモリー大学の学生で大手住宅建設会社・デルトナ社創業者の令嬢、バーバラ・ジェーン・マックル(当時20歳)はインフルエンザで体調を崩し、周囲にうつさないためにモーテルに滞在して母親の看病を受けていた。

 警察を名乗る者がモーテルの部屋にやって来たのだが、母親がドアを開けると男女の2人組に押し入られた。犯人らは母親を縛りつけ、娘のバーバラを誘拐したのだ。身代金目当ての犯行であった。

 犯人は刑務所から脱走してきたばかりのゲイリー・スティーブン・クリストと共犯者でガールフレンドのルース・アイゼマン・シーアで、2人はバーバラをジョージア州グイネット郡某所に連行した。

 2人は底が畳一畳ほどの丈夫なコンテナにバーバラを閉じ込めて生き埋めにすることにした。バーバラがしばらくは生き永らえるよう、コンテナの中には食料、水、鎮静剤、バケツなどが同梱され、コンテナから伸びるチューブの先は地上に出され換気が可能であった。埋めたコンテナの天井から地表までは50センチほど土が盛られた。

 犯人は身代金を要求し、1度は受け取りに失敗したものの、2度目で50万ドルの身代金を受け取り、バーバラの居場所をFBIに伝えた。

 ただちにバーバラの捜索と救出活動がはじまり、ついにコンテナが発見されてバーバラが救出された。埋められてから丸3日以上、83時間が経っていたのだった。バーバラは憔悴していたが健康状態に問題はなかった。

 犯人のクリストは身代金を受け取るとその金でボートを購入したのだが、この高額ショッピングから足が着いて当局に追跡され、フロリダ州で逮捕されることになる。

 別行動をとって逃亡していたアイゼマン・シーアは、数カ月後にオクラホマ州の病院での求人応募時に迂闊にも提供してしまった指紋によって身元が明らかになり逮捕された。

 クリストはこの誘拐事件で終身刑を言い渡され、アイゼマン・シーアは4年間の服役後、母国のホンジュラスに強制送還された。

 この事件はフロリダの犯罪史における重要な一件となり、犯行の入念で狡猾な計画性と、想像を絶する試練に耐えた若い女性の驚くべき忍耐力の両方を印象付ける事件となった。

 狭いコンテナに閉じ込められ83時間の生き埋め状態の中、希望を捨てずにサバイバルしたバーバラの精神力には感服するしかないが、後にバーバラは生き埋めの間、もうすぐやって来るクリスマスを前に、家族で過ごしたクリスマスの楽しい思い出に浸ることで平静を保っていたと話している。バーバラの不屈のメンタルを見習いたいものだ。

参考:「Misterios do Mundo」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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