誰が何のために? エルサレムで発見された長さ45m超の謎の地下トンネル…… 年代も目的も「完全に不明」

誰が何のために? エルサレムで発見された長さ45m超の謎の地下トンネル…… 年代も目的も「完全に不明」の画像1
画像は「HeritageDaily」より

 固い石灰岩をまっすぐ掘り抜いて延びる、全長45メートルを超える地下トンネル——。それが今、考古学者たちを完全に黙らせている。発見の舞台は、世界でもっとも徹底的に掘り返されてきた都市のひとつ、エルサレム。この古都の足元から、誰が・いつ・何のために造ったのか、その全てが「不明」とされる空洞が姿を現したのだ。

工事の下見が掘り当てた「闇へ続く階段」

 この発見は、エルサレム南郊のキブツ・ラマト・ラヘル地区で、新たな建設工事に先立つ事前調査の過程で起きたとされている。調査チームが想定していたのは、土器のかけらや古い壁の断片を数点記録する程度の、ごくありふれた作業だった。

 ところが彼らが掘り当てたのは、暗闇へと降りていく一本の階段だったという。イスラエル考古学庁(IAA)の発掘責任者シヴァン・ミズラヒ氏らによれば、当初は自然にできた空洞(カルスト地形の洞)に行き当たったが、掘り進むにつれ、それは固い岩盤をくり抜いた長大なトンネルへと姿を変えていった。一部は今も崩落したままで、内部はまだ全貌を明かしていないとされる。

「水道」も「農業」も否定された——残るのは「採石場」説

 トンネルの規模は専門家を驚かせるに十分だ。通路は高いところで約5メートル、幅は約3メートルに達し、全長は46メートルを超える。これだけの岩を直接削り抜くには、膨大な労力と緻密な計画、相応の技術と資源が不可欠だ。発掘チームも、これを成し遂げた者が並々ならぬ労力と能力、財力を備えていたことは明らかだとの見解を示している。だが、その肝心の目的だけが、すっぽりと抜け落ちているのである。

 まず立てられた仮説は、淡水の湧き水と人々をつなぐ導水路、すなわち水道としての用途だった。ところが現場の周辺には地下水源が一切見つからず、古代の水利施設なら壁面に施されるはずの漆喰(しっくい)の痕跡もなかったという。地質学者の見立てもあり、水道説は退けられた。次に検討された農業・産業用施設という可能性も、それを裏づける遺物や付随設備が周囲に見当たらず、宙に浮いたままだ。

 現時点でもっとも有力とされているのが、建材や石灰の原料となる白亜(チョーク)の層に到達するために掘られた採石坑、という説である。トンネルには換気用と見られる縦坑が組み込まれ、床には採石で出る砕石くずが散らばっていた——これらは実用的な目的を指し示す物証だという。とはいえ確定ではなく、途中で放棄された未完成の工事現場だった可能性すら残されている。

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画像は「HeritageDaily」より

なぜ最も掘り尽くされた都市で「謎」が残るのか

 さらに研究者を悩ませているのが、年代の特定だ。時代を割り出す手がかりとなる遺物がトンネル内から一片も見つかっていないため、いつ掘られたものなのかさえ絞り込めていないという。空間だけがくっきりと残り、それを刻んだ時代の指紋が消えているのである。

 唯一の手がかりは立地だ。直線距離でわずか数百メートルの範囲に、鉄器時代の公共建築が見つかったアルノナ地区や、鉄器時代からイスラム時代までの居住跡が記録されているテル・ラマト・ラヘル遺跡が存在する。これらの「ご近所」から推し量れば、トンネルはおおよそ2500年から3000年前のものではないか、と見られている。だが、それを裏づける決定的な証拠は、いまだ地中に埋もれたままだ。

 これほど掘り尽くされた土地で、これほど大規模な構造物の正体が丸ごと謎のまま残るのは、それ自体が異例の事態である。何層にも積み重なった歴史の重みこそが謎を生む温床でもある。ある時代の施設を後の世代が作り替え、また埋め戻す——その繰り返しのなかで、当初の目的を語る証拠が上書きされ、削り取られてきたのだろう。

 聖地の地下に刻まれたこの一本の通路が、見落とされてきた平凡な採石坑にすぎないのか、それとも記録から抜け落ちた別の営みの痕跡なのか。確かなのは、専門家が知恵を結集してもなお、その口を割らせるには至っていないという一点だけだ。答えは依然として、エルサレムの硬い岩盤の奥深くに封じられたままである。

参考:Popular Mechanics、ほか

TOCANA編集部

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