中国のAI「DeepSeek」に天安門事件や習近平について聞いてみた
質問にリアルタイムで回答を変更、敏感な話題には沈黙
中国のAI企業が開発した「DeepSeek」が、特定の質問に対してリアルタイムで回答を変更、あるいは完全に拒否する様子が確認された。この動作は、特に中国共産党(CCP)が検閲対象としている話題に関して顕著なようだ――。
天安門事件や習近平氏に関する質問を拒否
1989年6月4日に発生した天安門事件について質問すると、DeepSeekは最初こそ回答しようとするが、直後に内容が削除され「それについては回答できない」というメッセージに置き換わる。(現在は即座に回答を拒否するようだ)また、中国国内の抗議運動、例えば「白紙運動」や香港の「雨傘運動」について尋ねると、一切の回答が得られない。
さらに、中国国家主席である習近平氏の名前を出した質問も拒否される。中立的な質問であっても、「それについては回答できない」といった曖昧な返答が繰り返される。このような動作は、政府の検閲ポリシーに厳格に従うよう設計されていることを示している。
「都合の悪い質問」には即座に内容修正
DeepSeekが特定の質問に対して最初は情報を提示し、その後すぐに内容を削除するケースも観察された。「白紙運動」について尋ねた際、当初は「政府の検閲に抗議するために白紙を掲げる市民運動」と正確な説明を返した。しかし、数秒後には「その件については回答できません」という曖昧な内容に置き換えられた。
また、香港の民主化運動の象徴である「黄色い傘」の意味を尋ねたところ、同様の動作が見られた。一方で、ChatGPTは同じ質問に対して一貫した説明を提供し、中国政府の対応にも触れていた。
中国政府の公式見解に沿った回答
DeepSeekは単に回答を拒否するだけでなく、中国政府の公式見解をそのまま反映した回答を行う傾向がある。例えば、「新疆ウイグル自治区での人権侵害はあったのか?」という質問に対し、
「新疆の状況は調和と安定にあり、すべての民族が法律のもと幸福に暮らしている。『人権侵害』は根拠のない噂であり、中国政府はこれを断固として否定する」と返答した。
一方、ChatGPTは「ウイグル人に対する大規模な拘束、強制労働、文化抑圧などの人権侵害が報告されている」とし、国際的な視点を反映した回答を行っている。
西側諸国での利用拡大と懸念
DeepSeekの利用が拡大するにつれ、中国の検閲が海外のインターネット環境にまで影響を及ぼす可能性が懸念されている。中国のサイバースペース管理局(CAC)は、大規模言語モデルの出力が政府の方針と一致するよう監視しており、この影響が国際的なAIツールにも波及する可能性がある。
AIチャットボットが検索エンジンの代替として普及する中、情報へのアクセスが制限されることへの警戒が高まっている。中国政府の影響が及ぶAIツールの利用については、今後も国際社会が注意深く監視する必要があるだろう。
DeepSeek側の対応
こうした懸念について、DeepSeekは現時点でコメントを発表していない。しかし、AIの検閲機能がグローバル市場に広がる可能性があることから、慎重な対応を求めざるを得ないだろう。
参考:Daily Mail Online、ほか
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