ヴォイニッチ手稿を解読した!? スペインの学生が開発したソフトウェアで「世界で最も謎めいた書物」を解読したと主張

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Beinecke Rare Book & Manuscript Library, Yale University ([1])., パブリック・ドメイン, リンクによる

 15世紀初頭に謎の言葉で書かれた奇書がついに解読された――。「世界で最も謎めいた書物」であるヴォイニッチ手稿が革新的なソフトウェアによって解読したとの主張が報告されている。

■「ヴォイニッチ手稿」遂に解読成功か!?

 1408年から1438年の間に作成されたと考えられている「ヴォイニッチ手稿(Voynich Manuscript)」の謎に新たな展開が訪れた。スペインの若き開発者が、何世代にもわたる暗号学者、言語学者、歴史家たちが1世紀以上にわたって成し遂げられなかったこと、すなわち「世界で最も謎めいた書物」の解読に成功したと主張している。

 スペインメディア「El Digital de Cuenca」によると、経営学を専攻する学生で歴史愛好家のダニエル・ウエルタ氏は未知の言語を分析し、言語パターンを驚異的な精度で再構築できるLFV-Xというソフトウェアを開発したと主張している。彼によると、このツールによって、ヴォイニッチ手稿のこれまでで最も忠実な解釈の一つが可能になったという。

 このニュースはたちまち大きな注目を集めている。15世紀初頭に書かれたヴォイニッチ手稿は、言語学史における最大の謎の一つであり続けているからだ。未知の文字で書かれたページ、あり得ない植物の挿絵、天体図、そして明確な説明を拒むかのような人物像など、数々の謎がこの240ページの写本に散りばめられているのだ。

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Beinecke Rare Book & Manuscript Library, Yale University ([1])., パブリック・ドメイン, リンクによる

 ウエルタ氏の主張は、特に人工知能を応用している点において興味深い可能性を切り拓ものであるとも言える。しかしながらこれまでのところ、彼の手法の独立した検証は行われておらず、また彼の結果を比較できるような査読付き論文も発表されていない。

 しかし重要なことを忘れてはならない。これまでヴォイニッチ手稿の解読に取り組んだ者が何人もいることだ。代表的な“失敗例”は次の通りだ。

●2018年:アルバータ大学
 コンピュータ科学者のグレッグ・コンドラック氏と彼の教え子であるブラッドリー・ハウアー氏は、世界人権宣言をデータとして学習させた人工知能を応用した。アルゴリズムは、ヴォイニッチ手稿の原文がヘブライ語であると特定し、語彙の一致率は80%だった。しかし生成されたテキストは文法的に一貫性がなく、ヘブライ語の専門家もその結果を検証できなかった。

●2019年:ジェラード・チェシャー(ブリストル大学)
 イギリスの言語学者、ジェラード・チェシャー氏は、その文章が女性的な教会風の「原ロマンス語(Proto-Romance)」で書かれているという物議を醸す説を発表した。しかし彼の結論は広く否定された。中世ラテン語の専門家たちは、解読されたとされるわずか2行の文章は「事実上理解不能」だと指摘した。

●2025年:マイケル・グレシュコ (暗号学)
 科学ジャーナリストであり独立研究者でもあるマイケル・グレシュコ氏は、ナイベ暗号(Naibbe cipher)と呼ばれる複雑な換字式暗号が、ヴォイニッチ手稿の統計的特性を再現できることを実証した。これは貴重な方法論的進歩だが、彼は手稿を解読したとは主張しておらず、その作成が妥当であることを示したに過ぎないと明言している。

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Beinecke Rare Book & Manuscript Library, Yale University ([1])., パブリック・ドメイン, リンクによる

 ヴォイニッチ手稿の謎は、単にその言葉を翻訳することだけではなく、翻訳が正しいことを証明すること、なぜ暗号化されたのか、そして誰が暗号化したのかを知ることにもある。

 実際、近年の研究では逐語訳を試みることすらなく、むしろいかにして何世紀にもわたって解読不能でありながら、同時に理解可能なように構築されたのかを解明しようとしている。専門家の中には、それが実際の言語を隠していると考える者もいれば、暗号だと考える者もいる。また意図的に難解な作品として構想された可能性もあると考える者もいる。

 作成から600年以上経った今もなお、この写本はあえて解読を試みる者すべてに挑戦状を突きつけている。はたしてウエルタ氏によってヴォイニッチ手稿の全容解明を我々は目の当たりにできるのか。それとも「世界で最も謎めいた書物」の解読失敗の長いリストに、また一つの事例が加わることになるのだろうか。いずれにしてもそれがわかるのはそう遠い先のことではない。

参考:「Espacio Misterio」、 「El Digital de Cuenca」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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