“マイノリティ・リポート”が現実に!?未来型犯罪防止システムが完成か…AIによる犯罪予測の光と影

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 犯罪が起こる前に予測できればこれほど安心なことはないが、シカゴ大学の最近の研究では犯罪行為がいつどこで起こるかを計算で導き出せるAI搭載のアルゴリズムがすでに完成したことが報告されている――。

■AIが約90%の精度で犯罪発生率を予測

 ひと昔前の天気予報に比べれば最近の気象予測は驚くほど正確だが、そこにはAIの存在がある。

 天気予報はAIが最も得意とするジャンルの1つで、既にさまざまな気象予測に利用されている。米グーグル傘下の「Google DeepMind」が先日、生成AIベースの高精度天気予測モデル「GenCast」を発表したことも話題だ。

 今後天気予報がますます正確になることは間違いなさそうだが、AIは犯罪発生予測の分野でもめざましい進歩を遂げているようだ。

 AIの進歩によって犯罪が起こる前に予測できるようになるというのはまるで“ディストピア系SF”のようにも思えてくるが、現実はすでにこのシナリオに近づいている。

 米シカゴ大学の研究は、彼らが作成したAIが約90%の精度で犯罪発生率を予測できることを報告している。分析には、ロサンゼルス、シカゴ、フィラデルフィアを含むアメリカの主要8都市の過去の犯罪データが使用され、予測は300平方メートルの区画単位で行われた。

 研究チームのリーダー、イシャヌ・チョトパッダーエ氏はこのシステムの運用を、雨を予測するために暗い雲を観察することに例えている。

「私たちは出来事のパターンを特定し、それを使って特定の場所での将来の出来事の可能性を計算します」(チョトパッダーエ氏)

 このAIアルゴリズム開発の主な目的は、特定の犯罪者や犯罪を特定することではなく、過去の事件に関するデータを分析してリスクの高い地域を特定することである。チョトパッダーエ氏は、このシステムは、まだ犯していない犯罪で個人を起訴したり処罰したりすることを意図したものではないと説明している。

 そうはいっても犯罪を犯す可能性がきわめて高いと予測された人物を当局は放置しておけるのだろうか。あるいは放置したことで案の定犯罪が起きて犠牲者が出た場合の責任はどうなるのか。このジレンマは、フィリップ・K・ディックの短編小説が原作のスティーブン・スピルバーグ監督の映画『マイノリティ・リポート』の中心テーマであり、今も議論が交わされている。

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 研究者たちは倫理的問題はいったん棚に上げて、警察の活動を支援するためにAIを活用することに専心している。予測に基づいて、法執行機関は潜在的な事件に備えることができ、より適切に防止することができる。しかしその一方でデータに偏りがある可能性も懸念されている。

 最近の「Reddit」の世論調査では、回答者の60%が、もし100%予測が正確であれば、同様のシステムを自分の街で導入することを支持すると回答している。しかしユーザーからのいくつかのコメントには、このプロジェクトに対する複雑な感情が反映されており、個人の自由の侵害を懸念する者もいれば、システムの公平性を疑問視する者もいる。

 AIによる犯罪予測精度が限りなく100%に近くなった時、確かに我々の犯罪に対する見方と扱い方が大きく変わりそうにも思えてくる。しかもその日が我々が考えているよりもすぐにやってくるのだとすれば“心の準備”は間に合わないことにもなりそうだ。

参考:「Anomalien.com」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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