ハンマーで頭をフルスイング!? 1890年代の「究極の頭痛治療法」画像がネットで拡散… その真相とは

「頭痛がひどい? よし、ちょっとその鉄兜を被って金床に頭を乗せろ。今からハンマーで思いっきり叩いてやるからな!」
そんなコントのような光景が、1890年代のイギリス(ヴィクトリア朝時代)では「最新の医療」として大真面目に行われていた――。
最近、InstagramやReddit、FacebookなどのSNSで、そんな恐ろしい説明文とともに一枚のセピア色の写真が猛烈な勢いで拡散されている。
写真には、バケツのような金属製のヘルメットを被せられ、金床に頭を乗せた男性と、その後ろで巨大なスレッジハンマーを振りかぶるもう一人の男性が写っている。
「ハンマーで頭蓋骨を鐘のように鳴らし、その振動で頭痛を治す『振動療法(バイブレーション・セラピー)』だ」と、まことしやかに語られるこの画像。果たして、昔の医者は本当にそこまでイカれていたのだろうか?
写真は「本物」、だが説明文は「大嘘」
結論から言おう。この写真は実在するが、「頭痛治療」というのは完全なフェイクニュースである。
すでに2022年の時点で、海外のファクトチェックサイト『PolitiFact』や『Lead Stories』がこのデマを完全に否定している。
確かに、1890年代には「振動療法」という概念は存在した。しかし、それは「柔らかいブラシや小型の機械式デバイスを頭皮に軽く叩きつける」という、マッサージのようなものであった。
2010年の医学誌『Brain』に引用された1883年のマニュアルには、「頭皮に非常に軽くブラシを当て、下から上へと動かす」と記されている。巨大なハンマーを振り回すような野蛮な描写は一切ない。
当時の医師たちだってバカではない。人間の頭をスレッジハンマーでフルスイングすれば、頭痛が治るどころか、脳震盪を起こして(あるいは首の骨が折れて)永遠の眠りについてしまうことくらい、百も承知だ。
Treatment for headache,1890s
by u/costellosensei in interestingasfuck
正体は「鍛冶屋の悪ふざけ写真」か
では、この写真は一体何なのか?
専門家によれば、これは当時の鍛冶屋たちが遊びで撮った「ジョーク写真(あるいは一種のトリック写真)」である可能性が高いという。
現代の私たちが、遠近法を使って「ピサの斜塔を支えるポーズ」の写真を撮ったりするのと同じような感覚で、当時の職人たちが「頭の固い奴を鍛え直してやるぜ!」といったノリで撮影した、ただの“悪ふざけ”だったのだろう。
しかし、この悪ふざけ写真に、誰かが「これは昔の頭痛治療だ」というもっともらしい嘘のキャプションをつけたことで、物語は一人歩きを始めてしまった。
「頭蓋骨を鐘のように鳴らす」といった尾ひれまでつき、数ヶ月おきに新たなSNSアカウントで投稿されては、そのたびに「昔の人は狂ってる!」「そりゃアスピリンが発明されるまでは大変だわ」と人々を騙し続けているのだ。
1897年にアスピリン(解熱鎮痛剤)が合成されるまで、確かに人類の頭痛治療は迷走していたかもしれない。しかし、ハンマーと金床を使った治療法は存在しなかった。
SNSで「信じられないような過去の真実」を見かけた時は、リポストする前に、まずはその情報の出所を疑ってみるべきだ。100年前の「悪ふざけ」を本気で信じて拡散する現代人の方が、ある意味でハンマーで頭を叩かれたように思考停止しているのかもしれない。
参考:Boing Boing、ほか
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