「2200年までに人類を40億人へ」—— 世界人口の半減こそ人間のためになると論じる新研究、その中身と危うさ

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 いま、学術誌の紙面で「人類を半分に減らそう」という提案が真顔で語られている。しかもそれは人間を憎む思想からではなく、「人間のための戦略(pro-human strategy)」として提示されているというのだ。

 学術誌『Sustainable Development』に掲載された論文は、現在80億人を超える世界人口を、2200年までに40億人程度まで穏やかに減らしていくことが、自然環境にとっても人類自身にとっても最良の道だと論じている。

 数字だけを見れば、耳を疑うような話である。だが研究チームが提示する道筋は、多くの人が「人口削減」という言葉から連想するものとは、かなり様相が異なっている。

「2200年に40億人」——論文が描く未来図

 論文の結論部で研究チームが掲げる基本理念は明快だ。人口増加を穏やかに終わらせ、さらに反転させること、そして一人あたりの環境負荷を抑えることは、自然にとっても人間にとっても利益になる——という主張である。

 その恩恵として挙げられているのは、天然資源への圧力の緩和、出生率の高い地域での貧困の軽減、汚染の低減、資源や移民をめぐる紛争の減少、そして人口密集地における生活の質の向上だ。規模を抑えた人口であれば、野生の生息地や野生種、気候といった地球の自然遺産を守れるという。

 注目すべきは「2200年」という時間軸の長さだろう。今から約170年先である。急激な削減ではなく、6〜7世代をかけて緩やかに減っていく未来像を描いている点が、この論文の設計の核心にある。

強制ではなく「自由の拡大」で——イラン、韓国、コスタリカが示した数字

 では、どうやって減らすのか。研究チームは、大量の人命を奪うような手段や優生学的なプログラムを明確に否定している。彼らが提示するのは、その正反対の方法だ。

 女性が家族計画サービスにアクセスできるようにすること。そして特に低所得国において、女児の教育機会を広げること。この2つが柱である。自由を制限するのではなく、拡大することによって人口動態は変わる、という考え方だ。

 この主張には実際のデータの裏づけがある。イランでは家族計画の推進が始まった後、合計特殊出生率が1992年の4.08から2001年には1.94まで低下した。韓国では1972年の4.07が1984年には1.93へ。コスタリカは変化がより緩やかだったが、1972年の4.16が2009年には1.98まで下がっている。

 いずれも強制によるものではなく、性と生殖に関する健康サービスの改善と女児教育の拡充がもたらした結果だと研究チームは指摘する。女性が産む子どもの数を自分で決められるようになれば、出生率は置換水準かそれ以下へ、しばしば急速に落ちていく——というのが彼らの読み解きである。

 ただし論文は、有限な惑星の上で富と消費を無限に追い求める価値観からの地球規模の意識転換も必要だとしている。こちらが「言うは易し」であることは、研究チーム自身も認めている。

「エコファシズム」の影——人口論につきまとう暗い記憶

 とはいえ、人口をめぐる議論には常に別の側面がある。人口過剰論はしばしば、エコファシズム——ホモ・サピエンスは自然界の重荷であり、権威主義的な力で管理されるべきだという発想——の後味を残してきた。

 そもそも問題は人口過剰ではなく、すでに手にしている資源を適切に使えていない政府や企業の側にあるのではないか、という反論も根強い。実際、政策と優先順位を大きく組み替えれば、地球上のすべての人を持続可能な形で養えるだけの食料を生産できるとする研究も存在する。

 さらに近現代史を振り返れば、人口管理の名の下に行われてきたことのリストは重い。強制不妊手術、強権的な一人っ子政策、そして「貧しい者が資源を圧迫している」と責任を転嫁した植民地時代のレトリック。いずれも「健全な人口」を守るという建前で実行された。

 今回の研究チームは、そうした強制的な手段を主張しているわけではない。むしろ選択肢と自由を、とりわけ女性にとっての自由を拡大せよという立場に立っている。だが「人口を半分に」という数値目標が独り歩きしたとき、それがどう使われうるかは、また別の問題だろう。

 170年という時間の長さは、この提案の穏当さを支えると同時に、誰も結果を検証できないことを意味する。40億人の地球が理想郷なのか、それとも危険な発想の入り口なのか——判断の材料は、いまのところ出生率のグラフと、歴史が残した苦い記憶しかない。

参考:IFLScienceSustainable Development、ほか

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