【TOCANA的UMAファイル #08】「スクォンク」 ── 捕まえた瞬間、涙で消えてしまう森の泣き虫

世界には、目撃されても証拠が残らないUMAは数えきれないほどいる。だが、こいつは違う。捕獲そのものには成功した記録が残っているのに、なぜか証拠だけが一滴も残っていないのだ。ペンシルベニアの森に棲むという怪物「スクォンク」は、自分の醜さを嘆いて泣き続け、追い詰められると涙で自分自身を溶かして消えてしまうという。
基本データ
名前:スクォンク(Squonk)。ラテン語風の“学名”として「Lacrimacorpus dissolvens(涙する体、溶けるもの)」まで与えられている
生息地:米・ペンシルベニア州北部のツガ(ヘムロック)林とされる。明け方や夕暮れに活動するという
初出:1910年、米国森林局の林務官ウィリアム・T・コックスの著書『Fearsome Creatures of the Lumberwoods(木こりの森の恐ろしい生き物たち)』
姿:イボとほくろだらけの、体に合っていない皮膚を持つとされる。自分の醜さを恥じて絶えず涙を流しており、後年の文献では左足に水かきがあるとも、満月の夜は自分の姿が水面に映るのを避けてのろのろ歩くとも描写が加わった
由来:伐採労働者たちの間で語り継がれてきた「フィアサム・クリッターズ(恐ろしい珍獣)」というジャンルの一体。新入りの木こりをからかう小話が土台になっているとされる
事件簿
コックスは林業局職員で、のちにミネソタ州の森林官も務めた人物である。1910年の著書で伐採労働者の民間伝承を書き記したのは、伐採の対象である森がどんどん失われていくのに合わせ、口伝えの文化も消えていくのを惜しんだからだとされる。同書には21種の”恐ろしい珍獣”が並ぶが、その一体として記録されたのがスクォンクだった。
同書にはこんな逸話が載っている。ペンシルベニアの林業関係者J・P・ウェントリングという人物が、スクォンクの物悲しい鳴き声を真似て呼び寄せ、まんまと袋に閉じ込めることに成功した。手柄を上げた気分で家路についたウェントリングだったが、背負った袋は歩くうちにみるみる軽くなり、すすり泣きの声もやんだ。家に着いて袋を下ろし、中をのぞくと──そこにあったのは、涙と泡だけだったという。
1939年には、別の林務官ヘンリー・H・トライオンが著書『Fearsome Critters』でこの伝承にさらに手を加えた。水かきのある左足や、満月の夜に自分の醜い姿が水面に映るのを恐れて歩みが遅くなるといった新しい設定は、この時に加筆されたものである。

ホントカナ?
懐疑的に見れば、話は単純だ。フィアサム・クリッターズはもともと、伐採キャンプの古参が新入りをからかうために語ってきた、初めから“作り話”とわかっているジョーク文化のジャンルである。コックス自身も、伝承を面白おかしく記録・保存することが目的だったとされ、スクォンクを生きた新種として学界に報告したわけではない。
だが、この生物には一つだけ、ほかのUMAにはない奇妙な特徴がある。ウェントリングの逸話は、UMA伝承としては珍しく「捕獲に成功した」という体裁を取っている点だ。曖昧な目撃談でも、ブレた写真でもない。名前つきの人物が、確かに一匹を袋に詰めたという話になっている。
ところが、その”捕獲成功”の顛末が、そのまま「証拠が何一つ残っていない理由」の説明になってしまっている。存在を確かめようと手を伸ばした瞬間に、証拠そのものが涙になって流れ去る──スクォンクは、捕まえることと消えてしまうことが、伝承の設計段階から分かちがたく結びついた生き物なのだ。誰にも、生きたスクォンクを検分する機会は、原理的に訪れない。

TOCANA的まとめ
2023年、ペンシルベニア州ジョンズタウンで「スクォンカパルーザ」なる祭りが始まった。地元のアーティスト、ジョー・フォーグルが仕掛け人だ。地元メディアの取材に対し、「ビッグフットやモスマンの祭りはあちこちにあるのに、スクォンクの祭りがないのはおかしいと思った」と、その理由を語っている。
会場のボトルワークス・エスニック・アーツ・センターには全米各地から人が集まり、名物イベントとして開かれるのが「ベスト・コンプリメント・コンテスト」──来場者が、自分の醜さを嘆いて泣き続けるスクォンクに向けて、褒め言葉や励ましの言葉を贈り合う競技である。
考えてみれば奇妙な話だ。ジョンズタウンの人々は、スクォンクを「見つけよう」とはしていない。見つけた瞬間に消えてしまうと知っていながら、それでも年に一度、この世で一番悲しい怪物を励ますためだけに集まってくる。証拠より先に、思いやりが根付いた土地があるのだとしたら、それはそれで悪くない話ではないか。
トリビア
スクォンクの”涙になって溶ける”という設定は、意外なところで生き続けている。化学者トビー・J・サマーは2000年、専門誌『Chemical Innovation』に「Chemical Squonks(化学のスクォンク)」と題した論文を発表した。溶液中では安定なのに、単離しようとした途端に自ら分解・重合してしまう化合物を指す言葉として、100年以上前の木こりの怪物の名が、真面目な化学の世界に借用されている。
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2024.10.02 20:00心霊【TOCANA的UMAファイル #08】「スクォンク」 ── 捕まえた瞬間、涙で消えてしまう森の泣き虫のページです。UMA、TOCANA的UMAファイルなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで