コカイン畑を食い荒らす「蛾」を生物兵器に? 英国が1980年代に計画した麻薬カルテル撲滅作戦の衝撃と真相

南米の密林で、たった一種の蛾が麻薬カルテルの息の根を止めるかもしれない——1980年代末、英国政府内で本気で検討されていたのは、そんな荒唐無稽にも思えるシナリオだった。
英国立公文書館が新たに公開した機密文書により、当時のマーガレット・サッチャー首相自らが、コカインの原料となるコカ畑を「葉を食い荒らす蛾の大群」で壊滅させる計画を後押ししていたことが明らかになった。
舞台となったのは、生物・化学兵器研究機関として知られる英国の施設ポートン・ダウン。国家の対麻薬戦争の裏側で、いったい何が計画されていたのか。
コカ畑を壊滅させた「エロリア・ノイェシ」という蛾の秘密
計画の着想元になったのは、1987年から1988年にかけてペルーの都市タラポト近郊で実際に起きた出来事だった。
「エロリア・ノイェシ(Eloria noyesi)」という蛾が自然発生的に大量発生し、コカ畑を次々と食い荒らしたのだ。この蛾の幼虫はほぼコカの葉のみを餌とし、他の昆虫であれば有害となる成分を安全に処理できる特殊な性質を持つという。
英外務省の説明資料によれば、この「前例のない大発生」により違法コカ栽培地約2000ヘクタールが壊滅し、密売組織には3700万ドル以上の損失が生じたと推定されている。効果を目の当たりにしたペルー当局は、比較的経験の浅い職員でも運用できる大量繁殖プログラムの開発について、英国に専門知識の提供を求めた。
ポートン・ダウンで進められた蛾の「兵器化」計画
この要請を受け、サッチャー政権はアイデアの検討に約10万ポンド(当時の為替で約2200万円)を投じたとされる。
国立公文書館の資料によれば、1989年の文書では、軍の科学者たちが蛾を大量に繁殖させ、違法プランテーション上空でヘリコプターから放つ方法を検討するよう指示されていたという。
当局者らは、この昆虫が強大な麻薬密売組織に対する安価で効果的な「生物兵器」になり得ると考えていたとされる。
公開文書によれば、サッチャー首相は本計画のさらなる調査を個人的に支持し、このアイデアを「追求する価値が十分にある」と考えていたという記録が残っている。

効果は「一時的」、そして漏洩の恐怖——葬られた計画の顛末
しかし検討が進むにつれ、効果や環境への影響を懸念する声が政権内で上がり始めた。
内務省は、この計画が技術的には実現可能に見えるものの、コカイン生産への影響は一時的なものにとどまるだろうとの結論に達したとされる。
さらに1989年末までに、閣僚らは別の懸念を抱くようになった。計画の存在が漏洩すれば作戦そのものが危うくなるだけでなく、関与した人物が危険にさらされる可能性があるというものだ。麻薬カルテルを相手にする以上、情報漏洩のリスクは現実的な脅威だった。
結果として、蛾を兵器化して麻薬カルテルと戦うというこの大胆な計画は、構想段階を超えて実行に移されることはなかった。
生物兵器研究機関ポートン・ダウンが名を連ね、一国の首相が個人的に後押ししたこの作戦は、実現していれば対麻薬戦争の歴史を変えていたかもしれない。だが最終的にそれを止めたのは、科学の限界でも倫理的な躊躇でもなく、「効果が続かない」という冷静な計算と、「バレたら危ない」という現実的な恐れだった。
機密文書のページの奥には、大国の政策決定が案外そんな地味な理由で覆るという、もう一つの真実が記されている。
参考:Daily Mail、ほか
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2024.10.02 20:00心霊コカイン畑を食い荒らす「蛾」を生物兵器に? 英国が1980年代に計画した麻薬カルテル撲滅作戦の衝撃と真相のページです。蛾、生物兵器、コカイン、サッチャーなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
